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第1章『はじまりの拾物』
第4話
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「ここ、どこ…?」
《先程話していた噂の中心部だな》
まだ混乱している私に、男の人が教えてくれる。
《どうやら俺たちはこの空間に閉じこめられてしまったようだ。中のやつを倒すか、助けが来るのを待つしかない》
「ここが噂の中?それなら、怪異が沢山出てくるの?」
《……おそらく》
いつも後方支援しかできない私が、戦うことなんてできるのだろうか。
「あ!」
前から勢いよく転がり出てきた何かが突進してこないように、なんとか結界をはる。
「大丈夫?怪我してない?」
《俺は別に。おまえはふらついたりしないのか?》
「大丈夫だよ。だけど私、攻撃するのは苦手で…」
気が緩んで結界をといてしまっているすきに、また何かが飛びこんできた。
怖くなって目を閉じたけど、体が全然痛くない。
《怪我はないな》
「え?」
《そのまま下がっていろ》
言われたとおり一歩後ずさると、男の人はどこからか出した刀で相手を斬り裂いた。
《畜生、エサガアア!》
ぱらぱらと崩れていく体を、ただ見ていることしかできない。
「今の、どうやったの?」
《霊力をこめた短刀で斬った》
「すごいね。私じゃ絶対に真似できないやり方だ…いいなあ」
思わずそう呟いた直後、男の人がふらついて倒れる。
「どうしたの?やっぱり怪我したんじゃ、」
《霊力切れだ。また気が触れる前に何か手を…うっ!》
胸を押さえて苦しみだした男の人の背中を、たださすることしかできない。
《俺に、近寄るな。おまえの霊力が、削られるぞ》
「あなたを助けられるならそれでいい」
《何故、そこまでして…》
「誰かを助けられる人になりたいから」
持っていた札を投げて、大きめの結界を作る。
周りは黒いものに囲まれているけど、これならきっと入ってこられない。
男の人は私をじっと見て、血が出た手首を握られる。
《…おまえになら、俺の命を預けてもいい》
「どういうこと?」
《俺と契約してほしい。そうすれば目の前の怪異を全て片づける》
契約するってどんなことをするんだろう。
だけど今は、それ以外方法がない。
「意思がある人は、助けられる?」
《おまえがそれを望むなら》
「それなら契約する。私の力…って自分では分かってないけど、それが必要ならあげる。
だからお願い。他の人たちに被害が及ぶ前に、目の前の怖いものを止めて」
《──契約成立だ》
また手首を少し噛まれて痛かったけど、さっきより鋭い一撃で沢山の相手が倒れていく。
お姉ちゃんの炎とは別の何かに、すっかり見とれてしまっていた。
《……こんなものか》
いつの間にかトンネルはなくなって、小さなネズミみたいな妖が怯えた様子でこっちを見ている。
「大丈夫。今のあなたを傷つけるつもりはないから」
できるだけ笑顔で話しかけると、相手も安心したみたいで頭を下げた。
《おいら、なんでこうなったか分からないんです。暴れてしまってごめんなさい》
「おまえがトンネルの元凶か。話は向こうで聞かせてもらう」
「お姉ちゃん!」
いつからいたのか全然分からない。
お姉ちゃんは男の人をじっと見た後、苦笑いしながら言った。
「悪いがおまえの話も聞かせてもらう。…私が調べられたのはトンネルの前までだからな」
《先程話していた噂の中心部だな》
まだ混乱している私に、男の人が教えてくれる。
《どうやら俺たちはこの空間に閉じこめられてしまったようだ。中のやつを倒すか、助けが来るのを待つしかない》
「ここが噂の中?それなら、怪異が沢山出てくるの?」
《……おそらく》
いつも後方支援しかできない私が、戦うことなんてできるのだろうか。
「あ!」
前から勢いよく転がり出てきた何かが突進してこないように、なんとか結界をはる。
「大丈夫?怪我してない?」
《俺は別に。おまえはふらついたりしないのか?》
「大丈夫だよ。だけど私、攻撃するのは苦手で…」
気が緩んで結界をといてしまっているすきに、また何かが飛びこんできた。
怖くなって目を閉じたけど、体が全然痛くない。
《怪我はないな》
「え?」
《そのまま下がっていろ》
言われたとおり一歩後ずさると、男の人はどこからか出した刀で相手を斬り裂いた。
《畜生、エサガアア!》
ぱらぱらと崩れていく体を、ただ見ていることしかできない。
「今の、どうやったの?」
《霊力をこめた短刀で斬った》
「すごいね。私じゃ絶対に真似できないやり方だ…いいなあ」
思わずそう呟いた直後、男の人がふらついて倒れる。
「どうしたの?やっぱり怪我したんじゃ、」
《霊力切れだ。また気が触れる前に何か手を…うっ!》
胸を押さえて苦しみだした男の人の背中を、たださすることしかできない。
《俺に、近寄るな。おまえの霊力が、削られるぞ》
「あなたを助けられるならそれでいい」
《何故、そこまでして…》
「誰かを助けられる人になりたいから」
持っていた札を投げて、大きめの結界を作る。
周りは黒いものに囲まれているけど、これならきっと入ってこられない。
男の人は私をじっと見て、血が出た手首を握られる。
《…おまえになら、俺の命を預けてもいい》
「どういうこと?」
《俺と契約してほしい。そうすれば目の前の怪異を全て片づける》
契約するってどんなことをするんだろう。
だけど今は、それ以外方法がない。
「意思がある人は、助けられる?」
《おまえがそれを望むなら》
「それなら契約する。私の力…って自分では分かってないけど、それが必要ならあげる。
だからお願い。他の人たちに被害が及ぶ前に、目の前の怖いものを止めて」
《──契約成立だ》
また手首を少し噛まれて痛かったけど、さっきより鋭い一撃で沢山の相手が倒れていく。
お姉ちゃんの炎とは別の何かに、すっかり見とれてしまっていた。
《……こんなものか》
いつの間にかトンネルはなくなって、小さなネズミみたいな妖が怯えた様子でこっちを見ている。
「大丈夫。今のあなたを傷つけるつもりはないから」
できるだけ笑顔で話しかけると、相手も安心したみたいで頭を下げた。
《おいら、なんでこうなったか分からないんです。暴れてしまってごめんなさい》
「おまえがトンネルの元凶か。話は向こうで聞かせてもらう」
「お姉ちゃん!」
いつからいたのか全然分からない。
お姉ちゃんは男の人をじっと見た後、苦笑いしながら言った。
「悪いがおまえの話も聞かせてもらう。…私が調べられたのはトンネルの前までだからな」
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