未熟な蕾ですが

黒蝶

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「陽向」
──嗚呼、また俺死んだのか。
室星先生たちがいないからはりきってたのに、体中に痛みがはしって一気に目が覚める。
「ごめん。どれくらい経った?」
「……馬鹿」
桜良は明らかに怒っている。
こういうときはひたすら謝り倒すしかないけど、それより気になることがあった。
「ちびと白露たちは?」
「結月にお願いして見てもらっているから大丈夫。特に大きな怪我はしていないみたいだけど、白露が怪我をしているみたい」
「無茶するところは持ち主の周りに似た感じか…」
詩乃先輩もよく無理をして負傷している。
先生も先生で実は怪我しても隠していることが多い。
「もう起きて平気なの?」
「大丈夫。丈夫さだけが取り柄だから」
「…もっと自分を大切にして」
「ごめん。けど、桜良も無事でよかった」
なんだかんだで桜良とは長い付き合いだ。
恋人になってからも結構長い時間を過ごしてきた…と、思う。
通信機をとって放送室を出ようとすると、桜良に腕をひっぱられる。
「今夜はもう駄目」
「心配してくれてありがとう。けど、ちゃんと確認してこないと。連絡するからサポートして」
「……死んだら許さない」
「ありがとう」
桜良に不安そうな顔をさせたいわけじゃないのに、どうしてもこうなってしまう。
気持ちを切り替えて旧校舎を見回っていると、糸屑みたいなものが光るのが見えた。
《キシシシ!》
「ごめん、やっぱり出た」
『今どこ?』
「旧校舎2階。放送室の鍵、絶対締めといて」
『…分かった』
今回の噂はかなり厄介で、一体どれだけの数の敵がいるか把握しきれていない。
《ゲ、ゲラゲラ》
「うるさいなあ。ちょっと静かにしてくれない?」
《ガボゲバア!》
「やっぱ言葉が通じないタイプ!」
相手が吐き出す泥みたいなものは、明らかに体に悪そうな色で。
ひたすら避けまくってなんとか間合いをとる。
「…満月が近くてよかった」
《アア?》
「教えてやるよ。力を上手く使えたときどうなるか」
拳をうちこむ俺のやり方は、普段は接近戦でしか使えないことがほとんどだ。
けど、これだけ霊力が上がる時期なら別のやり方ができる。
両手を握りしめて、霊力を集中させて──
《ゴア!》
「やめとけって。今の俺には勝てないから」
思いきりパンチしたら、霊力の波動で相手の体が中庭へ吹き飛ぶ。
粉々になっていくのを目視で確認した。
『…上手くいった?』
「うん。先生の鬼の特訓の成果、ちゃんと出た」
体に衝撃がはしったけど、疲労感より達成感の方が強い。
『次がくる』
「了解!」
大量生産しているからか、多分本体以外は言葉が通じない。
「悪いけど、今夜こそ手がかり掴ませてもらうから」
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