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第30話
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真っ青な顔でこちらを見る少年に声をかけ、一旦その場を後にする。
「お、白露じゃん」
《…おまえか》
「その腕、消毒くらいはできるから診せてくれ」
不死身男は深く尋ねてくることもなくありがたかった。
「多分これで大丈夫なはず」
《助かった》
「…なあ」
突然呼び止められて振り向くと、不安そうな表情でこちらを見つめる。
「やっぱ狙われてる感じ?」
《おそらく》
「分かった。なんとか対処法を考えないとな。先生が帰ってくるまで時間を稼がないと、俺たちだけじゃとても…」
何やら作戦をたてているようだが、今は少し気になることがある。
元いた場所へ戻ると、死霊少年はやはり落ちこんでいる様子だった。
《それほど思いつめる必要などない》
「白露は優しいね。でも、さっきのは僕の落ち度。ちゃんと見てないといけなかったのに…」
《自分を責める必要はない》
「でも、」
《己自身を責めているところを見ても困るだけだ》
死霊少年ははっとしたようにこちらを向く。
「…ごめん。そうだよね」
《護るのが俺の仕事だ。謝罪の言葉は必要ない》
「それなら…護ってくれてありがとう、白露」
また胸が温かくなったような気がするが、どう表現すればいいか分からない。
《時間があるなら少しつきあえ》
「うん!」
花札をして時間を潰し、普段どおり主の危機を察知した瞬間は仕事をし…そうこうしているうちにもう月があたりを照らしている。
「んじゃ、今夜はこのあたりをまわってみようか」
「頑張ろう」
周囲から特におかしな気配は感じないが、なんとなく厭な視線がまとわりついている気がする。
「白露?」
《走れ》
「え?」
背後で硝子が割れる音がしたのと同時に複数の敵が入りこんできた。
「ここは俺たちでなんとかするから監査室まで逃げて」
「でも、陽向君たちは?」
「ここは大丈夫。ふたりとも、行って!」
不死身男と死霊少年が時間を稼いでいる間に元いた部屋へ向かう。
「白露、私は戦わなくていいのかな…」
《あれらの狙いはおまえではない》
「そうなの?」
再び複数の気配を感じとり、近くにいた黒猫に声をかけた。
《主を頼む》
「どうし、」
《まったく、不器用なんだから…。ほら、行くわよ》
主は黒猫に連れられ、戸惑いながらも走っている。
刀を構え、何もいない空間に向かって宣言する。
《…それほどまでに飢えているならかかってくればいい。死肉になるまで相手してやる》
《グオワアア!》
どこまでやれるか分からないが、夜紅に頼むと言われた。
他の奴等が死ぬのも阻止したい。
ならば、俺は。
《霊力を喰う分のはたらきはきっちりさせてもらう》
《ウマゾオオ!》
襲いくる傀儡の集団に突進し、全てが片づくまでひたすら刀をふる。
どれだけ体が痛もうが、ここだけは決して通させはしない。
「お、白露じゃん」
《…おまえか》
「その腕、消毒くらいはできるから診せてくれ」
不死身男は深く尋ねてくることもなくありがたかった。
「多分これで大丈夫なはず」
《助かった》
「…なあ」
突然呼び止められて振り向くと、不安そうな表情でこちらを見つめる。
「やっぱ狙われてる感じ?」
《おそらく》
「分かった。なんとか対処法を考えないとな。先生が帰ってくるまで時間を稼がないと、俺たちだけじゃとても…」
何やら作戦をたてているようだが、今は少し気になることがある。
元いた場所へ戻ると、死霊少年はやはり落ちこんでいる様子だった。
《それほど思いつめる必要などない》
「白露は優しいね。でも、さっきのは僕の落ち度。ちゃんと見てないといけなかったのに…」
《自分を責める必要はない》
「でも、」
《己自身を責めているところを見ても困るだけだ》
死霊少年ははっとしたようにこちらを向く。
「…ごめん。そうだよね」
《護るのが俺の仕事だ。謝罪の言葉は必要ない》
「それなら…護ってくれてありがとう、白露」
また胸が温かくなったような気がするが、どう表現すればいいか分からない。
《時間があるなら少しつきあえ》
「うん!」
花札をして時間を潰し、普段どおり主の危機を察知した瞬間は仕事をし…そうこうしているうちにもう月があたりを照らしている。
「んじゃ、今夜はこのあたりをまわってみようか」
「頑張ろう」
周囲から特におかしな気配は感じないが、なんとなく厭な視線がまとわりついている気がする。
「白露?」
《走れ》
「え?」
背後で硝子が割れる音がしたのと同時に複数の敵が入りこんできた。
「ここは俺たちでなんとかするから監査室まで逃げて」
「でも、陽向君たちは?」
「ここは大丈夫。ふたりとも、行って!」
不死身男と死霊少年が時間を稼いでいる間に元いた部屋へ向かう。
「白露、私は戦わなくていいのかな…」
《あれらの狙いはおまえではない》
「そうなの?」
再び複数の気配を感じとり、近くにいた黒猫に声をかけた。
《主を頼む》
「どうし、」
《まったく、不器用なんだから…。ほら、行くわよ》
主は黒猫に連れられ、戸惑いながらも走っている。
刀を構え、何もいない空間に向かって宣言する。
《…それほどまでに飢えているならかかってくればいい。死肉になるまで相手してやる》
《グオワアア!》
どこまでやれるか分からないが、夜紅に頼むと言われた。
他の奴等が死ぬのも阻止したい。
ならば、俺は。
《霊力を喰う分のはたらきはきっちりさせてもらう》
《ウマゾオオ!》
襲いくる傀儡の集団に突進し、全てが片づくまでひたすら刀をふる。
どれだけ体が痛もうが、ここだけは決して通させはしない。
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