未熟な蕾ですが

黒蝶

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目を開けたら、いつの間にか自分の部屋のベッドにいた。
旧校舎にいたはずなのに、いつの間に帰ってきたんだろう。
「…お弁当作らなきゃ」
お気に入りのぬいぐるみの頭を撫でてキッチンへ行ったら、白露がフライパンとにらめっこしていた。
「おはよう。もしかして、白露が家まで運んでくれたの?」
《起こすより早いからそうした》
「…そっか。ありがとう」
きっと気を遣ってくれたんだとすぐ分かる。
白露は素直じゃないけど、ただ不器用なだけの人だ。
優しくて強くて、ヒーローみたいだなって思うときもある。
ただ、周りに助けを求めるのは苦手みたいだ。
「何作るの?」
《ベーコンとほうれん草の炒めものを作ろうとした》
「そっか、IH…。そのタイプのものは、ここで火加減を調節して…」
ガスコンロもあるけど、家にひとつだけ取り付けたIHのものが気になったらしい。
《成程。どおりで温まらないわけだ》
「それで思い切り炒めてみて」
《…これでいいのか》
できあがった炒めものはすごくいいにおいがしていて、なんだかお腹が減ってしまった。
「誰かに習ったの?」
《死霊少年が手早くできるからと話していた》
「そうだったんだ。瞬君とも仲良しだね」
《…おそらく》
卵焼きを焼きながら話をしているうちに気づく。
「…前よりちょっと柔らかくなった?」
《どういう意味だ》
「ごめんね。悪い意味じゃなくて、硬さというか毒気が抜けたな…って思ったんだ。
あと、心を開いてくれてる気がしてすごく嬉しい」
《正直、感情というものはよく分からないが感じるものは増えたかもしれない》
ちょっと戸惑ってるようにも見えるけど、前よりわくわくした様子で過ごしているから安心した。
「おはよう。いいにおいだな」
「あ、お姉ちゃんおはよう!お弁当できたよ」
「ありがとう」
いつの間にか片づけられていた食器は、多分お姉ちゃんが洗ってくれたんだと思う。
せめて私が当番の日はゆっくり寝てほしいんだけど、なかなか上手くいかない。
「そっちの炒めものは白露が作ってくれたんだ」
「…料理男子だったのか」
《大したことはしていない。この料理も死霊少年に教わっただけだ》
「それでも助かったよ。ありがとう」
3人で朝ご飯…いつもお姉ちゃんが早いから滅多にない。
最近は別の学校へ室星先生と行っているから、特に回数が減っていた。
「いただきます。…うん、美味しい」
「よかった」
《……》
白露は相変わらず口数が少ないけど、最近ちょっとだけ味の好みが分かってきた。
今日は学校は休みだけど、なんとなく出掛けたい気分だ。
「白露、この後ちょっとだけついてきてもらってもいい?」
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