未熟な蕾ですが

黒蝶

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「今のところ、もう少し左だ」
「は、はい!」
早くお姉ちゃんに近づきたくて、夜仕事のメンバーでやっていたらしい合宿に参加させてもらうことになった。
先生は強いし教え方が分かりやすい。
「そこまで」
「あ、ありがとうございました…」
少し疲れてしまって、その場に座りこむ。
「お疲れ様。先生、ちょっと容赦なさすぎ」
「悪い」
「いえ、私がお願いしたので」
早く強くなりたいから、厳しくてもついていきますと言ったのは私だ。
それに、白露は白露で陽向君たちと何かしているから私も頑張りたい。
「穂乃ちゃんってちょっとだけ詩乃ちゃんに似てるよね」
「そうかな?」
「うん。誰かのために頑張るところとか、無理しすぎてるところに気づかないところとか…」
どこから持ってきてくれたのか、瞬君から清涼飲料水を受け取る。
「あんまり無理しないで、もっと自分を大切にしてほしいな」
「分かった。無理しないように気をつけるね」
お姉ちゃんたちが見当たらないけど、どこにいるんだろう。
きょろきょろしていると、先生が心を読んだみたいに答えた。
「折原たちなら旧校舎にいるはずだ。この時間なら折原は屋上だろう」
「どうして室星先生はお姉ちゃんたちのことを詳しく知っているんですか?」
「付き合いが長いからかもしれないな。…考えたことがなかった」
先生が苦笑いしているのを見て、瞬君がずばっと切りこんだ。
「先生の観察眼が鋭いんだよ。他の生徒のことも2,3回見たらほぼ完璧に分かってるでしょ」
「え、そうなんですか?」
「そこまでじゃない。俺は人間ではないが超能力者でもないからな」
ちょっとだけ寂しそうに見えたのは、多分気のせいじゃない。
「能力のコントロールについては夜9時からおこなう。実戦にはならないと思うがある程度の装備は持っておいた方がいい」
「は、はい!」
「それまでは自由に過ごしてくれ」
「ありがとうございました」
思ったようにできなかったけど、ここで無理したらきっと迷惑をかけてしまう。
お姉ちゃんたちが何をしているのか分からないけど、その間に私にできることをやっておこうと思った。
「…よし」
エプロンをつけて家庭科室でおやつを作る。
…といっても、ただのホットケーキだ。
チョコレートソースも市販だし、特に変わったものはない。
だけど、誰かを笑顔にできるならやれるだけのことはやってみたいんだ。
わいわい話している方へバスケットを持って近づいていく。
どんな反応がかえってくるんだろうと思いながら扉を軽くノックした。
「失礼します…」
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