14 / 78
第13話
しおりを挟む
「ガーデン?」
「ああ。この前解決したマリオネットの噂のふたりが本来いる場所なんだ」
特に目立った噂がないからと、姉妹は屋上に向かって歩き出した。
辿り着いたその場所には見覚えがない五芒星が記されている。
「ここにガーデンがあるの?」
「いや。…しっかり掴まっててくれ」
「え──」
俺も腕を掴まれ、真っ逆さまに落ちていく。
そのまま地面に叩きつけられると思っていたが、落ちた先は柔らかい草花の絨毯だった。
《あ、お姉さんだ!》
「こんばんは。ふたりとも元気そうだな」
《新しい花が咲いた。…そっちのふたりもこんばんは》
「こんばんは。お邪魔します…?」
主は首を傾げたまま体を起こす。
「お姉ちゃん、どういうこと?」
「ごめん。ちゃんと説明してなかったな」
妖にはそれぞれ部屋と呼ばれる固有結界がある。
どうやらこの場所は目の前の双子の部屋にあたるもののようだ。
「この場所に入るには、あの高さから飛び降りるしかない」
《できるだけ人間に見つかりたくなくて、色々な仕掛けをしている》
「そうだったんだ…。そういえば、ふたりの洋服すごく可愛いね!」
《ありがとう。お姉さんが作ってくれたんだよ!糸がいっぱいになって、破れちゃったからって》
双子が巻きこまれたのはマリオネットの噂だった。
自らの意志で動くことすら叶わず、操り糸にされるがままになってしまっていたらしい。
「もしかして、この間お姉ちゃんがくれたハンカチって…」
「ごめん。余った布とフリルで作ったんだ」
「全然気づかなかった…」
仲睦まじい会話をする姉妹に双子が茶を運んでくる。
《好みが分かれると思うけど、花茶を淹れてみた。嫌じゃなかったらどうぞ》
「ありがとう。いただきます」
《疲労回復とか、傷が治りやすくなったりとか、そういう効果があるんだ》
「ふたりは花に詳しいんだね」
《…多分。色々育てているうちに覚えた》
双子の黒い方が俺にも茶器を差し出す。
《あなたも飲んで》
《…了解した》
特に嫌な味でもなく、ひとり黙々と飲み干した。
女子会トークというものがよく分からず、近くに咲いていた花を見つめる。
【こんなに可愛らしい花なのに、毒があるらしいですよ。…食べてしまわなければ問題ないようですが、不思議ですね】
……またらしくないことを思い出してしまった。
「白露?」
《どうかしたか?》
「なんだかぼんやりしているみたいだったから、どうしたんだろうと思って…」
《花を見ていただけだ》
「そっか。だけど、疲れたらちゃんと言ってね」
これだけ俺が稼働できているのは主のおかげだというのに、それを全く理解していないようだ。
大量の霊力を分けられているはずなのに、主に変わった様子はない。
制御しきれなくなるほどの力というのは本人にとっても厄介だろう。
そんなことをぼんやり考えているうちに時間だけが過ぎていった。
「ああ。この前解決したマリオネットの噂のふたりが本来いる場所なんだ」
特に目立った噂がないからと、姉妹は屋上に向かって歩き出した。
辿り着いたその場所には見覚えがない五芒星が記されている。
「ここにガーデンがあるの?」
「いや。…しっかり掴まっててくれ」
「え──」
俺も腕を掴まれ、真っ逆さまに落ちていく。
そのまま地面に叩きつけられると思っていたが、落ちた先は柔らかい草花の絨毯だった。
《あ、お姉さんだ!》
「こんばんは。ふたりとも元気そうだな」
《新しい花が咲いた。…そっちのふたりもこんばんは》
「こんばんは。お邪魔します…?」
主は首を傾げたまま体を起こす。
「お姉ちゃん、どういうこと?」
「ごめん。ちゃんと説明してなかったな」
妖にはそれぞれ部屋と呼ばれる固有結界がある。
どうやらこの場所は目の前の双子の部屋にあたるもののようだ。
「この場所に入るには、あの高さから飛び降りるしかない」
《できるだけ人間に見つかりたくなくて、色々な仕掛けをしている》
「そうだったんだ…。そういえば、ふたりの洋服すごく可愛いね!」
《ありがとう。お姉さんが作ってくれたんだよ!糸がいっぱいになって、破れちゃったからって》
双子が巻きこまれたのはマリオネットの噂だった。
自らの意志で動くことすら叶わず、操り糸にされるがままになってしまっていたらしい。
「もしかして、この間お姉ちゃんがくれたハンカチって…」
「ごめん。余った布とフリルで作ったんだ」
「全然気づかなかった…」
仲睦まじい会話をする姉妹に双子が茶を運んでくる。
《好みが分かれると思うけど、花茶を淹れてみた。嫌じゃなかったらどうぞ》
「ありがとう。いただきます」
《疲労回復とか、傷が治りやすくなったりとか、そういう効果があるんだ》
「ふたりは花に詳しいんだね」
《…多分。色々育てているうちに覚えた》
双子の黒い方が俺にも茶器を差し出す。
《あなたも飲んで》
《…了解した》
特に嫌な味でもなく、ひとり黙々と飲み干した。
女子会トークというものがよく分からず、近くに咲いていた花を見つめる。
【こんなに可愛らしい花なのに、毒があるらしいですよ。…食べてしまわなければ問題ないようですが、不思議ですね】
……またらしくないことを思い出してしまった。
「白露?」
《どうかしたか?》
「なんだかぼんやりしているみたいだったから、どうしたんだろうと思って…」
《花を見ていただけだ》
「そっか。だけど、疲れたらちゃんと言ってね」
これだけ俺が稼働できているのは主のおかげだというのに、それを全く理解していないようだ。
大量の霊力を分けられているはずなのに、主に変わった様子はない。
制御しきれなくなるほどの力というのは本人にとっても厄介だろう。
そんなことをぼんやり考えているうちに時間だけが過ぎていった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる