カルム

黒蝶

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掴んだ未来

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『このあたりでよろしいでしょうか?』
「ごめん。何から何までありがとう」
『お役に立ててよかったです』
洋館を出てそのまま自宅に戻る。
まだ眠ったままの手鞠とぐっすり寝ている小鞠を抱え、そのまま真っ直ぐ歩いた。
「大丈夫かな…」
『そんなに心配しなくても、そう簡単に壊れたりしませんよ。彼女が言っていたでしょう?』
「それはそうなんだけど…俺じゃ核がどうなっているかも分からないし、本当にできることがないから不安なんだ」
一先ず小鞠をいつもの場所に寝かせ、手鞠の様子を窺う。
もしこのまま起きなかったら木霊に相談しよう…そんなことを考えていると、がさがさと音がした。
『おはよう』
「おはよう。眠かったらまだ寝てていいんだよ」
『起きる』
「そうか」
こちらに駆け寄ってきた小鞠の頭を撫でると、くすぐったそうに笑っていた。
お腹がすいたことに気づいて朝食を用意する。
『寝なくて大丈夫ですか?』
「大丈夫だよ。…多分」
丁度できあがった頃、がたんと音がした。
「ふたりとも、食事が…」
手鞠が体を起こし、ぼんやりこちらを見つめている。
「手鞠、具合はどうだ?」
『不思議ね…もう駄目だと思っていたのに、まだ動けているわ』
「具合が悪いわけじゃないならよかった。何か食べられそうか?」
『ええ。本調子とまではいかなくても元気みたいだから』
「分かった。それなら何か作るよ」
流石に砕いたボーロや小鞠と同じ食事は無理だろうと判断し、別メニューを用意してみる。
『これは…葛湯?』
「正解。これなら食べられないかな?」
『いけると思うわ。ありがとう。いただきます』
3人で並んで食べる姿は微笑ましい。
それから、手鞠が起きてくれてほっとした。
「…本当によかった」
『ねえ、どうしてあなたの目は色が違うの?』
「俺にもはっきりしたことは分からないんだけど、生まれつきなんだ。小さい頃の写真もそうだったし…」
毎回、誰かと写る写真が嫌いだった。
みんなと違うと指摘されるのが怖くて、嘘つき呼ばわりされるのが嫌で…今思い出しても辛いことの方が多い。
『八尋』
「どうした?」
『あなたはあなたが思っているよりずっといい人ですよ。
少なくとも、私にとってはそうです』
「…ありがとう瑠璃」
今の俺でいいと言ってくれる人がいるなら、また前を向いて歩いていける。
「それにしても、ふたりは本当にそっくりだね」
『そっくり』
『そう言ってもらえると、あの人もきっと喜んでいるわ』
できることなら創り主と話がしたかった。
ただ、それが叶わないのは分かっているから贅沢は言わない。
「ご飯食べ終わったら、取り敢えずのんびりしようか」
小鞠と手鞠、ふたりが一緒にいられるならそれでいい。
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