カルム

黒蝶

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鞠人形

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「どういうことですか?」
小鞠は2対だったということなのか、製造者を知っているということなのか…駄目だ、よく分からない。
そんな様子で焦っているのを感知されたらしく、山岸先輩は教えてくれた。
「死者に関わることだからあんまり詳しいことは言えないんだけど、この町である妖が殺された。人形は彼が作り出した幸運を招く鞠人形というものだったらしい。
ただ、最近噂を強制的に書き換えられる事案が多数発生している。彼は手元の人形を逃がす為、妖ものの間で噂になっていた人物にまずは1人託すことにした」
「それが俺だったってことですか?」
妖たちの間で噂になっていたなんて知らなかった。
そう尋ねると、瑠璃の笑い声が聞こえる。
「もしかして知ってたのか?」
『申し訳ありません。それに関して、八尋は何も知らないのです。話せば無駄に厄介事を引き受けてしまうと思い、話していませんでしたから。
他の妖たちから話を聞かれたことはありましたが…もし教えて、これ以上怪我が増えるのは困ります』
小鳥の声は真剣で、心配してくれたからこそのものだと知った。
その様子に先輩は少し驚いているようにも見えたが、そのまま話を続ける。
「君がトラブルシューターだって怪異たちの間でも知られているみたいだよ。…だから本来なら、呪いに変わる前にもう1人も託したかったみたい。
…ただ、そうする前に彼は亡くなってしまった」
ということは、小鞠を迎えに来る存在はもう…。
そんな残酷な事実が隠されているとは思わなかった。
「どうして死んでしまったのか、までは話せないんですよね?」
「うん。ただ、殺されたということは教えておく。それから、彼は君に感謝していた。逃げ惑う中、事情も説明できずに箱を置いていくことしかできなかったのに捨てないでいてくれた。
捨てられた気配がないということはきっと側においてもらえているんだろうって…本当はちゃんと感謝の気持ちを伝えたかったって言っていたよ」
「そうなんですか…」
直接話してみたかった。
一体どんな思いで小鞠ともうひとりを連れていたのか、記憶がなくなる前の小鞠と今の小鞠は違っている部分があるのか…。
それに、もうひとつ気になっていることがある。
「殺されたってことは、妖ものたちと争ったってことですか?それとも、追われてたってことはやっぱり…」
『あなたが気にしている存在ですか?』
「気にしている存在?」
瑠璃の小さな発言を先輩は聞き逃さなかった。
「すみません。確証がないので詳しいことは言えないんですけど…今日本を買いに来たあの男に気をつけてください。
もし俺が知っているままの存在なら、すごく危ないことになると思います」
「…分かった、気をつけておく」
小鞠を今まで以上に護る必要があるということと、持ち主が死んでしまっていることが分かっただけでもありがたい。
ただ、もうひとつ気になったことがある。
「…もうひとりの鞠人形はどうなったんですか?」
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