カルム

黒蝶

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刻一刻

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沢山の歯車がついた扉を触ると、勝手に扉が開いていく。
「ここは一体…」
『主らしき人物にすら会えませんね』
「そうだな。誰も住んでいないなら、きっとあんなふうに門が開いたりしなかっただろうし…」
正直、館の主に会ってもちゃんと話ができる気がしない。
ただ、話さないと何も変わらないし、おかしな噂に苦しめられている可能性もある。
前髪が邪魔になって横にずらすと、さっきまでいなかったはずのものが視えた。
「…小人?」
『主様の具合はどうだ?』
『よくはないが先日より顔色がいい。このまま快方に向かわれるといいのだが…』
小人たちの話を聞いていると、俺に気づいたのか目が合った。
『き、巨人…!』
「危ない!」
慌てて足を滑らせた小人をなんとか片手で受け止める。
呆然としているその子たちに視線を合わせて、小声で話しかけてみた。
「大丈夫だった?」
『た、助けてくれたのか』
「驚かせてごめん。俺たちはここで迷ってしまって、外に出られなくなったんだ。
だけど、具合が悪い人がいるなら治せるように協力したい。できることはあるかな?」
『…主様は、先日までいつもどおりに過ごしていた。だけど今は、ただ起きあがられるのも辛そうだ。
病の類かと思って調べてみたが、私どもでは原因が見つけられず…このままでは司時姫しじひがお亡くなりに…』
言葉をつまらせながら説明する様子に嘘はない。
小さなふたりは真剣で、恐らく初対面の相手にさえ縋りたくなるほどの危機を迎えている。
『先程は巨人などと言って悪かった。どうか我らが姫を救ってほしい。行き場をなくした私どもを住まわせてくれた、心優しい方なのだ』
「できるだけやってはみるけど、絶対に治せるとは言い切れない。それでも、その司時姫のところに連れていってくれるか?」
『ありがとう。奥の間まで案内する』
そのまま大人しく言われるがまま進んでいくと、一段と錆びれた歯車がついた部屋に辿り着いた。
ここに人がいるのか…そんなことを考えてしまうほど古びているように見える。
扉が開けられた瞬間、邪気のようなものにあてられた。
『大丈夫ですか?』
「あ、ああ。だけどこれは…」
小人サイズと思いきや、人間の少女ほどの女性がひとり横たわっている。
その体になんらかの呪いがかけられているのがはっきり分かったものの、正体までははっきり掴めていない。
『鳥が喋った…』
『私はただの鳥ではありませんので。…視えますか?』
「これって呪いなんじゃ…。それとも何か別の原因があるのか?」
彼女は何かに蝕まれている。
タイムリミットを告げるように、部屋の時計がかちかちと音をたてて動き出した。
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