125 / 163
七分咲き
しおりを挟む
「もう少しで集まりそうだな」
『ありがとうございます』
あれから数日、俺たちは公園に通い続けてようやくあと少しのところまできた。
「桜花」
『風花、今日もいらしたんですね』
そのなかで知ったのが、桜花の名前を呼んでいた男性の名前が風花であることだ。
それ以上詳しいことを知っているわけではないが、彼がきたときは桜花を見ないようにしている。
『八尋、見つけましたよ』
「ありがとう。ひとりだったらこんなに早く集められなかったよ」
何度目かになる感謝の言葉を伝えて、欠片探しを再開する。
できるだけ早く完成させたいと思うものの、そう簡単に揃ってくれない。
「瑠璃、そっちはどうだ?」
『なんとかなりそうです』
「そうか…」
あと少しになってくると、欠片を見つけること自体難しい。
ふと顔をあげると、鞄の中から声がした。
『あった』
「何があったんだ?」
『見つけた』
小鞠がめいっぱい背伸びして、手に握っていたものを見せてくれる。
それは間違いなく欠片だった。
「ありがとう、小鞠。これで完成に一歩近づいたよ」
小鞠は楽しそうに笑いながら、また鞄の中で大人しくしている。
そこから集まった欠片を持って桜花のところに行くと、風花と呼ばれている男性が立っていた。
「明日もまた会えるかな?」
『はい。きっとまた会えますよ』
「分かった。ちゃんとくるから待ってて」
その言葉に何故か悲しそうな表情をする桜花は、今どんなことを考えているんだろう。
『…成程。待てなくなるのは彼女の方になる可能性があるわけですか』
「それってどういうことだ?」
『考えてみてください。彼女は桜から名前をとっています。そして、桜の木々がある場所にしか現れられない…。
この公園の桜は随分散りました。完全に青葉が生い茂る状態になるまでそんなに時間はかからないはずです』
「…桜花が花の妖なら消えてしまうってことか?」
『消えはしませんよ。ただ、来年咲くまで地上には出てこられません』
「そんな…」
仲がいい相手とも1年に数日しか会えない…それってどんな気持ちになるんだろう。
『欠片は見つかりましたか?』
「多分これで全部だと思う」
『本当にありがとうございます』
「余計なお世話だと思うけど、さっきの人は桜花が人間じゃないことに気づいているのか?」
桜花は少し間を置き、大きく息を吸って話しはじめた。
『私は時々、死期が近い人間に視えることがあります。風花はもう長くありません。
初めて会ったのは病院でした。彼はずっとひとりで寂しそうな目をしていて…放っておけなかったんです』
「それで、鏡を使おうと思った?」
桜花は黙ったまま微笑む。
ただ、俺は気づいたらいけない部分に気づいてしまった。
「…もし風花さんが死霊になってるって言ったら、信じてくれるか?」
『ありがとうございます』
あれから数日、俺たちは公園に通い続けてようやくあと少しのところまできた。
「桜花」
『風花、今日もいらしたんですね』
そのなかで知ったのが、桜花の名前を呼んでいた男性の名前が風花であることだ。
それ以上詳しいことを知っているわけではないが、彼がきたときは桜花を見ないようにしている。
『八尋、見つけましたよ』
「ありがとう。ひとりだったらこんなに早く集められなかったよ」
何度目かになる感謝の言葉を伝えて、欠片探しを再開する。
できるだけ早く完成させたいと思うものの、そう簡単に揃ってくれない。
「瑠璃、そっちはどうだ?」
『なんとかなりそうです』
「そうか…」
あと少しになってくると、欠片を見つけること自体難しい。
ふと顔をあげると、鞄の中から声がした。
『あった』
「何があったんだ?」
『見つけた』
小鞠がめいっぱい背伸びして、手に握っていたものを見せてくれる。
それは間違いなく欠片だった。
「ありがとう、小鞠。これで完成に一歩近づいたよ」
小鞠は楽しそうに笑いながら、また鞄の中で大人しくしている。
そこから集まった欠片を持って桜花のところに行くと、風花と呼ばれている男性が立っていた。
「明日もまた会えるかな?」
『はい。きっとまた会えますよ』
「分かった。ちゃんとくるから待ってて」
その言葉に何故か悲しそうな表情をする桜花は、今どんなことを考えているんだろう。
『…成程。待てなくなるのは彼女の方になる可能性があるわけですか』
「それってどういうことだ?」
『考えてみてください。彼女は桜から名前をとっています。そして、桜の木々がある場所にしか現れられない…。
この公園の桜は随分散りました。完全に青葉が生い茂る状態になるまでそんなに時間はかからないはずです』
「…桜花が花の妖なら消えてしまうってことか?」
『消えはしませんよ。ただ、来年咲くまで地上には出てこられません』
「そんな…」
仲がいい相手とも1年に数日しか会えない…それってどんな気持ちになるんだろう。
『欠片は見つかりましたか?』
「多分これで全部だと思う」
『本当にありがとうございます』
「余計なお世話だと思うけど、さっきの人は桜花が人間じゃないことに気づいているのか?」
桜花は少し間を置き、大きく息を吸って話しはじめた。
『私は時々、死期が近い人間に視えることがあります。風花はもう長くありません。
初めて会ったのは病院でした。彼はずっとひとりで寂しそうな目をしていて…放っておけなかったんです』
「それで、鏡を使おうと思った?」
桜花は黙ったまま微笑む。
ただ、俺は気づいたらいけない部分に気づいてしまった。
「…もし風花さんが死霊になってるって言ったら、信じてくれるか?」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
夜紅譚
黒蝶
ライト文芸
折原詩乃(おりはらしの)は、烏合学園大学部へと進学した。
殆どの仲間が知らない、ある秘密を抱えて。
時を同じくして、妹の穂乃(みの)が中等部へ入学してくる。
詩乃の後を継ぎ、監査部部長となった岡副陽向(おかぞえひなた)。
少し環境は変わったものの、影で陽向を支える木嶋桜良(きじまさくら)。
教師として見守ると同時に、仲間として詩乃の秘密を知る室星。
室星の近くで日々勉強を続ける流山瞬(ながやましゅん)。
妖たちから夜紅と呼ばれ、時には恐れられ時には慕われてきた詩乃が、共に戦ってきた仲間たちと新たな脅威に立ち向かう。
※本作品は『夜紅の憲兵姫』の続篇です。
こちらからでも楽しめるよう書いていきますが、『夜紅の憲兵姫』を読んでからの方がより一層楽しんでいただけると思います。
※詩乃視点の話が9割を越えると思いますが、時々別の登場人物の視点の話があります。
マスクなしでも会いましょう
崎田毅駿
キャラ文芸
お店をやっていると、様々なタイプのお客さんが来る。最近になってよく利用してくれるようになった男性は、見た目とは裏腹にうっかり屋さんなのか、短期間で二度も忘れ物をしていった。今度は眼鏡。その縁にはなぜか女性と思われる名前が刻まれていて。
富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?
青夜
キャラ文芸
東大医学部卒。今は港区の大病院に外科医として勤める主人公。
親友夫婦が突然の事故で亡くなった。主人公は遺された四人の子どもたちを引き取り、一緒に暮らすことになった。
資産は十分にある。
子どもたちは、主人公に懐いてくれる。
しかし、何の因果か、驚天動地の事件ばかりが起きる。
幼く美しい巨大財閥令嬢 ⇒ 主人公にベタベタです。
暗殺拳の美しい跡取り ⇒ 昔から主人公にベタ惚れです。
元レディースの超美しいナース ⇒ 主人公にいろんな意味でベタベタです。
大精霊 ⇒ お花を咲かせる類人猿です。
主人公の美しい長女 ⇒ もちろん主人公にベタベタですが、最強です。
主人公の長男 ⇒ 主人公を神の如く尊敬します。
主人公の双子の娘 ⇒ 主人公が大好きですが、大事件ばかり起こします。
その他美しい女たちと美しいゲイの青年 ⇒ みんなベタベタです。
伝説のヤクザ ⇒ 主人公の舎弟になります。
大妖怪 ⇒ 舎弟になります。
守り神ヘビ ⇒ 主人公が大好きです。
おおきな猫 ⇒ 主人公が超好きです。
女子会 ⇒ 無事に終わったことはありません。
理解不能な方は、是非本編へ。
決して後悔させません!
捧腹絶倒、涙流しまくりの世界へようこそ。
ちょっと過激な暴力描写もあります。
苦手な方は読み飛ばして下さい。
性描写は控えめなつもりです。
どんなに読んでもゼロカロリーです。
アンダーグラウンドゲーム
幽零
キャラ文芸
ただの男子高校生 紅谷(ベニヤ)は、登校中、黒服たちに襲われ拉致されてしまう。
誰が何のために造ったのか一切不明の『ラビリンスゲーム』
人々の思惑が交差する迷宮脱出ストーリー。
御協力 れもん麺 様
イラスト Fubito 様
欲望の神さま拾いました【本編完結】
一花カナウ
キャラ文芸
長年付き合っていた男と別れてやけ酒をした翌朝、隣にいたのは天然系の神サマでした。
《やってることが夢魔な自称神様》を拾った《社畜な生真面目女子》が神様から溺愛されながら、うっかり世界が滅びないように奮闘するラブコメディです。
※オマケ短編追加中
カクヨム、ノベルアップ+、pixiv、ムーンライトノベルズでも公開中(サイトによりレーティングに合わせた調整アリ)
欠落の探偵とまつろわぬ助手
あかいかかぽ
キャラ文芸
とある廃工場を訪れたホームレスが死体を見つけるところから話は始まります。殺人事件&死体が出るので苦手な方はバックしてください。
ホームレス探偵・丹野と助手・野田の軽めのミステリ+ブロマンス。
探偵と助手の出会い編。最終的にはBLになる関係のふたりなのですが、この話はブロマンスに近いです。エロありません。なのでBLというカテゴリにはしておりません。
以前途中までアップしたものを改稿してます。(そのときはエロを書くつもりでBLカテゴリにしていました)
第六回キャラ文芸大賞で奨励賞いただきました。ありがとうございます。
【丹野】身長180センチ、頭脳明晰、クールイケメン、家事能力皆無、恋愛初心者
【野田】身長168センチ、肉体労働者の体力勝負er、恋愛依存傾向、八方美人、平凡寄り可愛い系ルックスの主人公
【田西】所轄刑事、いかつい系
【井敬】所轄刑事、さわやかイケメン系
【日比野響子】同僚のマドンナ、唯一の癒やし
【荒川】マッチョ系同僚、主食はプロテイン
【下村】同僚の先輩、ベテラン、猫好き
【橋本さゆり】被害者
【橋本孝】被害者の夫
魔法使いと子猫の京ドーナツ~謎解き風味でめしあがれ~
橘花やよい
キャラ文芸
京都嵐山には、魔法使い(四分の一)と、化け猫の少年が出迎えるドーナツ屋がある。おひとよしな魔法使いの、ほっこりじんわり物語。
☆☆☆
三上快はイギリスと日本のクォーター、かつ、魔法使いと人間のクォーター。ある日、経営するドーナツ屋の前に捨てられていた少年(化け猫)を拾う。妙になつかれてしまった快は少年とともに、客の悩みに触れていく。人とあやかし、一筋縄ではいかないのだが。
☆☆☆
あやかし×お仕事(ドーナツ屋)×ご当地(京都)×ちょっと謎解き×グルメと、よくばりなお話、完結しました!楽しんでいただければ幸いです。
感想は基本的に全体公開にしてあるので、ネタバレ注意です。
お犬様のお世話係りになったはずなんだけど………
ブラックベリィ
キャラ文芸
俺、神咲 和輝(かんざき かずき)は不幸のどん底に突き落とされました。
父親を失い、バイトもクビになって、早晩双子の妹、真奈と優奈を抱えてあわや路頭に………。そんな暗い未来陥る寸前に出会った少女の名は桜………。
そして、俺の新しいバイト先は決まったんだが………。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる