カルム

黒蝶

文字の大きさ
上 下
119 / 163

集まる手がかり

しおりを挟む
大空からの映像を楽しそうに見ている小鞠は、ただわくわくした様子で笑っていた。
「…瑠璃」
『遠くからでも話せる機能があるんですね』
「一応は。…もう少し左、何かありそうだよ」
画面がゆっくり切り替わると、そこには小さめの神社がたっていた。
『…こんな場所に神社なんてありましたか?』
「知らなかっただけかもしれないよ?」
『そういうことにしておきましょう』
これだけ不思議なことが続くと耐性がついてくる。
本来であれば怖がることなんだと思うけど、もうそこまでの恐怖を感じていない。
「…小鞠?」
『神社、鳥居、扉…』
何か思い出したのか、小鞠はそんな言葉を繰り返している。
「瑠璃、もう少しだけ神社に近づけないか?」
『やってみます』
少しずつ鳥居や凄そうな造りのものが見えてくるものの、だんだん具合が悪くなってきた。
やっぱりこの神社、何かがおかしい。
「…君は、ここにいたのかな」
『逃げる、早く』
「瑠璃、そこから離れて」
『なんとなく理解しました』
そのまま飛び立つ瑠璃の姿を見ながら、ずきずきと痛む頭に手を添える。
『大丈夫』
「うん。ごめん、休めばすぐよくなるから…」
『大丈夫』
小鞠の表情は不安げなものに変わっていて、とにかく安心してほしくて頭を撫でる。
「大丈夫だよ。小鞠がいてくれたからかな?」
彼女の体は本当に小さくて、背伸びしても俺の頭まで手が届かない。
すると、勢いよくジャンプして屈んでいた俺の頭をわしわし撫でてくれた。
「ありがとう」
『ありがとう』
「小鞠はきっといい子だな」
話していると楽しくなって、気づいたときには瑠璃が帰ってきていた。
『あの神社はかなりまずそうですね』
「やっぱりそうなのか…」
『ただ、その子が興味を示しているということは何か関係があるのは間違いなさそうです』
「もう少し知れるといいんだけど、どうかな。もう1度あの場所に向かうのは危険だし、もっと別の方法を考えた方がいいかもしれない」
もっと効率がいい方法があればいいとは思うものの、これ以上何か行動をおこすのは厳しい。
そう思っていたけど、小鞠が小さく呟いた。
『…おじいちゃん』
「え、おじいちゃん?」
小鞠が指さしたのは、とある一件で知り合った小さな神様の祠の破片だ。
『木霊の関係者でしょうか?』
「そうかもしれない。最近あまり顔を出せてなかったし、行ってみようか」
祠の修繕が終わってからも花束を渡しに行ってみているものの、必要以上に話を聞くことはなかった。
ただ、少しでも知っている可能性があるなら聞かせてほしい。
「今すぐというわけにはいかないけど、木霊のところへ向かおう」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なにを、視てるの?

月白ヤトヒコ
ホラー
怪談風の話です。 1話辺りが短めですぐ読めます。

異世界でゆるゆる生活を満喫す 

葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。 もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。 家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。 ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。

小林結城は奇妙な縁を持っている

木林 裕四郎
ファンタジー
「谷崎町の山奥にある古屋敷に行けば、奇妙な事件を解決してくれる」 そんな噂を耳にした人々が、今日も古屋敷の前へとやって来る。 だが本当に奇妙なのは、そこに住まう者たちだった。 小林結城と、彼の持つ不思議な縁に引き寄せられて集まった仲間たち。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

【完結】陰陽師は神様のお気に入り

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
キャラ文芸
 平安の夜を騒がせる幽霊騒ぎ。陰陽師である真桜は、騒ぎの元凶を見極めようと夜の見回りに出る。式神を連れての夜歩きの果て、彼の目の前に現れたのは―――美人過ぎる神様だった。  非常識で自分勝手な神様と繰り広げる騒動が、次第に都を巻き込んでいく。 ※注意:キスシーン(触れる程度)あります。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう ※「エブリスタ10/11新作セレクション」掲載作品

腐っている侍女

桃井すもも
恋愛
私は腐っております。 腐った侍女でございます。 腐った眼(まなこ)で、今日も麗しの殿下を盗み視るのです。 出来過ぎ上司の侍従が何やらちゃちゃを入れて来ますが、そんなの関係ありません。 短編なのに更に短めです。   内容腐り切っております。 お目汚し確実ですので、我こそは腐ってみたいと思われる猛者読者様、どうぞ心から腐ってお楽しみ下さい。 昭和のネタが入るのはご勘弁。 ❇相変わらずの100%妄想の産物です。 ❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた、妄想スイマーによる寝物語です。 疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。 ❇例の如く、鬼の誤字脱字を修復すべく激しい微修正が入ります。 「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さい。

蔑ろにされた元座敷わらしは売れない小説家と再婚して幸せになりました

yuri
キャラ文芸
ずっと大事にされず、居住を転々としてきた元座敷わらしの少女が、売れない小説家と再婚して幸せになる話

久遠の呪祓師―― 怪異探偵犬神零の大正帝都アヤカシ奇譚

山岸マロニィ
キャラ文芸
  ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼       第伍話 連載中    【持病悪化のため休載】   ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ モダンガールを目指して上京した椎葉桜子が勤めだした仕事先は、奇妙な探偵社。 浮世離れした美貌の探偵・犬神零と、式神を使う生意気な居候・ハルアキと共に、不可解な事件の解決に奔走する。 ◤ 大正 × 妖 × ミステリー ◢ 大正ロマン溢れる帝都・東京の裏通りを舞台に、冒険活劇が幕を開ける! 【シリーズ詳細】 第壱話――扉(書籍・レンタルに収録) 第弐話――鴉揚羽(書籍・レンタルに収録) 第参話――九十九ノ段(完結・公開中) 第肆話――壺(完結・公開中) 第伍話――箪笥(連載準備中) 番外編・百合御殿ノ三姉妹(完結・別ページにて公開中) ※各話とも、単独でお楽しみ頂ける内容となっております。 【第4回 キャラ文芸大賞】 旧タイトル『犬神心霊探偵社 第壱話【扉】』が、奨励賞に選ばれました。 【備考(第壱話――扉)】 初稿  2010年 ブログ及びHPにて別名義で掲載 改稿① 2015年 小説家になろうにて別名義で掲載 改稿② 2020年 ノベルデイズ、ノベルアップ+にて掲載  ※以上、現在は公開しておりません。 改稿③ 2021年 第4回 キャラ文芸大賞 奨励賞に選出 改稿④ 2021年 改稿⑤ 2022年 書籍化

処理中です...