カルム

黒蝶

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大空からの映像を楽しそうに見ている小鞠は、ただわくわくした様子で笑っていた。
「…瑠璃」
『遠くからでも話せる機能があるんですね』
「一応は。…もう少し左、何かありそうだよ」
画面がゆっくり切り替わると、そこには小さめの神社がたっていた。
『…こんな場所に神社なんてありましたか?』
「知らなかっただけかもしれないよ?」
『そういうことにしておきましょう』
これだけ不思議なことが続くと耐性がついてくる。
本来であれば怖がることなんだと思うけど、もうそこまでの恐怖を感じていない。
「…小鞠?」
『神社、鳥居、扉…』
何か思い出したのか、小鞠はそんな言葉を繰り返している。
「瑠璃、もう少しだけ神社に近づけないか?」
『やってみます』
少しずつ鳥居や凄そうな造りのものが見えてくるものの、だんだん具合が悪くなってきた。
やっぱりこの神社、何かがおかしい。
「…君は、ここにいたのかな」
『逃げる、早く』
「瑠璃、そこから離れて」
『なんとなく理解しました』
そのまま飛び立つ瑠璃の姿を見ながら、ずきずきと痛む頭に手を添える。
『大丈夫』
「うん。ごめん、休めばすぐよくなるから…」
『大丈夫』
小鞠の表情は不安げなものに変わっていて、とにかく安心してほしくて頭を撫でる。
「大丈夫だよ。小鞠がいてくれたからかな?」
彼女の体は本当に小さくて、背伸びしても俺の頭まで手が届かない。
すると、勢いよくジャンプして屈んでいた俺の頭をわしわし撫でてくれた。
「ありがとう」
『ありがとう』
「小鞠はきっといい子だな」
話していると楽しくなって、気づいたときには瑠璃が帰ってきていた。
『あの神社はかなりまずそうですね』
「やっぱりそうなのか…」
『ただ、その子が興味を示しているということは何か関係があるのは間違いなさそうです』
「もう少し知れるといいんだけど、どうかな。もう1度あの場所に向かうのは危険だし、もっと別の方法を考えた方がいいかもしれない」
もっと効率がいい方法があればいいとは思うものの、これ以上何か行動をおこすのは厳しい。
そう思っていたけど、小鞠が小さく呟いた。
『…おじいちゃん』
「え、おじいちゃん?」
小鞠が指さしたのは、とある一件で知り合った小さな神様の祠の破片だ。
『木霊の関係者でしょうか?』
「そうかもしれない。最近あまり顔を出せてなかったし、行ってみようか」
祠の修繕が終わってからも花束を渡しに行ってみているものの、必要以上に話を聞くことはなかった。
ただ、少しでも知っている可能性があるなら聞かせてほしい。
「今すぐというわけにはいかないけど、木霊のところへ向かおう」
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