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人形との暮らし
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体が重い。何かが上に乗っている気がする。
『おはよう』
「ん…?」
『おはよう』
目を開けると、小鞠が体によじ登ってきていた。
頭上の時計は6時を示している。
「ごめん、もう少しだけ寝させて…」
『おはよう』
眠れなくてずっと起きていたせいか、まだ頭がぱっとしない。
うとうとしていると、小鞠はなんとなく察知したのか横にちょこんと座った。
可愛らしい仕草をずっと見ていたかったものの、あまりの眠さに瞼を閉じる。
次に目が覚めたときは瑠璃も側にいた。
「おはよう…」
『おはようございます』
『おはよう』
あれから数日が経った。
やはり小鞠は短い単語しか覚えられないのか、あまり話しているのを見たことがない。
持ち主についての手がかりはまだ見つからず、分かったことは必ず6時に起こしてくれることだけだ。
「ご飯食べようか」
『ご飯…』
『食べられますか?』
食事も少しずつできるようになっていくらしく、今はまだスープとお粥が食べられる程度だ。
片手でしっかり支えて抱っこすると、なんだか楽しそうに笑っている。
そのまま椅子に座らせて様子を見ていたけど、勝手に動きまわろうとする様子はない。
「いただきます」
『美味しい』
『もう少しゆっくり飲まないと、喉につまらせますよ』
俺が出掛けている間は瑠璃に頼んでいるものの、どうしても悪戯するのがやめられないらしい。
「今日は散らかされないといいんだけど…」
『厳しいですね。彼女はすぐじたばたするので』
たまごボーロを食べながら、瑠璃も苦笑いしているようだった。
映像にあまり興味がないらしく、ずっとおえかきが折り紙ばかりしている気がする。
色々なものに興味が湧くようなので物を置かないように気をつけてはいるが、昨日は危うくシフト表を破られるところだった。
「今日はどうしようか。下手に町に連れ出すと狙われそうだし…」
『目を離した隙にどこかへ行ってしまいそうですよね』
「だけど、小鞠に直接見てもらわないと知っている場所かどうかなんて分からないし…そうだ」
疲れている瑠璃に頼むのは申し訳ないが、これ以外に方法なんて思いつかない。
「瑠璃、これをつけたまま外を飛んでみてもらえないか?」
『小型カメラですか…このくらいの重さなら問題ありません。早速いってきます』
「ありがとう。いってらっしゃい」
『いってらっしゃい』
小鞠は空に向かって手をふっている。
映像に興味を持っていない彼女になんとか見てもらう必要があるが、いい方法なんてそう簡単に思いつかない。
「小鞠、これから外の様子がここで見られるから一緒に見ようね」
『外、見る…?』
「うん。もし行ったことがある場所があればおしえてほしいんだ」
小鞠はきょとんとしていたものの、ゆっくり映像が流れはじめた瞬間画面に目を向ける。
持ち主を探すのが正解かなんて分からない。
だが、もう少し彼女について知らなければ対処のしようがないと判断した。
『おはよう』
「ん…?」
『おはよう』
目を開けると、小鞠が体によじ登ってきていた。
頭上の時計は6時を示している。
「ごめん、もう少しだけ寝させて…」
『おはよう』
眠れなくてずっと起きていたせいか、まだ頭がぱっとしない。
うとうとしていると、小鞠はなんとなく察知したのか横にちょこんと座った。
可愛らしい仕草をずっと見ていたかったものの、あまりの眠さに瞼を閉じる。
次に目が覚めたときは瑠璃も側にいた。
「おはよう…」
『おはようございます』
『おはよう』
あれから数日が経った。
やはり小鞠は短い単語しか覚えられないのか、あまり話しているのを見たことがない。
持ち主についての手がかりはまだ見つからず、分かったことは必ず6時に起こしてくれることだけだ。
「ご飯食べようか」
『ご飯…』
『食べられますか?』
食事も少しずつできるようになっていくらしく、今はまだスープとお粥が食べられる程度だ。
片手でしっかり支えて抱っこすると、なんだか楽しそうに笑っている。
そのまま椅子に座らせて様子を見ていたけど、勝手に動きまわろうとする様子はない。
「いただきます」
『美味しい』
『もう少しゆっくり飲まないと、喉につまらせますよ』
俺が出掛けている間は瑠璃に頼んでいるものの、どうしても悪戯するのがやめられないらしい。
「今日は散らかされないといいんだけど…」
『厳しいですね。彼女はすぐじたばたするので』
たまごボーロを食べながら、瑠璃も苦笑いしているようだった。
映像にあまり興味がないらしく、ずっとおえかきが折り紙ばかりしている気がする。
色々なものに興味が湧くようなので物を置かないように気をつけてはいるが、昨日は危うくシフト表を破られるところだった。
「今日はどうしようか。下手に町に連れ出すと狙われそうだし…」
『目を離した隙にどこかへ行ってしまいそうですよね』
「だけど、小鞠に直接見てもらわないと知っている場所かどうかなんて分からないし…そうだ」
疲れている瑠璃に頼むのは申し訳ないが、これ以外に方法なんて思いつかない。
「瑠璃、これをつけたまま外を飛んでみてもらえないか?」
『小型カメラですか…このくらいの重さなら問題ありません。早速いってきます』
「ありがとう。いってらっしゃい」
『いってらっしゃい』
小鞠は空に向かって手をふっている。
映像に興味を持っていない彼女になんとか見てもらう必要があるが、いい方法なんてそう簡単に思いつかない。
「小鞠、これから外の様子がここで見られるから一緒に見ようね」
『外、見る…?』
「うん。もし行ったことがある場所があればおしえてほしいんだ」
小鞠はきょとんとしていたものの、ゆっくり映像が流れはじめた瞬間画面に目を向ける。
持ち主を探すのが正解かなんて分からない。
だが、もう少し彼女について知らなければ対処のしようがないと判断した。
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