109 / 163
探索
しおりを挟む
「…瑠璃、嫌な予感がするのは俺だけかな?」
『そ、そんなことないと思いますよ』
「棒読みってことは、やっぱり何かありそうに見えるってことか」
俺たちの前には、また見たことがない建物がいつの間にか出現している。
それも、また古びているにも関わらず知らない場所だ。
「入りたくないけど、行くしかないってことか…」
『どうせ入らなくても何らかの事象に巻きこまれてしまうなら行きましょう』
「それもそうか」
このやりとり自体珍しいと判断されてもおかしくない。
だが、俺からすればいつものこと程度にしか感じられなかった。
1歩足を踏み入れただけで雰囲気が変わるのが分かる。
『何かの工房のようにも見えますね』
「そうだな。それに、やっぱりこの場所は他の人たちには視えてないのか」
『私たちのことさえ認識できていないようでしたね』
たしかに通行人がいたのに、こちらに見向きもせず進んでいった。
もし危ない奴だと思われていたら、あんなふうに目が合う位置で逸らさないはずがない。
「ということは、俺たちがここから出るには何か条件があるってことになる。また探さなくちゃいけないのか…」
『まあまあ。楽しく探索できるくらいに思った方がきっと気が楽ですよ』
「それはそうだろうけど、」
そこまで話した瞬間、どこかで聞いたことがあるゆったりしたBGMが流れはじめた。
「…総合美術館」
『え?』
「今聞こえた音、多分取り壊しになった美術館のものだ」
『そんなことがあるんですか?』
「普通はありえないんだろうけど、今の状況ならそうも言えない」
つまりここは美術館の跡地を模したもので、絵が床に散らばっているのも頷ける。
「これって拾ってもいいものかな?」
『持って帰るつもりですか?』
「そうじゃなくて、調べてもいいかってこと。人の家のものをとったらそれは泥棒だろう?」
『たしかにそうですが、なかなか奥まで辿り着けませんね』
「そうだな」
できるだけ声を出さないように気をつけているが、万が一大声が出てしまったらどうなるんだろう。
『…八尋、あれ』
「曲がれってことだな、多分」
瑠璃が見つけたのは、順路はこちらと書かれた看板だ。
恐らくこれにも従っておいた方がいいだろう。
『どうやら私たちの判断は間違っていなかったようですよ』
「あれって、男性?」
話しかけてもいいのか分からないけど、ただの人間である可能性はほぼないと言っていい。
少しずつ近づいていると、相手が突然こちらを振り向いた。
『いらっしゃいませ、お客様。本日は寒いところをありがとうございます。こちらへどうぞ』
なんとなく嫌な予感がしたが、ここでついていかないと何も始まらない。
少しずつ近づき、半開きだった扉を両手で開ける。
そこには現実離れした光景が広がっていた。
『そ、そんなことないと思いますよ』
「棒読みってことは、やっぱり何かありそうに見えるってことか」
俺たちの前には、また見たことがない建物がいつの間にか出現している。
それも、また古びているにも関わらず知らない場所だ。
「入りたくないけど、行くしかないってことか…」
『どうせ入らなくても何らかの事象に巻きこまれてしまうなら行きましょう』
「それもそうか」
このやりとり自体珍しいと判断されてもおかしくない。
だが、俺からすればいつものこと程度にしか感じられなかった。
1歩足を踏み入れただけで雰囲気が変わるのが分かる。
『何かの工房のようにも見えますね』
「そうだな。それに、やっぱりこの場所は他の人たちには視えてないのか」
『私たちのことさえ認識できていないようでしたね』
たしかに通行人がいたのに、こちらに見向きもせず進んでいった。
もし危ない奴だと思われていたら、あんなふうに目が合う位置で逸らさないはずがない。
「ということは、俺たちがここから出るには何か条件があるってことになる。また探さなくちゃいけないのか…」
『まあまあ。楽しく探索できるくらいに思った方がきっと気が楽ですよ』
「それはそうだろうけど、」
そこまで話した瞬間、どこかで聞いたことがあるゆったりしたBGMが流れはじめた。
「…総合美術館」
『え?』
「今聞こえた音、多分取り壊しになった美術館のものだ」
『そんなことがあるんですか?』
「普通はありえないんだろうけど、今の状況ならそうも言えない」
つまりここは美術館の跡地を模したもので、絵が床に散らばっているのも頷ける。
「これって拾ってもいいものかな?」
『持って帰るつもりですか?』
「そうじゃなくて、調べてもいいかってこと。人の家のものをとったらそれは泥棒だろう?」
『たしかにそうですが、なかなか奥まで辿り着けませんね』
「そうだな」
できるだけ声を出さないように気をつけているが、万が一大声が出てしまったらどうなるんだろう。
『…八尋、あれ』
「曲がれってことだな、多分」
瑠璃が見つけたのは、順路はこちらと書かれた看板だ。
恐らくこれにも従っておいた方がいいだろう。
『どうやら私たちの判断は間違っていなかったようですよ』
「あれって、男性?」
話しかけてもいいのか分からないけど、ただの人間である可能性はほぼないと言っていい。
少しずつ近づいていると、相手が突然こちらを振り向いた。
『いらっしゃいませ、お客様。本日は寒いところをありがとうございます。こちらへどうぞ』
なんとなく嫌な予感がしたが、ここでついていかないと何も始まらない。
少しずつ近づき、半開きだった扉を両手で開ける。
そこには現実離れした光景が広がっていた。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~
トベ・イツキ
キャラ文芸
三国志×学園群像劇!
平凡な少年・リュービは高校に入学する。
彼が入学したのは、一万人もの生徒が通うマンモス校・後漢学園。そして、その生徒会長は絶大な権力を持つという。
しかし、平凡な高校生・リュービには生徒会なんて無縁な話。そう思っていたはずが、ひょんなことから黒髪ロングの清楚系な美女とお団子ヘアーのお転婆な美少女の二人に助けられ、さらには二人が自分の妹になったことから運命は大きく動き出す。
妹になった二人の美少女の後押しを受け、リュービは謀略渦巻く生徒会の選挙戦に巻き込まれていくのであった。
学園を舞台に繰り広げられる新三国志物語ここに開幕!
このお話は、三国志を知らない人も楽しめる。三国志を知ってる人はより楽しめる。そんな作品を目指して書いてます。
今後の予定
第一章 黄巾の乱編
第二章 反トータク連合編
第三章 群雄割拠編
第四章 カント決戦編
第五章 赤壁大戦編
第六章 西校舎攻略編←今ココ
第七章 リュービ会長編
第八章 最終章
作者のtwitterアカウント↓
https://twitter.com/tobeitsuki?t=CzwbDeLBG4X83qNO3Zbijg&s=09
※このお話は2019年7月8日にサービスを終了したラノゲツクールに同タイトルで掲載していたものを小説版に書き直したものです。
※この作品は小説家になろう・カクヨムにも公開しています。
ハイブリッド・ニート ~二度目の高校生活は吸血鬼ハーフで~
於田縫紀
ファンタジー
36歳無職、元高校中退の引きこもりニートの俺は、ある日親父を名乗る男に強引に若返らされ、高校生として全寮制の学校へ入学する事になった。夜20時から始まり朝3時に終わる少し変わった学校。その正体は妖怪や人外の為の施設だった。俺は果たして2度目の高校生活を無事過ごすことが出来るのか。
結婚したくない腐女子が結婚しました
折原さゆみ
キャラ文芸
倉敷紗々(30歳)、独身。両親に結婚をせがまれて、嫌気がさしていた。
仕方なく、結婚相談所で登録を行うことにした。
本当は、結婚なんてしたくない、子供なんてもってのほか、どうしたものかと考えた彼女が出した結論とは?
※BL(ボーイズラブ)という表現が出てきますが、BL好きには物足りないかもしれません。
主人公の独断と偏見がかなり多いです。そこのところを考慮に入れてお読みください。
※この作品はフィクションです。実際の人物、団体などとは関係ありません。
※番外編を随時更新中。
恐怖症な王子は異世界から来た時雨に癒やされる
琴葉悠
BL
十六夜時雨は諸事情から橋の上から転落し、川に落ちた。
落ちた川から上がると見知らぬ場所にいて、そこで異世界に来た事を知らされる。
異世界人は良き知らせをもたらす事から王族が庇護する役割を担っており、時雨は庇護されることに。
そこで、検査すると、時雨はDomというダイナミクスの性の一つを持っていて──
腐っている侍女
桃井すもも
恋愛
私は腐っております。
腐った侍女でございます。
腐った眼(まなこ)で、今日も麗しの殿下を盗み視るのです。
出来過ぎ上司の侍従が何やらちゃちゃを入れて来ますが、そんなの関係ありません。
短編なのに更に短めです。
内容腐り切っております。
お目汚し確実ですので、我こそは腐ってみたいと思われる猛者読者様、どうぞ心から腐ってお楽しみ下さい。
昭和のネタが入るのはご勘弁。
❇相変わらずの100%妄想の産物です。
❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた、妄想スイマーによる寝物語です。
疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。
❇例の如く、鬼の誤字脱字を修復すべく激しい微修正が入ります。
「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さい。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
鬼の頭領様の花嫁ごはん!
おうぎまちこ(あきたこまち)
キャラ文芸
キャラ文芸大会での応援、本当にありがとうございました。
2/1になってしまいましたが、なんとか完結させることが出来ました。
本当にありがとうございます(*'ω'*)
あとで近況ボードにでも、鬼のまとめか何かを書こうかなと思います。
時は平安。貧乏ながらも幸せに生きていた菖蒲姫(あやめひめ)だったが、母が亡くなってしまい、屋敷を維持することが出来ずに出家することなった。
出家当日、鬼の頭領である鬼童丸(きどうまる)が現れ、彼女は大江山へと攫われてしまう。
人間と鬼の混血である彼は、あやめ姫を食べないと(色んな意味で)、生きることができない呪いにかかっているらしくて――?
訳アリの過去持ちで不憫だった人間の少女が、イケメン鬼の頭領に娶られた後、得意の料理を食べさせたり、相手に食べられたりしながら、心を通わせていく物語。
(優しい鬼の従者たちに囲まれた三食昼寝付き生活)
※キャラ文芸大賞用なので、アルファポリス様でのみ投稿中。
私、メリーさん。今、あなたと色んな物を食べているの
桜乱捕り
キャラ文芸
「私、メリーさん。今日、不思議な人間に出会ったの」
都市伝説であるメリーさんが出会ったのは、背後に立っても慄かず、一杯の味噌汁を差し出してきた人間。
その味噌汁を飲んだメリーさんは、初めて食べた料理に衝撃を受け、もっと色んな料理を食べてみたいと願い始めた。
片や、毎日を生き延びるべく、試行錯誤を繰り返す楽天家な人間。
片や、ただ料理を食べたいが為だけに、殺す事が出来ない人間の家に毎日現れる都市伝説。
互いに嚙み合わないずれた思考が平行線のまま続くも、一つの思いだけが重なっていく日常。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる