カルム

黒蝶

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止まらない噂

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「また皮剥さんが出たらしいよ!指の皮がなかったって」
「ばらばらの皮を繋ぎ合わせて人間になりたいんだっけ?それにしても怖いね…」
本来、そんな噂ではなかったのだろう。
或いは最近創られたものなのかもしれない。
皮切りさんが出現する時間帯はあまり決まっていないようだが、それならどうやって探しだせばいいだろう。
「八尋君」
「お疲れ様です」
「柊から聞いたけど、怪我大丈夫?」
「もう平気です。心配かけてすみません」
本当は所々痛むけど、そんなことを言っていられる余裕はない。
「八尋君、ひとりが好きなの?」
「嫌いではないです」
寧ろ独りの方が楽ということもある。
中津先輩や山岸先輩みたいな優しい人たちに、心配や迷惑をかけたくない。
「すみません。俺、今日はもう行かないと」
「何かあったら言ってね」
「ありがとうございます」
頼ることなんてできない。
もしそれで先輩を傷つけることになったら、悔やんでも悔やみきれないだろうから。
『頼りにさせてもらえばいいのに』
「駄目だよ。これは俺の問題だから、本当なら瑠璃のことだって巻きこみたくない」
『私では力不足ということでしょうか?』
この言い方では語弊があったかもしれない。
「そういうわけじゃない。ただ、君を傷つけられるのが嫌なんだ」
『全部ひとりでなんてできるはずないんですから、私くらいは隣にいます』
「ごめん。ありがとう」
瑠璃はいつも優しくしてくれる。その言葉だけで充分だ。
『それで、どうするつもりですか?』
「まずは噂を止めたい。いつもみたいにやってもらえないかな?」
『できる限りやってみます』
最近気づいたのが、瑠璃には噂を変える力があるらしいということだ。
本人は違うと言っていたけど、それならこんなに早く噂が書き変わるはずがない。
「…俺はまたあのサイトに入ってみようかな」
『危険じゃありませんか?』
「それでもやってみるしかないだろ」
これ以外方法がない。
相手の目的が分からないなか動くのは危険だが、このまま放っておけばまた暴走してしまう。
【皮切りさんは林檎の皮むきが得意で、林檎を渡すときちんと逃してくれるらしい】
こんなものしか思いつかなかったけど、これで噂を変えられればそれでいい。
…そう思っていた俺が甘かった。
【不審な遺体見つかる。右手の皮が欠損】
『これはまた、派手にやりましたね…』
「今回は、変えるのに失敗したってことか?それとも時間がかかっているとか…」
どっちだろう。それによってこのままでいいのかどうか決まる。
ただ、恐らくまた犠牲者が出てしまった事実は変えられない。
窓ガラスに写った左眼は、なんだかいつもより禍々しいものに思えた。
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