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隠れていたもの
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夜陽炎の噂を変えたサイトの記録を探すと、やはり復活していた。
前回噂を変えた後なくなっていたはずなのに、どうしてこんなひっそりと再開しているのだろう。
それに、何故この町で噂が具現化しやすいのかも謎だ。
「…取り敢えず、いつもどおり出勤するしかないか」
『叱られそうですね』
「ああ…先輩たちになんて説明しよう」
そういえば、瑠璃は相手が人間じゃないと分かった途端心を開いているような気がする。
それなら、どうして俺とは仲良くしてくれるんだろう。
たしかに困りごとを解決はしたが、特別なことなんて何もしていない。
『八尋、さっき言っていたサイトとやらを見せてもらってもいいですか?』
「構わないけど、何か書き込むのか?」
『いえ。少したしかめておきたいことがあるのです』
「分かった、ちょっと待ってて」
検索するとすぐ引っかかるようになっていて、そこにも違和感を覚える。
作り直したばかりのサイトが、こんなにすぐ検索エンジンの上位にくることがあるだろうか。
『…成程、やはりそういうことでしたか』
「何かあるのか?」
『これには術がかかっています』
「術?」
『人間たちを魅了する為のもののようです。あなたには効かないようですが、大抵の人間は少し目にしただけでたちまち調べるようになるでしょう』
「そんなものがあるのか…」
だから広がりは早いし、より凶暴性がある話が作られたりしているのか。
それがきっかけで本当に暴走してしまう妖や死霊、怪異たちがいることを人間たちは知らない。
「いつもなら気づくのに、なんで気づかなかったんだろう」
『恐らくですが、効きづらい相手には見極められないように作りこまれているのでしょう』
「魔法陣みたいな背景があるようにしか見えないから、まさかそんなものがかかってるとは思わなかった」
『…それが陣です』
瑠璃が驚いたように言うということは、これも普通の人間には感知できないものなのかもしれない。
「これ、視えないのが普通なのか?」
『祓い屋でも視えません』
「そうか…知らなかった」
時折、左眼で視える景色が右目とは少し違ったものになることがある。
今もその状態だと思うが、まさかそんなに珍しいものだとは思っていなかった。
『これに隠されたものに、大抵の人間は気づきません。その陣は何色に視えますか?』
「焼け焦げた黒みたいに視えるけど…」
『恐ろしく目がいいんですね。あとは危険回避力だけ身につけば完璧です』
「えっと、ありがとう…?」
そういえば、あの人からも同じようなことを言われた気がする。
ただ、これから先あの男に戦いを挑むなら視えた方がいいかもしれない。
そんなことを考えながら、仕事へ行く準備をすませた。
前回噂を変えた後なくなっていたはずなのに、どうしてこんなひっそりと再開しているのだろう。
それに、何故この町で噂が具現化しやすいのかも謎だ。
「…取り敢えず、いつもどおり出勤するしかないか」
『叱られそうですね』
「ああ…先輩たちになんて説明しよう」
そういえば、瑠璃は相手が人間じゃないと分かった途端心を開いているような気がする。
それなら、どうして俺とは仲良くしてくれるんだろう。
たしかに困りごとを解決はしたが、特別なことなんて何もしていない。
『八尋、さっき言っていたサイトとやらを見せてもらってもいいですか?』
「構わないけど、何か書き込むのか?」
『いえ。少したしかめておきたいことがあるのです』
「分かった、ちょっと待ってて」
検索するとすぐ引っかかるようになっていて、そこにも違和感を覚える。
作り直したばかりのサイトが、こんなにすぐ検索エンジンの上位にくることがあるだろうか。
『…成程、やはりそういうことでしたか』
「何かあるのか?」
『これには術がかかっています』
「術?」
『人間たちを魅了する為のもののようです。あなたには効かないようですが、大抵の人間は少し目にしただけでたちまち調べるようになるでしょう』
「そんなものがあるのか…」
だから広がりは早いし、より凶暴性がある話が作られたりしているのか。
それがきっかけで本当に暴走してしまう妖や死霊、怪異たちがいることを人間たちは知らない。
「いつもなら気づくのに、なんで気づかなかったんだろう」
『恐らくですが、効きづらい相手には見極められないように作りこまれているのでしょう』
「魔法陣みたいな背景があるようにしか見えないから、まさかそんなものがかかってるとは思わなかった」
『…それが陣です』
瑠璃が驚いたように言うということは、これも普通の人間には感知できないものなのかもしれない。
「これ、視えないのが普通なのか?」
『祓い屋でも視えません』
「そうか…知らなかった」
時折、左眼で視える景色が右目とは少し違ったものになることがある。
今もその状態だと思うが、まさかそんなに珍しいものだとは思っていなかった。
『これに隠されたものに、大抵の人間は気づきません。その陣は何色に視えますか?』
「焼け焦げた黒みたいに視えるけど…」
『恐ろしく目がいいんですね。あとは危険回避力だけ身につけば完璧です』
「えっと、ありがとう…?」
そういえば、あの人からも同じようなことを言われた気がする。
ただ、これから先あの男に戦いを挑むなら視えた方がいいかもしれない。
そんなことを考えながら、仕事へ行く準備をすませた。
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