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洋館
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「そんな危ない奴だったのか…」
まさかそれほどとは思っていなかった。
普通の祓い屋くらいにしか見ていなかった俺は、認識が甘かったらしい。
『相変わらず気配を察知できていないんですね…。それとも、苦手なんですか?』
「感覚的にさえ掴めてなかった。だけど、あいつは人間だと思ってたんだ」
無慈悲で優しくない、相手の話を聞かない恐ろしい奴…俺の認識はその程度だった。
「あの男が人間だと思ったのは、他の人間にも見えているからだよ」
『…あんなに悍しい姿ではうつっていないんでしょうね』
「瑠璃にはどう視えてるの?」
『表現するのが難しいです。ただ、普通の人間とは違う気配を感じます。
祓い屋というものを見るのは初めてではありませんが、あんなふうに視えたことはありませんでした』
「…そうか。だったら気をつけないと」
しばらく後を追っていたものの、いつの間にか見失ってしまった。
相手に気づかれたわけではないといいが、それより気になったものがある。
…こんな場所に廃墟なんてあっただろうか。
『その場所が気になるんですか?』
「この場所に家があったなら気にしないんだけど、子は長年更地だったはずなんだ。
それなのに、こんなに古い洋館みたいなものがあるのは変だなって…」
これだけ大きな屋敷に住んでいる人ってどんな人なんだろう。
少し会ってみたい気もするが、きっと何を話したらいいか分からなくなるだろうとすぐに予想できた。
「見失ったし、帰ろうか」
『何故あの男を追っているのか、まだ教えてもらえないんでしょうか?』
現れてしまった以上、放っておくこともできない。
ただ、瑠璃を巻きこんでもし危ない目に遭わせてしまったらどうしようと考えてしまう。
「…昔、色々あったんだ。1度町を出ていったみたいだったから、できればこのまま関わりたくなかったんだけど…」
そこまで話したところで、瑠璃が洋館の前で止まっていることに気づく。
「どうかしたのか?」
『どうやら招かれているようです』
「え?」
さっきまで開いていなかったはずの大きな門が開かれていて、中まで入れるようになっていた。
「行った方がいい、よな…。瑠璃は、」
『お断りします。ひとりで帰るなんて嫌です』
「…お見通しか。分かった、じゃあ取り敢えず奥まで入ってみよう」
『いつものスクラップはありますか?』
「念のため、調べながら進もうとは思う。ただ、本当に人が住んでいたら失礼になるし…お邪魔します」
ゆっくり敷地内に足を踏み入れると、門がひとりでに閉まる。
足元に落ちていた看板は文字がこすれていて読めなかったが、恐らくこう書かれていたのだろう。
──【立入禁止】
まさかそれほどとは思っていなかった。
普通の祓い屋くらいにしか見ていなかった俺は、認識が甘かったらしい。
『相変わらず気配を察知できていないんですね…。それとも、苦手なんですか?』
「感覚的にさえ掴めてなかった。だけど、あいつは人間だと思ってたんだ」
無慈悲で優しくない、相手の話を聞かない恐ろしい奴…俺の認識はその程度だった。
「あの男が人間だと思ったのは、他の人間にも見えているからだよ」
『…あんなに悍しい姿ではうつっていないんでしょうね』
「瑠璃にはどう視えてるの?」
『表現するのが難しいです。ただ、普通の人間とは違う気配を感じます。
祓い屋というものを見るのは初めてではありませんが、あんなふうに視えたことはありませんでした』
「…そうか。だったら気をつけないと」
しばらく後を追っていたものの、いつの間にか見失ってしまった。
相手に気づかれたわけではないといいが、それより気になったものがある。
…こんな場所に廃墟なんてあっただろうか。
『その場所が気になるんですか?』
「この場所に家があったなら気にしないんだけど、子は長年更地だったはずなんだ。
それなのに、こんなに古い洋館みたいなものがあるのは変だなって…」
これだけ大きな屋敷に住んでいる人ってどんな人なんだろう。
少し会ってみたい気もするが、きっと何を話したらいいか分からなくなるだろうとすぐに予想できた。
「見失ったし、帰ろうか」
『何故あの男を追っているのか、まだ教えてもらえないんでしょうか?』
現れてしまった以上、放っておくこともできない。
ただ、瑠璃を巻きこんでもし危ない目に遭わせてしまったらどうしようと考えてしまう。
「…昔、色々あったんだ。1度町を出ていったみたいだったから、できればこのまま関わりたくなかったんだけど…」
そこまで話したところで、瑠璃が洋館の前で止まっていることに気づく。
「どうかしたのか?」
『どうやら招かれているようです』
「え?」
さっきまで開いていなかったはずの大きな門が開かれていて、中まで入れるようになっていた。
「行った方がいい、よな…。瑠璃は、」
『お断りします。ひとりで帰るなんて嫌です』
「…お見通しか。分かった、じゃあ取り敢えず奥まで入ってみよう」
『いつものスクラップはありますか?』
「念のため、調べながら進もうとは思う。ただ、本当に人が住んでいたら失礼になるし…お邪魔します」
ゆっくり敷地内に足を踏み入れると、門がひとりでに閉まる。
足元に落ちていた看板は文字がこすれていて読めなかったが、恐らくこう書かれていたのだろう。
──【立入禁止】
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