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ひとしょうぶ
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その日、インターネットで情報収集をした。
そうすると、蒼汰君に聞いていなかった情報が少し出てくる。
「それじゃあそろそろ行ってみようか」
『うん!」
翌日にはもう相手の場所を突き止め、すぐに足を運んだ。
『あ、お兄ちゃん!」
「そうか、やっぱりあの子なんだね」
不審者に見えないように人に話しかけに行くのがこんなに大変だとは思わなかった。
だが、俺にはこんな方法しかない。
「こんにちは。陽太君ですか?」
「あ…はい。取材とかならお断りします」
『お兄ちゃん、僕だよ!」
「今目の前に蒼汰君がいるって言ったら信じてくれる?」
「…人の心の傷を抉りに来たのか」
そう話す彼の肩は怒りで震えている。
これは話し方を間違えた、そう思ったときには遅かった。
「帰ってくれ!俺のせいで蒼汰は死んだんだ!」
『違うよ。お兄ちゃんは僕を護ろうとしてくれたでしょ?だけど、元々僕は長くなかったんだ。
もうすぐ病気で死ぬって新しいお母さんが泣いてたよ」
「…新しいお母さん?」
思わず口にした瞬間、思いきり相手の平手打ちが決まった。
「まだ訳の分からないことを言うつもりか。近寄らないでくれ」
『お兄ちゃん、やめて!」
死んだはずの人間が存在しているはずがない。
その思考はいつも接する人間だからこそのもので、視えない相手と話すなんてやっぱり俺には向いてないと悟る。
だが、こんなに必死で訴えている人がいるなら放っておくわけには行かない。
「…蒼汰君とは公園でゲームをする予定だったんですよね?」
「誰から聞いたんだ」
「本人です。それを証明する為に、俺と今から勝負してください」
「くだらない。そんなことをしたところで何になる?」
「俺が勝ったら話を聞いてください」
「…面倒くさ」
『お兄さん、ドットアンドボックスって知ってる?」
「名前と軽いルールくらいなら」
「さっきから誰と話してるんだ」
「今ここに蒼汰君がいると言ったでしょう?」
目の前の青年は鼻で笑った。
いつものことながら、何故人間というのは視えない世界を否定するんだろう。
「俺は蒼汰君のアドバイスを聞きながらやります。だから、ドットアンドボックスで勝負してください」
「…分かった」
余程自信があるのか、自分なら負けることはないと思っているのか。
或いは、嘘つきの鼻をへし折ってやろうくらいに思っているのかもしれない。
「ルールは、」
「いりません。ここで説明を受けたら、蒼汰君がいると証明できなくなる気がするので」
『お兄さん…」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。俺は簡単に負けたりしないから」
できるだけ笑いかけたつもりだったが、逆に心配させてしまったようだ。
蒼汰君の頭を撫で、すぐに目の前の人間の背後に回る。
「…そっちの店でやりましょう。車椅子でこの場所に長居するのは体に障ります」
「いきなり俺を労ってるつもりなのか」
「ここだと冷えます。俺も怪我だらけなので、あの場所なら傷に障らないでしょう」
相手に気を遣わせてしまっては意味がない。
心を閉ざしているような相手の瞳に怯みそうになりながら、なんとか店に入ることができた。
「先攻後攻好きな方を選んでください」
「…負けたら二度と近づかないでもらう」
太陽が雲に隠れてしまった午後、こうして絶対に負けられない勝負がはじまった。
そうすると、蒼汰君に聞いていなかった情報が少し出てくる。
「それじゃあそろそろ行ってみようか」
『うん!」
翌日にはもう相手の場所を突き止め、すぐに足を運んだ。
『あ、お兄ちゃん!」
「そうか、やっぱりあの子なんだね」
不審者に見えないように人に話しかけに行くのがこんなに大変だとは思わなかった。
だが、俺にはこんな方法しかない。
「こんにちは。陽太君ですか?」
「あ…はい。取材とかならお断りします」
『お兄ちゃん、僕だよ!」
「今目の前に蒼汰君がいるって言ったら信じてくれる?」
「…人の心の傷を抉りに来たのか」
そう話す彼の肩は怒りで震えている。
これは話し方を間違えた、そう思ったときには遅かった。
「帰ってくれ!俺のせいで蒼汰は死んだんだ!」
『違うよ。お兄ちゃんは僕を護ろうとしてくれたでしょ?だけど、元々僕は長くなかったんだ。
もうすぐ病気で死ぬって新しいお母さんが泣いてたよ」
「…新しいお母さん?」
思わず口にした瞬間、思いきり相手の平手打ちが決まった。
「まだ訳の分からないことを言うつもりか。近寄らないでくれ」
『お兄ちゃん、やめて!」
死んだはずの人間が存在しているはずがない。
その思考はいつも接する人間だからこそのもので、視えない相手と話すなんてやっぱり俺には向いてないと悟る。
だが、こんなに必死で訴えている人がいるなら放っておくわけには行かない。
「…蒼汰君とは公園でゲームをする予定だったんですよね?」
「誰から聞いたんだ」
「本人です。それを証明する為に、俺と今から勝負してください」
「くだらない。そんなことをしたところで何になる?」
「俺が勝ったら話を聞いてください」
「…面倒くさ」
『お兄さん、ドットアンドボックスって知ってる?」
「名前と軽いルールくらいなら」
「さっきから誰と話してるんだ」
「今ここに蒼汰君がいると言ったでしょう?」
目の前の青年は鼻で笑った。
いつものことながら、何故人間というのは視えない世界を否定するんだろう。
「俺は蒼汰君のアドバイスを聞きながらやります。だから、ドットアンドボックスで勝負してください」
「…分かった」
余程自信があるのか、自分なら負けることはないと思っているのか。
或いは、嘘つきの鼻をへし折ってやろうくらいに思っているのかもしれない。
「ルールは、」
「いりません。ここで説明を受けたら、蒼汰君がいると証明できなくなる気がするので」
『お兄さん…」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。俺は簡単に負けたりしないから」
できるだけ笑いかけたつもりだったが、逆に心配させてしまったようだ。
蒼汰君の頭を撫で、すぐに目の前の人間の背後に回る。
「…そっちの店でやりましょう。車椅子でこの場所に長居するのは体に障ります」
「いきなり俺を労ってるつもりなのか」
「ここだと冷えます。俺も怪我だらけなので、あの場所なら傷に障らないでしょう」
相手に気を遣わせてしまっては意味がない。
心を閉ざしているような相手の瞳に怯みそうになりながら、なんとか店に入ることができた。
「先攻後攻好きな方を選んでください」
「…負けたら二度と近づかないでもらう」
太陽が雲に隠れてしまった午後、こうして絶対に負けられない勝負がはじまった。
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