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温かなお礼
しおりを挟む_宇宙空間 エルディアン連邦宇宙軍管轄宇宙域本部 2069年2月3日
けたたましくアラート音が響く宇宙域本部連絡通路。エルディアン連邦があまたの資金を投入し、今尚建設が進められている”超”巨大宇宙施設だ。その規模は国際宇宙ステーションの5倍を軽く超える。
当然それだけの規模となれば各国の宇宙飛行士なども多数滞在しており、その状態は殆どちょっとした連邦国家と言っても差し支えない。
と、それは置いておき、だ。現在、この宇宙域本部は不可解な事態に見舞われているようだった。
—
——
—
「一体何が起きてるってるんだよッ!!」
通路側面に均等に配置されたガラス窓からチラチラと見える、地形が完全に変わり果てた眼前の謎の惑星を遠目にクルーの一人、ロードリアは混乱した様子で一心不乱に叫ぶ。
それは、あまりにも突然の出来事だったのだ。
説明のしようがない。ただただ、突然、こうなった。前触れなんて身に覚えもない。本当に、突然だった。
と、ここで本部内放送が入る。
『各員に緊急通達。現在我々は幻覚を見ているのかもしれないが……これは現実だ』
放送員は息を飲むと、”落ち着いて聞け”と言わんばかりの口調で通達を再開する。
『我々はどうやら……別惑星軌道上に、存在しているようだ』
_エルディアン連邦 ネオ・クレセント・シティ
ネオ・クレセント・シティ。それは、旧アメリカ合衆国カリフォルニア州北部デルノルト郡の都市、そして同郡の郡庁所在地だった。
総人口が4万人だった頃(刑務所含む)、つまり、2045年に発生した世界規模での大飢餓『初夏の惨劇』により人口が半分以下にまで減少し、都市としての機能を喪失。それからというものの、全く人の手が入らないまま放置された。
そして月日は流れ約20年程が経過。財政面が安定したエルディアン連邦は都市機能の復旧という名目で旧市街も全てを耐用年数を超え、さらに暫くの間放置されて居たことも考慮して一旦破壊。そこに新たに形成された街。それが、移民用地方都市、ネオ・クレセント・シティだった。
—
——
—
「お母さん!早く早く!」
今年小学校に入る予定の息子のジョニーは元気な声で手招きをし、海辺に建てられたスーパーマーケットの展望台へと続く階段を駆け上がっていく。
「怪我しちゃダメよぉ~」
その後ろを追うように、ジョニーの母カーラはゆっくりとした歩みで階段を上がっていく。
ここは、この街の港湾施設を一望できる展望台が設置されているスーパーマーケット。平日はあまり賑わうことはないが、休日には子供や写真家たちなどが姿を見せる。彼らも、そのうちの二人だった。
「わぁーっ……!」
ジョニーは一足先に着いた展望台から、港湾施設に停泊する大小種類様々な船を見て喜びの声を上げる。
やがてカーラも展望台へと続く階段を登り切り、周囲の迷惑にならないように港湾施設内部の船舶を眺めていた。
「お母さん!見て見て!あの船、かっこいい!」
すると、突然ジョニーはそう言う。彼は港湾施設内部の船舶——ではなく、その外。沿岸から目測で数キロほど先を航行する”船”を、指差す。
「え……?あ……あれって……」
はしゃぐジョニーを横目に、カーラは首をかしげる。いや、それは彼女だけではなかった。そこにいた誰もが、その光景を……”それら”の存在に疑問があった。
現代では一部の船舶を除けば一切使用されることがない大きな白い帆。遅い巡航速度。船体横から突き出るように顔を出す、数十の”何か”。もはや木の塊とまで言えるほど、船体全体が木材で構成される、存在そのものが現代ではあまりにも異質な、ソレ。
似たような形状をした”ソレ”が、沖に二十……いや、三十は浮かんでいた。
場は、静まり返る。
_場所は変わり、エルディアン連邦首都 プレイディアル 大統領府
エルディアン連邦首都、プレイディアル。かつてアメリカ合衆国の首都であったワシントンD.Cを、エルディアン連邦政府がエルディアン連邦設立時の臨時首都として制定。そのまま正式に首都として認定された場所である。
首都の設備・建築物はより一層近代化し、自動運転車両用に改築された車道には数多の自動運転車両が走行し、各所には小規模の大手ネット通販企業が建設した荷物運搬用ドローン基地併設荷物積載所が置かれている。
アメリカ合衆国であった以前よりも一層建築物が入り混じっている中、なお存在感を残す存在が存在する。それが、大統領府だった。
その執務室で、現在エルディアン連邦第9代目大統領ニッソン・J・アルフレッドが黙々と執務をこなしていた。
「……んぅぅぅぅぅっ!」
長ったらしい執務に疲れ、背伸びをしていると執務室のドアがノックされる。
「ん……入りたまえ」
ドアからは国防担当大臣のルイスが入室する。
「大統領、執務中申し訳ありません。……重大な問題が、発生致しました」
「ん?なんだね」
ルイスは一息置くと、珍しく動揺した顔で衝撃的な発言をする。
「各国との通信が途絶、及び宇宙域本部からの連絡で……我々は、別惑星にいるようだ、とのことです」
「……は?」
ニッソンは、嘘だろおいおいと言いたげな顔でルイスを見つめる。
「いやいや……待ちたまえ。何?別惑星、だと?」
「はい。別惑星です」
わけがわからない。いや、状況が飲み込めない。我々が住んでいるのは地球のはずだ。だが、宇宙に関してはプロフェッショナルが集う宇宙域本部からの通信だ。間違うはずがない。
「他国は?他国はどうなったのかね?」
動揺を隠せない口調で尋ねる。
「宇宙域本部の見間違いでなければ……他国は、全て消滅。今この世界に存在するのは我々と謎の大陸のみ、だそうです」
ニッソンは言葉を失う。
「私は対応に追われているのでこれで……」
一方のルイスは殴り捨てるようにそれを伝えた後そそくさと執務室を退出する。
執務室にはただ一人、椅子に座るニッソンのみが残される。
「……とりあえず状況確認だな……うむ。緊急会議を開くか。大臣に招集をかけるとしよう」
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