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保護者
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「…これでよし」
その少女はシャワーの使い方が分かっていなかった。
びしょびしょになりながらなんとか体を洗わせてもらって、痛々しい傷の手当てをする。
「ごめん。俺はあんまり手当てが上手い方じゃないんだ」
「…いえ。お風呂にも入らせてもらって、お菓子まで用意してもらって…それだけで充分です」
彼女は行儀よく食べているが、それなら何故浴室の使い方が分からなかったのだろう。
「えっと…名前を聞いてもいいかな?」
「…シェリ、です」
「愛される者か、いい名前だね」
「知ってるん、ですか?」
「フランス語だよね?少しだけなら分かるよ」
なんとなく海外の本を読んでみたくなって、独学で単語を勉強していたことがある。
今でも紙の辞書は現在で、時々意味を調べる程度には使っていた。
海外に住んでいたのなら、お風呂の入り方が分からなくても不思議ではないのかもしれない。
「あ、あの、」
「そっか、家の人に連絡した方がいいかな?もう夜遅いし…」
「…怪我のことは、訊かないんですか?」
「聞いてほしくないって顔をしているから、つっこんじゃないけないんだろうなって思って…そうだ、シェリは携帯電話って持ってる?」
「は、はい。一応は…」
「それなら、連絡先を交換しておこう」
「いいん、ですか?」
「勿論。俺は八尋っていうんだ。困ったときや何か話したいことがあるときはいつでも連絡してね。
夜は仕事で出られないこともあるかもしれないけど…」
それから小さめの携帯電話を借りて、電話番号を交換する。
先日の梨里ちゃんと駿君のようなことにはさせたくない。
洋服は綺麗だし、ご飯をもらえていないわけでもなさそうではある。
…だからこそ、彼女もそうだとは限らないが怪我をしている子をこんな夜中に歩かせるのは危険だ。
「…連絡、しました」
「よかった、それなら…」
「あ、あの…目、綺麗ですね」
そう言われて、左眼を隠すのをすっかり忘れていたことに気づく。
だが、彼女は確かに綺麗だと小さな声で言ってくれた。
「…ありがとう。気味悪がられることが多いから、できるだけ人には見せないようにしているんだ」
「綺麗、なのに…鳥さんも、綺麗ですね」
「え…?シェリはこの子が視えるの?」
「…?はい、どっちの翼も綺麗です」
ただ視える子なのか、それとも人間じゃなかったのか。
見分けがつかない俺ではどうしようもない。
そうこうしているうちに、インターホンが鳴った。
ドアを開けてみると、そこには誰かと雰囲気が似ている女性が立っている。
「ごめんなさいねえ、まさか襲われそうになっていたなんて…」
「いえ、大丈夫です」
「あの…」
「まあ、あなたが助けてくださったの。ありがとうございます。私はケイト、その子の保護者のようなものよ」
「いえ。ただ、まだ小さいのにこんな夜中にひとりで歩かせるのは危ないと思います」
なんとか乾燥させるまで間に合った洋服を袋に入れて渡すと、彼女は何故か驚いていた。
「助けていただいたうえに洋服まで借りたの?…怪我は悪化しなかった?」
「私は、大丈夫です」
「念のため、帰ったら検査しておきましょう。…ありがとう、この子はあなたに助けられて幸運だったわ。
それから…あなたの言葉、肝に銘じておくわ」
どうやら悪い人ではなかったらしい。
一礼して去っていくふたりを見ながら、ひとつ疑問が残った。
シェリが連絡したからここにきた…そう、連絡しかしていないはず…たったそれだけのことで、どうして位置まで把握できたんだ?
その少女はシャワーの使い方が分かっていなかった。
びしょびしょになりながらなんとか体を洗わせてもらって、痛々しい傷の手当てをする。
「ごめん。俺はあんまり手当てが上手い方じゃないんだ」
「…いえ。お風呂にも入らせてもらって、お菓子まで用意してもらって…それだけで充分です」
彼女は行儀よく食べているが、それなら何故浴室の使い方が分からなかったのだろう。
「えっと…名前を聞いてもいいかな?」
「…シェリ、です」
「愛される者か、いい名前だね」
「知ってるん、ですか?」
「フランス語だよね?少しだけなら分かるよ」
なんとなく海外の本を読んでみたくなって、独学で単語を勉強していたことがある。
今でも紙の辞書は現在で、時々意味を調べる程度には使っていた。
海外に住んでいたのなら、お風呂の入り方が分からなくても不思議ではないのかもしれない。
「あ、あの、」
「そっか、家の人に連絡した方がいいかな?もう夜遅いし…」
「…怪我のことは、訊かないんですか?」
「聞いてほしくないって顔をしているから、つっこんじゃないけないんだろうなって思って…そうだ、シェリは携帯電話って持ってる?」
「は、はい。一応は…」
「それなら、連絡先を交換しておこう」
「いいん、ですか?」
「勿論。俺は八尋っていうんだ。困ったときや何か話したいことがあるときはいつでも連絡してね。
夜は仕事で出られないこともあるかもしれないけど…」
それから小さめの携帯電話を借りて、電話番号を交換する。
先日の梨里ちゃんと駿君のようなことにはさせたくない。
洋服は綺麗だし、ご飯をもらえていないわけでもなさそうではある。
…だからこそ、彼女もそうだとは限らないが怪我をしている子をこんな夜中に歩かせるのは危険だ。
「…連絡、しました」
「よかった、それなら…」
「あ、あの…目、綺麗ですね」
そう言われて、左眼を隠すのをすっかり忘れていたことに気づく。
だが、彼女は確かに綺麗だと小さな声で言ってくれた。
「…ありがとう。気味悪がられることが多いから、できるだけ人には見せないようにしているんだ」
「綺麗、なのに…鳥さんも、綺麗ですね」
「え…?シェリはこの子が視えるの?」
「…?はい、どっちの翼も綺麗です」
ただ視える子なのか、それとも人間じゃなかったのか。
見分けがつかない俺ではどうしようもない。
そうこうしているうちに、インターホンが鳴った。
ドアを開けてみると、そこには誰かと雰囲気が似ている女性が立っている。
「ごめんなさいねえ、まさか襲われそうになっていたなんて…」
「いえ、大丈夫です」
「あの…」
「まあ、あなたが助けてくださったの。ありがとうございます。私はケイト、その子の保護者のようなものよ」
「いえ。ただ、まだ小さいのにこんな夜中にひとりで歩かせるのは危ないと思います」
なんとか乾燥させるまで間に合った洋服を袋に入れて渡すと、彼女は何故か驚いていた。
「助けていただいたうえに洋服まで借りたの?…怪我は悪化しなかった?」
「私は、大丈夫です」
「念のため、帰ったら検査しておきましょう。…ありがとう、この子はあなたに助けられて幸運だったわ。
それから…あなたの言葉、肝に銘じておくわ」
どうやら悪い人ではなかったらしい。
一礼して去っていくふたりを見ながら、ひとつ疑問が残った。
シェリが連絡したからここにきた…そう、連絡しかしていないはず…たったそれだけのことで、どうして位置まで把握できたんだ?
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