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おかめ仮面
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瑠璃は何も言わず側にいてくれたけど、かたんと音がして遠慮がちに声をかけた。
『…八尋、相談事のようですよ』
「相談事?」
体を起こすと、先程神社で見かけたおかめがこちらに一礼した。
真面目なのか入れなかったのか、ベランダで立ち尽くしているように見える。
慌てて開けると、ゆっくり部屋に入った。
「さっきいた…」
『やはり視えておいででしたか。人間に関すること故、私では手出しできずお願いに参りました』
「神社の偉い護り人、みたいなものですよね?そんな立派な人にお願いされるような立場じゃ、」
『他に頼れるものがいないのです。…あなたならきっと、ワカを救ってくれるはず』
この人に感謝されているということは、余程あの神社によくした人に違いない。
…一先ず話を聞こう。
「そのワカさんっていう人は、どこにいるんですか?」
『成仏できず、いつも公園の砂場を見つめております。これを解決したのがあなた様だと、風の噂で聞きました』
そこには、《殺された被害者が探偵で、彼女の恋人が証拠を見つけて犯人確保》の文字。
「…それは、恋人さんが頑張った結果だよ。俺はただ、彼女の願いを叶えたにすぎない」
『見返りを求めないその姿勢がよろしいのでは?大抵の人間は、困ったときだけ神だの仏だのに縋り神社に来るものです。
…あなたはあの子と同じ、無欲だとお見受けしました』
「それじゃあ、ワカさんっていう人は君にとって大切な人なんだね」
おかめは頷くと、ワカさんとの話をしてくれた。
いつも歌を詠んでいたこと、独りで寂しそうに俯いていたこと、実は視える人で会う度話をしていたこと…。
おかめは哀しそうに話を続ける。
『本来であれば、私がなんとかしたい。ですが、神社の規則によりそれが叶いません。
どうか…どうかお願いします』
「分かった。絶対に、とは言えないけど約束する。必ず公園に顔を出すよ」
『ありがとうございます…!』
こんなに頭を下げられては断れない。
話が嘘とも思えない為、引き受けてみることにした。
「その公園というのは、一体どこに…」
『さつきが丘公園です。それでは、お願いいたします』
おかめは慌ただしく去っていく。
「神社付きって忙しいの?」
『割と。あの者は位が高そうでしたし、余計に忙しいのでしょうね』
「…俺、途中からため口使っちゃった」
『大丈夫です。その程度のことも寛容できない心が狭ければ、あれほどの力は与えられていないはずですから』
「そういうものなんだ…」
さつきが丘公園…その場所は、いつも海岸で星を観るときに使っていた道にあった。
「…しばらく海で星見になるかもしれない」
『海ですか?』
「あの近くに公園があっただろ?…おかめの話が間違っていないなら、あそこにいるらしいんだ」
ワカさんということは恐らく女性だと思うが、何故神社ではなくその場所に留まり続けているんだろう。
…そこはやはり、直接話を聞きに行くしかない。
『…八尋、相談事のようですよ』
「相談事?」
体を起こすと、先程神社で見かけたおかめがこちらに一礼した。
真面目なのか入れなかったのか、ベランダで立ち尽くしているように見える。
慌てて開けると、ゆっくり部屋に入った。
「さっきいた…」
『やはり視えておいででしたか。人間に関すること故、私では手出しできずお願いに参りました』
「神社の偉い護り人、みたいなものですよね?そんな立派な人にお願いされるような立場じゃ、」
『他に頼れるものがいないのです。…あなたならきっと、ワカを救ってくれるはず』
この人に感謝されているということは、余程あの神社によくした人に違いない。
…一先ず話を聞こう。
「そのワカさんっていう人は、どこにいるんですか?」
『成仏できず、いつも公園の砂場を見つめております。これを解決したのがあなた様だと、風の噂で聞きました』
そこには、《殺された被害者が探偵で、彼女の恋人が証拠を見つけて犯人確保》の文字。
「…それは、恋人さんが頑張った結果だよ。俺はただ、彼女の願いを叶えたにすぎない」
『見返りを求めないその姿勢がよろしいのでは?大抵の人間は、困ったときだけ神だの仏だのに縋り神社に来るものです。
…あなたはあの子と同じ、無欲だとお見受けしました』
「それじゃあ、ワカさんっていう人は君にとって大切な人なんだね」
おかめは頷くと、ワカさんとの話をしてくれた。
いつも歌を詠んでいたこと、独りで寂しそうに俯いていたこと、実は視える人で会う度話をしていたこと…。
おかめは哀しそうに話を続ける。
『本来であれば、私がなんとかしたい。ですが、神社の規則によりそれが叶いません。
どうか…どうかお願いします』
「分かった。絶対に、とは言えないけど約束する。必ず公園に顔を出すよ」
『ありがとうございます…!』
こんなに頭を下げられては断れない。
話が嘘とも思えない為、引き受けてみることにした。
「その公園というのは、一体どこに…」
『さつきが丘公園です。それでは、お願いいたします』
おかめは慌ただしく去っていく。
「神社付きって忙しいの?」
『割と。あの者は位が高そうでしたし、余計に忙しいのでしょうね』
「…俺、途中からため口使っちゃった」
『大丈夫です。その程度のことも寛容できない心が狭ければ、あれほどの力は与えられていないはずですから』
「そういうものなんだ…」
さつきが丘公園…その場所は、いつも海岸で星を観るときに使っていた道にあった。
「…しばらく海で星見になるかもしれない」
『海ですか?』
「あの近くに公園があっただろ?…おかめの話が間違っていないなら、あそこにいるらしいんだ」
ワカさんということは恐らく女性だと思うが、何故神社ではなくその場所に留まり続けているんだろう。
…そこはやはり、直接話を聞きに行くしかない。
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