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迷い
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夜の書店には、様々なお客様がやってくる。
たまたま見つけた人、何か目当てのものがあって来た人…そして、時折交ざっているのが人間ではない人だ。
「いらっしゃいませ」
「あの、絵本はありませんか?」
「あるにはあるけど…どういうものを探しているのかな?」
やってきたのはまだ小学生くらいの男の子。
こんな夜中なのに、一体どうしてひとりで買いにきたんだろう。
「それじゃあ、お兄さんが好きなやつで」
児童文学か、推理小説でいいということだろうか…分からない。
「読み聞かせ用のものかな?」
「はい」
「それならこっちにしようか」
可愛らしい絵が並んでいて、人が消えたりしない優しい世界…読み聞かせ用ならこれがいいだろう。
手渡そうとして、彼の腕のあたりから血が滲んでいることに気づく。
「ちょっと待っててね」
「あ、はい…」
救急箱に入っているものだけで処置できるか分からないが、何もしないよりいいはずだ。
そっと腕に触ると、やっぱり痛むのか顔をしかめた。
「ごめんね。すぐ終わらせるから…」
消毒液にガーゼ、包帯…傷は痛々しいものだったが、なんとか手当てをすませることができた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
「本、誰かと読むの?」
「妹に読んであげたいんだ。いつもなら外で遊んだりしてたんだけど、怪我をしてから秘密基地にも行けそうにないから…」
「そっか。優しいんだね。ただ、帰り道には気をつけて」
一瞬虐待の2文字が頭に浮かんだが、それなら腕だけ怪我をしているというのはおかしい。
今夜はそのまま、また次会ったときに調べてみよう。
「八尋君」
「あ、えっと…お疲れ様です、中津先輩。山岸先輩も…」
「下の名前でいいって言ったのに、八尋君は本当に律儀だね」
このふたり、いつの間に俺の背後にいたんだろう。
救急箱に使ったものの付箋を貼りつけていると、何故か声をかけられた。
「今日こそ予定がなければ、一緒にご飯行かない?」
「えっと…」
「木葉、相手が困ってる」
山岸先輩の言葉に、中津先輩ははっとしたような様子で申し訳なさそうに頭を下げた。
「やっぱり困らせちゃったんだ。ごめん…」
「大丈夫です。俺の方こそすみません」
「それじゃあ八尋君、また誘うね。柊は先に着替えてきて」
「…分かった」
誰にも言えない、視えていない世界の話。
だが、俺からすればそちらの方が居心地がいい。
左眼で外をよく視てみると、瑠璃が少し寒そうに木に留まっていた。
「ごめん、お待たせ」
『相変わらず翡翠色が目立ちますね』
「隠してるつもりだったけど、やっぱり瑠璃には分かっちゃうんだね」
『見ていればすぐ見つけられます』
ここに来たのにはきっと理由があるはずだ。
それを聞いてみないことには話が進まない。
「…それで、今日は何があったの?」
たまたま見つけた人、何か目当てのものがあって来た人…そして、時折交ざっているのが人間ではない人だ。
「いらっしゃいませ」
「あの、絵本はありませんか?」
「あるにはあるけど…どういうものを探しているのかな?」
やってきたのはまだ小学生くらいの男の子。
こんな夜中なのに、一体どうしてひとりで買いにきたんだろう。
「それじゃあ、お兄さんが好きなやつで」
児童文学か、推理小説でいいということだろうか…分からない。
「読み聞かせ用のものかな?」
「はい」
「それならこっちにしようか」
可愛らしい絵が並んでいて、人が消えたりしない優しい世界…読み聞かせ用ならこれがいいだろう。
手渡そうとして、彼の腕のあたりから血が滲んでいることに気づく。
「ちょっと待っててね」
「あ、はい…」
救急箱に入っているものだけで処置できるか分からないが、何もしないよりいいはずだ。
そっと腕に触ると、やっぱり痛むのか顔をしかめた。
「ごめんね。すぐ終わらせるから…」
消毒液にガーゼ、包帯…傷は痛々しいものだったが、なんとか手当てをすませることができた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
「本、誰かと読むの?」
「妹に読んであげたいんだ。いつもなら外で遊んだりしてたんだけど、怪我をしてから秘密基地にも行けそうにないから…」
「そっか。優しいんだね。ただ、帰り道には気をつけて」
一瞬虐待の2文字が頭に浮かんだが、それなら腕だけ怪我をしているというのはおかしい。
今夜はそのまま、また次会ったときに調べてみよう。
「八尋君」
「あ、えっと…お疲れ様です、中津先輩。山岸先輩も…」
「下の名前でいいって言ったのに、八尋君は本当に律儀だね」
このふたり、いつの間に俺の背後にいたんだろう。
救急箱に使ったものの付箋を貼りつけていると、何故か声をかけられた。
「今日こそ予定がなければ、一緒にご飯行かない?」
「えっと…」
「木葉、相手が困ってる」
山岸先輩の言葉に、中津先輩ははっとしたような様子で申し訳なさそうに頭を下げた。
「やっぱり困らせちゃったんだ。ごめん…」
「大丈夫です。俺の方こそすみません」
「それじゃあ八尋君、また誘うね。柊は先に着替えてきて」
「…分かった」
誰にも言えない、視えていない世界の話。
だが、俺からすればそちらの方が居心地がいい。
左眼で外をよく視てみると、瑠璃が少し寒そうに木に留まっていた。
「ごめん、お待たせ」
『相変わらず翡翠色が目立ちますね』
「隠してるつもりだったけど、やっぱり瑠璃には分かっちゃうんだね」
『見ていればすぐ見つけられます』
ここに来たのにはきっと理由があるはずだ。
それを聞いてみないことには話が進まない。
「…それで、今日は何があったの?」
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