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突風吹く町
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今日も睡眠はきっちり2時間、問題ない。
いつもどおりカーテンを開けると、そこにはやはり小鳥の姿があった。
『おはようございます』
「どうした?今日もいるなんて珍しいね」
窓ガラスに反射して、左眼が翡翠色に鈍く光るのが写る。
少し息を吐きながら窓に手をかけると、入ってきた冷たい風に少しだけ咳きこんでしまった。
『大丈夫ですか?』
「俺は平気だよ。それより、こんなに寒かったのに瑠璃は平気なの?」
『私のような存在は風邪というものをひきませんので平気です』
「それならよかった」
冷えてしまっている翼を少しずつタオルで拭いていると、窓の外におかしなものが見えた。
…それは間違いなく小人で、窓枠に必死で掴まっている。
「…ちょっと待ってて」
『八尋?』
どこかへ飛ばされそうになった小さな体を掴み、そのまま部屋に入れた。
「大丈夫ですか?」
『すまない。助かった』
緑色の服を着た小人は木霊と名乗った。
『人間に溶けこんで生活しているのか?随分強い力を持っているんだな…』
「えっと、俺は、その、」
『彼は人間ですよ。…一応ですが』
『そうか、人間だったのか』
「…あんまり驚かないんですね」
いつもなら、何故人間が…だとか、気味が悪い、近寄るなと言われてしまう。
それをこの人が言わないあたりから推測すると、この人はかなり偉い人なのかもしれない。…そんなことは関係ないが。
「ここまで飛ばされてきちゃったんですか?」
『まあ、そんなところだな。普段住んでる社が派手に破壊されて、住める状態じゃなくなった』
視えない人たちが悪意なくやったことなのかもしれないが、住処を壊された側からすれば心が痛むだろう。
『人間というものは野蛮ですから』
「…どんな原因で壊れたんですか?」
『どうやら石を蹴った拍子に当たってしまったらしい。だがまあ、たしかに最近の人間は野蛮かもしれないな。
…せめて一言、社に向かって謝罪の言葉を述べてくれればそれだけでよかったのに』
木霊は哀しそうな表情でそう呟いた。
この人はきっと視える人間が減ってきていることを理解している。
だからこそ、自分にではなく社に向かってと言ったのだろう。
……ん?社?
「木霊は神様なの?」
『小さな祠の、だがな。だから、そこの可愛らしい小鳥よりは力が弱まっている』
「小鳥…瑠璃のこと?」
『片翼ずつ色が違うのは力が強いからだろう?俺には、それくらいの知識しかないけどな』
そんなこと、全然知らなかった。
俺にとっての瑠璃はただの話し相手で、ちょっと変わった小鳥で…。
『そういうこと、あんまり言わないでください。私はこのままがいいんです。八尋と一緒にいるのが楽しいだけですから』
「瑠璃…」
彼女の気持ちを聞けることなんか滅多にないので、少しむず痒く感じる。
神様の体をタオルで拭いていいのか悩んでいると木霊に頭を下げられた。
「あ、頭を上げてください」
『助けてもらった身で言えることではないが、頼みがある。どうか聞いてもらえないか、ヤヒロ』
いつもどおりカーテンを開けると、そこにはやはり小鳥の姿があった。
『おはようございます』
「どうした?今日もいるなんて珍しいね」
窓ガラスに反射して、左眼が翡翠色に鈍く光るのが写る。
少し息を吐きながら窓に手をかけると、入ってきた冷たい風に少しだけ咳きこんでしまった。
『大丈夫ですか?』
「俺は平気だよ。それより、こんなに寒かったのに瑠璃は平気なの?」
『私のような存在は風邪というものをひきませんので平気です』
「それならよかった」
冷えてしまっている翼を少しずつタオルで拭いていると、窓の外におかしなものが見えた。
…それは間違いなく小人で、窓枠に必死で掴まっている。
「…ちょっと待ってて」
『八尋?』
どこかへ飛ばされそうになった小さな体を掴み、そのまま部屋に入れた。
「大丈夫ですか?」
『すまない。助かった』
緑色の服を着た小人は木霊と名乗った。
『人間に溶けこんで生活しているのか?随分強い力を持っているんだな…』
「えっと、俺は、その、」
『彼は人間ですよ。…一応ですが』
『そうか、人間だったのか』
「…あんまり驚かないんですね」
いつもなら、何故人間が…だとか、気味が悪い、近寄るなと言われてしまう。
それをこの人が言わないあたりから推測すると、この人はかなり偉い人なのかもしれない。…そんなことは関係ないが。
「ここまで飛ばされてきちゃったんですか?」
『まあ、そんなところだな。普段住んでる社が派手に破壊されて、住める状態じゃなくなった』
視えない人たちが悪意なくやったことなのかもしれないが、住処を壊された側からすれば心が痛むだろう。
『人間というものは野蛮ですから』
「…どんな原因で壊れたんですか?」
『どうやら石を蹴った拍子に当たってしまったらしい。だがまあ、たしかに最近の人間は野蛮かもしれないな。
…せめて一言、社に向かって謝罪の言葉を述べてくれればそれだけでよかったのに』
木霊は哀しそうな表情でそう呟いた。
この人はきっと視える人間が減ってきていることを理解している。
だからこそ、自分にではなく社に向かってと言ったのだろう。
……ん?社?
「木霊は神様なの?」
『小さな祠の、だがな。だから、そこの可愛らしい小鳥よりは力が弱まっている』
「小鳥…瑠璃のこと?」
『片翼ずつ色が違うのは力が強いからだろう?俺には、それくらいの知識しかないけどな』
そんなこと、全然知らなかった。
俺にとっての瑠璃はただの話し相手で、ちょっと変わった小鳥で…。
『そういうこと、あんまり言わないでください。私はこのままがいいんです。八尋と一緒にいるのが楽しいだけですから』
「瑠璃…」
彼女の気持ちを聞けることなんか滅多にないので、少しむず痒く感じる。
神様の体をタオルで拭いていいのか悩んでいると木霊に頭を下げられた。
「あ、頭を上げてください」
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