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同じ時間、同じ場所
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数日仕事終わりに様子を見ているだけだったが、彼女の様子に特に変化は見られない。
『今日も見ているだけなんですか?』
「…いや、話しかけてみるよ」
もうただ観察していていいような段階ではないことくらい、遠目から観察しているだけで分かる。
「こんばんは。今日もいらっしゃったんですね」
『あなたは、この前の…」
「この道、よく通るんです。だから、どうしたのかなって思って…」
本当に話すのが下手だと自分に自分で苦笑してしまう。
彼女はずっとここから動いていないが、一体何をしているのだろうか。
それとも、動けないの間違い…?
『イま、何時ですか?」
「深夜2時です」
『シんや!?もうそんな時間だったんですね…。今日もテがかりなしか…」
残念そうに肩を落とす彼女は気づいているだろうか。
…自分の体が今どんな状態なのか。
「探しているものはどんなものなんですか?」
『私、探偵なんです。猫さんを探してほしいって言われてて、おやつも持ってルんですけど…」
そういえば、最近事件を調査していた探偵が何者かによって殺される事件が発生したはずだ。
場所はこの近く、時間は夜明け前…もしかして、彼女なのだろうか。
『あとは、ちょっとした事件の手がかりも見つけたんです。これで少しは休む時間が作れそうです」
「…そのブレスレット、綺麗ですね」
『見る目ありますね!これは私にとって欠かせないものなんです。今の恋人がくれたものなんですけど、やっぱり大事で手放せないんです。
だから、ずっと愛してるって伝えたくて、だけどどうしてか気づいたらここに戻ってきていて…」
彼女の周りがいきなり騒がしくなってくる。
目の前の探偵を助けるにはどうすればいい?
猫を見つける?事件に巻きこまれたと伝えるべきなのか?
…彼女は先程たしかに言った。
それなら、もしかすると彼女を殺したのは…。
「すみません、もう少しだけ耐えてください」
『…?いきなり何の話ですか?」
「あなたが怒るのは当然のことで、あなたが今の状態なのも分かります。
意味が分からなくてもいいから、とにかく平常心を保ってください」
探偵は意味が分からないというように首を傾げている。
だが、すぐ後ろまで真っ黒な手が迫ってきていた。
あの手が憎しみや悲しみを意味しているなら、彼女はもうすぐ悪霊になってしまう。
「…それじゃあ、また明日もきます」
『はい。おやすみなさい」
家まで小走りで戻り、スクラップ帳をすぐに開く。
『事件の切り抜きですか?』
「うん。読んで嫌な予感がした記事をまとめておくと、こういうとき割と役に立つんだよ」
『彼女は殺されたことに気づいているのでしょうか』
「あの様子だと、多分彼女は恋人に会いたがってる。…あった」
この事件はただの殺人事件なんかじゃない。
証拠は何もない為推論でしかないが、連続殺人でないと仮説をたてられる以上調べてみる必要がある。
『犯人が分かるんですか?』
「多分。あとはこの人に協力してもらえたら心強いけど、話しかけても大丈夫かな…」
その紙面には、身近な人物の話としてある人の名前が載っていた。
『今日も見ているだけなんですか?』
「…いや、話しかけてみるよ」
もうただ観察していていいような段階ではないことくらい、遠目から観察しているだけで分かる。
「こんばんは。今日もいらっしゃったんですね」
『あなたは、この前の…」
「この道、よく通るんです。だから、どうしたのかなって思って…」
本当に話すのが下手だと自分に自分で苦笑してしまう。
彼女はずっとここから動いていないが、一体何をしているのだろうか。
それとも、動けないの間違い…?
『イま、何時ですか?」
「深夜2時です」
『シんや!?もうそんな時間だったんですね…。今日もテがかりなしか…」
残念そうに肩を落とす彼女は気づいているだろうか。
…自分の体が今どんな状態なのか。
「探しているものはどんなものなんですか?」
『私、探偵なんです。猫さんを探してほしいって言われてて、おやつも持ってルんですけど…」
そういえば、最近事件を調査していた探偵が何者かによって殺される事件が発生したはずだ。
場所はこの近く、時間は夜明け前…もしかして、彼女なのだろうか。
『あとは、ちょっとした事件の手がかりも見つけたんです。これで少しは休む時間が作れそうです」
「…そのブレスレット、綺麗ですね」
『見る目ありますね!これは私にとって欠かせないものなんです。今の恋人がくれたものなんですけど、やっぱり大事で手放せないんです。
だから、ずっと愛してるって伝えたくて、だけどどうしてか気づいたらここに戻ってきていて…」
彼女の周りがいきなり騒がしくなってくる。
目の前の探偵を助けるにはどうすればいい?
猫を見つける?事件に巻きこまれたと伝えるべきなのか?
…彼女は先程たしかに言った。
それなら、もしかすると彼女を殺したのは…。
「すみません、もう少しだけ耐えてください」
『…?いきなり何の話ですか?」
「あなたが怒るのは当然のことで、あなたが今の状態なのも分かります。
意味が分からなくてもいいから、とにかく平常心を保ってください」
探偵は意味が分からないというように首を傾げている。
だが、すぐ後ろまで真っ黒な手が迫ってきていた。
あの手が憎しみや悲しみを意味しているなら、彼女はもうすぐ悪霊になってしまう。
「…それじゃあ、また明日もきます」
『はい。おやすみなさい」
家まで小走りで戻り、スクラップ帳をすぐに開く。
『事件の切り抜きですか?』
「うん。読んで嫌な予感がした記事をまとめておくと、こういうとき割と役に立つんだよ」
『彼女は殺されたことに気づいているのでしょうか』
「あの様子だと、多分彼女は恋人に会いたがってる。…あった」
この事件はただの殺人事件なんかじゃない。
証拠は何もない為推論でしかないが、連続殺人でないと仮説をたてられる以上調べてみる必要がある。
『犯人が分かるんですか?』
「多分。あとはこの人に協力してもらえたら心強いけど、話しかけても大丈夫かな…」
その紙面には、身近な人物の話としてある人の名前が載っていた。
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