王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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青海錬 編

閑話『バーとメールと現実と』 赤城美音目線

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♪「僕、好きな子が出来たかもしれない...」
今まで自分の事を考えなかった錬の口から出た、目を疑うような言葉。
◇「...騙されてるんじゃなくて?」
錬はチームで一番人がよすぎてリーダーとして心配なのである。
♪「...とってもいい子なんだ」
家に置いている事、一緒にいると楽しいこと。
...笑顔が素敵なこと。
楽しそうに女性の話をする彼を見たのはこれがはじめてだ。
◆「なんだよ~、俺も仲間に入れろよ~」
◇「うるさい、今いいところ」
玲音は空気をよむのが昔から苦手だ。
...こんな兄だが、ムードメーカーにはなる。
◆「その子今度連れてきて!俺もその子を見て詐欺とかじゃないか判断してやるよ!」
◇「私も、その子に会いたい」
大切な相手が好きになった子だ。
...友だちに、なりたい。
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それから二、三日もたたずにバーに連れてきてくれた。
私はその子と、友だちになれた。
(いい子みたい...)
よかった、という安心と共に、錬が黒羽が襲われていたという話をしていたのを思い出し、心配になった。
そうこうしているうちに、メールがきた。
《こんばんは
きょうは カクテル ごちそうさまでした。
私は かんじが 苦手で、つたなくて ごめんなさい。
もっと  美音と 仲良くなりたい とおもいました
 これから よろしくね               黒羽》
(律儀...)
《黒羽へ
私も黒羽と仲良くなりたい。嬉しいです。
ところで一つ、聞きたいことがあります。
黒羽は、錬の事が好き?》
こんなことを聞いてしまってもよかったのだろうか。
聞いたあとで少し後悔した。
しかしすぐに返信はきた。
《美音へ
はずかしくて だれにも話せて いないけど
私は 錬が 好きです。でも、うまく気持ちを 言えません。 もっと すなおに 言えると いいんだけど どうしたらいいか 分からなくなります
錬には 本当は もっと たよってほしいけど 足が痛む 私は、役立たず だと 自分でも 思うから         黒羽》
(黒羽...)
錬はあなたの事を、愛してるよ。
って言ってあげたいと思った。
(でもそれは、錬が言わないといけないこと)
《黒羽へ
黒羽は、役立たずなんかじゃない。
私はそう思っています。
今度一緒に遊びに行こうよ。
錬たちも誘って、うるさい玲音も連れて。
遊園地に連れていく。約束ね》
《美音へ
ありがとう 嬉しいです。ゆうえんち 行ったことないけど たのしみにしてます》
(行ったことがない?)
家が厳しかったのだろうか...?
(バーも片付けて、と)
バーは副業としてやっているものだ。
本業がバレてしまえばきっと黒羽も...。
(そんなことより、準備しよう)
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新人の王間も連れてきた。
チームで連携は大切。
玲音に言われたのもあり連れてきてしまった。
そこで襲われた。
(本業がもうバレるなんて...)
◇「...公安零課」
名乗ったあと、次々にくるものを殴り飛ばしていた。
勿論、殺さない程度に。
「危ない!錬!」
ザシュ。
(...!黒羽!)
前に玲音と好きな人の定義をしたのを思い出す。
玲音は言っていた。
◆「身を呈してでも守りたいと思う存在のこと、かな?」
今それが、目の前で最悪の形で起こってしまった。
♪「おまえらああああああああああ!」
錬が一気にケリをつけた。
そのあと私は公安零課のリーダーとして一ヶ月の休みを錬に言い渡した。
(二人とも、うまくいくかな?)
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その日の夜。
《美音へ
今日は ごめんなさい。 やっぱり 私は 役立たず。
みんなの めいわくに なって しまいました。
美音の 本当の お仕事が おまわりさん だったのには ビックリしています。 今日は 守って くれて ありがとう》
(黒羽...?私を、蔑まない?)
《黒羽へ
私の事、嫌いにならなかったの?私は警察だから、嫌われるかと思った。それとあなたは、役立たずなんかじゃない。
今日は錬を守った。すごいことだよ。滅多にできないこと...。これからも、仲良くしてください》
断られたらどうしよう、とも思った。
(メール、きた)
《美音へ
私は あなたのような 友だちがいて 幸せです。
こちらこそ よろしくね》
涙が、止まらない。
いつもなら、公安零課の人間なんて、と切り捨てられてしまうから。
(なんて強い人なの...)
自分が怖い思いをしたはずなのに。
それからしばらく、『ブルームーン』という新しいカクテルの味見をしていた。 
すると、またメールがきた。
《美音へ
錬と 思いを つたえあいました。
錬も 私の事が 好きだと 言ってくれました。
うれしくて どうしたらいいかわからなくなっています》
(うまくいったのか...)
よかった、これで安心...。
錬が無茶な行動をする回数も少なくなるだろう。
(でも...)
メールには、続きがあった。
《一つ、ききたいことがあります。
錬が けがが なおってから つづきを していいか きいてきました。
キスの つづきって 何を するの?》
◇「つっ!ゲホゲホ!」
◆「おい、大丈夫か!」
◇「平気」
(この子はなんて事聞くの?)
なんて答えればいいんだろう。
出会いのバーと律儀なメールと黒羽の天然な行動炸裂の現実。
私はその間で揺れ動いていた...。
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