王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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青海 錬 続篇

第5話

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♪「ふう...。気持ちよかったね」
「うん!」
ふわり。
おしとやかに微笑んでいる黒羽を見て、錬もいつものように笑いかえした。
♪「黒羽、トランプしない?」
「トランプ...?」
♪「ブラックジャックなら、二人でも楽しくできると思うよ」
「どうやってやるの?」
錬は丁寧に説明をはじめた。
はじめのカードは二枚。もっとカードがほしいと思ったら『ヒット』、そのままで勝負する場合は『スタンド』。
手持ちは五枚までで、最終的に二十一に近い方が勝ちとなる。
エースのカードは、『一』か『十一』として計算できる。
♪「どう?覚えられそう?」
「うん!」
♪「じゃあ、ただやるだけじゃつまらないから...『負けた方が勝った方の言うことを一つ聞く』っていうのはどうかな?」
「わ、分かった...」
♪「はじめの三回は練習ね」
黒羽はぎこちない手つきで、なんとかやっている状態だった。
「えっと...スタンド!」
♪「ショウ・ダウン」
「二十...」
♪「二十一、僕の勝ち!次から本番ね」
「うん...」
♪「普通に楽しくやろう...?」
錬は黒羽の手に、そっと自らのそれを重ねた。
「そうだね」
(私、錬に勝てるかな?)
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「勝った...!」
♪「あーあ、負けちゃった。...それで、お願い事は?」
「うーん...。あとでいいから、錬が淹れたお茶が飲みたい」
♪「いいよ!」
錬がにっこりとしている。
♪「次は負けないよ?」
「うん!」
それから二回戦が終わった。
♪「僕の勝ちだね。うーん...」
錬はしばらく考えこんでいたが、黒羽の方を真っ直ぐ見て言った。
♪「黒羽」
「な、なに...?」
♪「キスしてもいい?」
「...いいよ。なんでも言うことを聞くって約束だもんね」
ふわり。
その柔らかい笑顔に、錬は少し照れくさくなる。
「ん...ふっ...」
長い間、その口づけは終わらなかった。
黒羽の身体から力が抜けたとき、ようやく唇が離れた。
「錬...」
いつもよりも色香漂う黒羽を見て、錬はそのまま自分より小さなその身体を抱きあげた。
♪「...ごめん。本当はいつもより少しだけ長くしようと思ってたのに、止められなかった」
黒羽をそのままベッドにおろす。
そのあと、黒羽に覆い被さる。
「...っ」
黒羽は顔を真っ赤にして、錬の方を見つめる。
♪「僕が側にいるってこと、忘れないでね」
「...うん」
黒羽はぎゅっと錬にしがみついた。
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