王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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茶園 渚 続篇

第5話

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数日後。
「...で、できた!」
ふわり。
▼「上手いな」
渚が黒羽の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「渚が教えてくれたお陰だよ。ありがとう」
▼「おまえがちゃんと練習したからだろ」
渚が照れくさそうにしている。
『くれは じょうず』
「ありがとう」
黒羽は白玉をそっと撫でた。
白玉は嬉しそうにすり寄ってくる。
▼「計算は...教えなくてもできそうだな」
「うん」
▼「それなら、店を開けるぞ」
「うん...!」
店を開けてすぐ、一人の子どもがやってきた。
ー「あ、あの...」
「どうしたの?」
ー「あ、え、」
どうしようかと迷っていると、渚がすっと子どもの近くにしゃがみこんだ。
▼「お母さんやお父さんからもらった紙は、ありますか?」
ー「うん!」
(渚が、いつもと違う...)
黒羽は、初めて出会ったときの事を思い出していた。
(そういえば、病院でもあの話し方だったな...)
▼「黒羽」
「は、はい!」
黒羽は渡された紙に書いてある薬を用意した。
「渚、できたよ」
▼「お待たせしました。お金はありますか?」
ー「はい、どうぞ」
▼「ありがとうございました」
ー「せんせー、またね!」
子どもは走って帰っていった。
▼「...はあ」
「渚、お疲れ様」
▼「ああ」
渚はいつもの口調に戻っていた。
「渚、どうしてさっきは...」
▼「あの話し方にすると、子どもは怯えない。それに、子どもは上から話されると怖がる。だから、目線を合わせた」
「成る程...」
黒羽は、渚が仕事をするところを見ていなかったわけではない。
だが、そんなふうに工夫しているところがあるということは、全く知らなかった。
(それだけ、漢方屋さんのお仕事も大切に思ってるんだろうな...)
▼「...おい」
「...!」
黒羽はぼうっとしてしまっていた。
「ごめんなさい!なんだっけ?」
▼「店を、少しだけ任せてもいいか?」
「うん」
渚は台所へと行ってしまった。
「私にも、できるかな?」
『くれはなら できるよ』
「ありがとう」
ふわり。
黒羽の口からは、自然と笑みがこぼれていた。
その間に来客はなく、昼食をとることにした。
▼「今日は、材料がなかったから...あまり豪華にできなかった。すまない」
目の前には、もやしと牛肉の炒め物がある。
「ううん、これで充分だよ。ありがとう」
▼「今日は流石に、買い物に行かないとな...。店は早めに閉める」
「うん、分かった」
白玉は、そんな二人をじっと見つめていた。
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