王子と内緒の人魚姫

彼目線のストーリー

どしゃぶりの雨にうたれながら (渚・第２５話、第２６話)

...くそっ！
やはり俺のそばには人を置くべきじゃなかった。
『現代の麒麟児』を倒すまでは、きっと近づけてはいけなかったんだ。
▼「...」
頭からあいつの笑顔が離れない。
(俺も随分府抜けたな)
そう心のなかで毒づきながら、俺は弾痕を探す。
▼「独りはやっぱり寂しいな」
そんなことを呟いていると、頭から雫が落ちてこなくなる。
「一人じゃないよ」
そこには、愛しい女が立っていた。
▼「おまえ...」
いつものようにふわりと笑うその姿を見て、俺は溢れそうになるものを必死で抑える。
▼「なんで、そんなに優しいんだよ...」
「渚は一人じゃない。いろんな人が渚自身を見てる。...帰ろう？風邪ひいちゃうよ？」
その一言で、俺は堪えきれなくなってしまった。
(昔はこんなに弱くなかったのにな...)
独りで生きていけばいい。
ずっとそう思って生きてきた。
でも、こうして人のぬくもりにふれてしまった今、独りで生きていく自信はない。
▼「悪い、しばらくこのまま...」
俺は黒羽を抱きしめる。
どしゃぶりの雨が、俺の心を洗い流してくれたような気がした。
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▼「おまえ、後先考えずに走ってきただろう？」
「う...」
(何やってるんだ...)
足元でもふもふとしたものが動く。
▼「ありがとな」
(まさかこいつまできているとは思わなかった)
折り重なる雲がどんどん無くなっていく。
まるで試練を乗り越えたかのように、空はあっという間に晴れていった。