王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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茶園 渚篇

第31話

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▼「おい、大丈夫か...?」
渚は心配そうな顔でいつの間にか起きた黒羽を見ている。
「う、うん。大丈夫っ...!」
稲妻がはしる度、黒羽は渚にしがみつく。
(雷ってこんなに怖いんだ...)
▼「...雷、おまえが住んでいた場所までは届かないらしいもんな」
「それも魔王から聞いたの?」
▼「ああ。あいつもはじめはビビってたよ」
抱きついてきた黒羽の頭をくしゃりと撫でる。
「魔王とは、昔からの知り合いなの?」
▼「ああ、ちょっと事情があってな...」
「そうなんだ...」
(きっと、詳しくは聞かれたくないってことだよね)
黒羽はそう思い、何も聞かなかった。
「ねえ、渚...」
▼「なんだ?」
「...明日、海に行きたい」
▼「こんな豪雨のあとは危険だ。...別の場所になら連れてってやるよ」
「本当⁉あ、でも渚のお仕事は...」
▼「俺がやっているのは寂れた漢方屋だぜ?医者だってことは周りに親しい人間しか知らないから。それに、薬の原料が足りなくなってきてるしな」
「ありがとう、でも...無理はしないでね」
▼「ああ」
「白玉もくるかな?」
▼「...ああ」
その時渚は、少しトーンを下げた声で黒羽にそっけなく返事をした。
「...?渚、私何か嫌なこと言った?」
▼「...がいい」
「え?」
▼「おまえと、二人きりがいいと言ったんだ...」
渚は耳まで紅くして、そっぽを向いてしまった。
「でも、白玉を一人にするのは可哀想だよ...」
▼「だよな、分かってる」
渚は諦めたようにため息をつく。
▼「テンションがあがって振り回されないように気をつけないとな」
「そ、そうだね...」
こうして会話している間にも、何度も稲光が近くで見えた。
黒羽は正直なところ、怖くて泣き出しそうだった。
▼「これじゃ足りねえだろ」
「わっ...」
渚は抱きしめていた黒羽ごと横になり、抱きしめる手を弛めるどころかさらに力をいれた。
「渚?」
▼「こうしてると、落ち着くんだよ」
「でもこれじゃあ...」
(私、身動きがとれない...)
▼「...怖くねえだろ?」
そう耳許で囁かれ、黒羽の強張っていた身体はふっと脱力した。
「...ありがとう、渚」
ふわり。
▼「明日は早いし、もう寝ろ」
「うん」
二人はぬくもりを感じあいながら、そのまま深い眠りに落ちていった。
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