王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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茶園 渚篇

第21話

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「~♪」
(この子守唄を歌ってあげたらよく寝てくれるんだよね...)
白玉は膝の上で寝た。
(よかった、気持ちよさそう...)
そうこうしているうちに、渚が帰ってきた。
「おかえりなさい」
ふわり。
▼「...寝たか」
「うん」
渚は私の手を引いていく。
▼「...こい」
「うん。渚、お酒飲んでたの?」
▼「いや、酒場に用があっただけで飲んではいない」
「そっか」
▼「着いたぞ」
鍵を開けたその先には、可愛らしい部屋があった。
「可愛い...」
ふわり。
▼「おまえが好きそうなものを取り揃えておいた」
アロマキャンドルに、ぬいぐるみ。
色んなものが机やベッドに並べられている。
「ありがとう、渚」
ふわり。
▼「...っ」
渚は恥ずかしいのかそっぽを向いてしまった。
「渚...?」
▼「おまえには、人を煽っているという自覚がないのか?」
「え?」
いきなりキスが落とされる。
「んっ...」
(息が詰まりそう...)
「はぁ...」
整わない呼吸を繰り返していると、優しくベッドに押し倒される。
▼「俺を煽ったこと、後悔させてやる」
意地悪な笑みを浮かべたまま、黒羽のネグリジェに触れる。
「煽るって、なあに?」
ようやく整ってきた呼吸をしながら、疑問をぶつける。
▼「...黒羽が可愛すぎて、抑えられないって事だよ」
「抑えられないって?」
▼「これから分かる。俺もこんなの初めてだから、ちゃんとできるかどうかは分からないが...怖いと思ったり嫌だと思ったらすぐに言え。...絶対にやめてやるから」
(よく分からないけれど...)
黒羽は渚の頬に手を伸ばし、
「私は渚になら、何をされてもいいよ」
▼「...優しくできねえかもしれねえ」
「...うん」
二人の『ハジメテ』はこれから始まった。
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