王子と内緒の人魚姫

茶園 渚篇

閑話『友人』白鳥 雪目線

黒羽はああ言っていたものの、恐ろしかったに違いない。
もし渚がこなければと考えると恐ろしくなる。
▼「...おい」
○「なんだ？」
振り向いた瞬間、拳がとんできた。
☆「おい、渚！」
▼「おまえ、ふざけんなよ」
その声だけで、怒っていることが伝わってきた。
▼「守るんじゃなかったのかよ！だったら家の鍵くらいかけろ。人を守るっていうのはそんなに簡単なことじゃねえんだよ...。せめて戸締まりしておけば、あの男に鉢合わせることもなかった。あいつが危険な目に遇わずに済んだんだぞ!?」
○「...すまない」
友人に言われて、自らがしたことがどれだけ不注意で危険だったかを悟った。
○「本当にすまない...」
▼「...そんなに泣くな。俺もいきなり言い過ぎた。殴って悪かったな」
渚はいつも強く、こうして守ってくれた。
俺が落ち込んでいるときには励ましてくれた。
▼「危なっかしいんだよ、おまえは。次からは気をつけろ」
○「そっちこそ、危険な仕事はやめろよ」
▼「...さあな」
渚はにこやかに笑っていた。
いつもならめんどくさいとか言うのに、黒羽を預かることには文句一つ言わなかった。
勘違いかもしれないが、二人は案外相性がいいのかもしれない。




もしかしたら、
渚の心を...黒羽なら溶かしてくれるかもしれない。
俺以外にも、心を許せる相手が出来ればいいのに...。
俺はそう願わずにはいられなかった。