王子と内緒の人魚姫

茶園 渚篇

第３話

「っ！」
▼「痛むか？」
「我慢する...」
渚は消毒しながらため息をつく。
▼「結構な重症だな。しかも顔だし...。傷には残らないが、毎日診せろ」
「うん。ありがとう」
あのあと黒羽は荷物をまとめさせられ、渚は雪に連絡した。
その後、黒羽は渚に抱きかかえられ、薬品の匂いが漂う場所へ連れてこられていた。
「ここは、渚のおうちなの？」
▼「...家兼職場だ」
「お薬屋さんなの？」
▼「ああ」
冷たく、短い答えしか返ってこないので、黒羽は不安になった。
(...やっぱり私、迷惑？)
「ごめんなさい」
▼「何故謝る？」
「私は、迷惑だから...」
▼「俺が好き勝手にやってるだけだ」
「でも、」
▼「...悪いことをしていないのに謝られると、イライラする」
その言葉が黒羽の心に突き刺さった。
「ごめんなさい、ごめんなさい...」
▼「だから謝るなって...！」
黒羽は思わず泣いてしまっていた。
▼「...そんな顔するな」
優しく涙を拭ってくれている。
(温かい手...)
▼「泣くな。俺はおまえに、そういう顔をさせたかったわけじゃない」
(声も優しい...)
「...ごめんなさい。困らせてばかりで...」
▼「気にするな。何か食べられそうか？」
「...うん」
▼「よし」
渚はそう言って笑っていた。
(かっこいい...)
黒羽は思わず魅入ってしまっていた。