王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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緑川真人 篇

第50話

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それから数日後。
「いらっしゃいませ」
黒羽はにこやかに仕事をこなしていた。
「ありがとうございました」
ふわり。
▲「黒羽、お疲れ様!」
(やっぱり、忙しくなったな...)
一日、何もなく終わったことを心から黒羽は喜んでいた。
黒羽の怪我は完治したわけではない。
腫れはひいたものの、傷を隠すために頬のところには痛々しい手当てのあとがある。
右腕は切り傷を隠すためにバンドをしている。そして、打撲傷が特に目立ってしまう足はハイソックスで隠している。
歩くのも杖がないと困難な状況だ。
しかし黒羽はちっとも苦に感じていなかった。
...真人が、隣にいるからだ。
▲「おいで、黒羽」
優しく抱きしめる真人はとても温かかった。
▲「ブーケ、喜んでくれたって遥からメールがきたよ」
「よかった...」
▲「また一緒に作ろうね」
「うん」
▲「黒羽、愛してる。これからもずっと、ずっと愛してる...」
「私もだよ...真人」
二人はそのまま、唇を重ねた。
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▼「なあ、頼むから...。あんたが誰か知らねえが、あいつらを不幸にするのは許さねえからな。もし手を出すつもりなら...俺を殺してからにしろ」
フードの女は、笑ったまま...腹立たしげに渚を...
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渚は、フードの女に怪我を負わせることはできた。
▼「くっ...」
♪「渚?話って...!おい渚!渚!」
渚は力尽きかけていた...。
▼「これで、しばらくは...大丈夫なはず、だ」
錬にも届かないような小さな声で言ったあと、サイレンの音が聞こえる。
錬が付き添いながら、死ぬなと叫んでいた。
▼「そんな簡単に死ぬかよ...」
渚は力弱く微笑んでいた。
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