王子と内緒の人魚姫

緑川真人 篇

第２４話

次の日。この日も花屋は休みにした。
▲「おはよう」
「おは...っ」
真人はいつもみたいな笑顔をしている。
しかし、黒羽は顔から火が出る思いで真人を見ていた。
▲「ご飯できたよ。...服、着せてあげる」
「いいよ、自分でできるから...」
▲「ダメ」
器用に黒羽に服を着せていく。
(真人って本当に何でもできるんだな...)
▲「今日は、黒羽の髪を結んでもいいかな？」
「え...」
突然の真人の申し出にただ驚く。
▲「嫌、かな？」
「ううん、嫌じゃないよ」
真人の顔がぱあっと明るくなった。
▲「それじゃあ色々持ってくるね！」
「うん」
(髪を結ぶ道具なのかな？)
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
▲「よし、できた」
鏡で見ると、自分ではないような自分の姿がうつしだされていた。
「わあ...。真人、器用だね」
▲「そんなことないよ。...黒羽が、綺麗だからだよ」
(...っ)
黒羽は恥ずかしさのあまり、顔をあげることができなかった。
▲「黒羽、見て」
「わあ、可愛いお花...！」
▲「この間話した、秘密の花。その花は松葉牡丹。花言葉は...『可憐』。きっと黒羽に合うと思ったんだ」
「...嬉しい」
二人の唇が重なろうとした、その時...
ピンポーン...
▲「渚がくるんだったね」
「う、うん」
二人は急いで部屋から出た。
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
▼「...ん」
「ありがとう、渚」
ふわり。
▼「今日は一段としゃれた格好してるな。...誰かと出掛けるのか？」
▲「俺とだよ」
黒羽が口を開く前に真人が答えていた。
▼「...おまえら、そういう関係だったのかよ」
▲「まだそんなにたってないけどね」
▼「甘ったるい空気は苦手だから帰る。...また診察にくるから、薬が効かなかったり症状が悪化したらすぐ言え」
「本当にありがとう、渚」
ふわり。
▼「...じゃあな」
少し恥ずかしそうに渚は帰っていった。
▲「じゃあ黒羽、出掛けよう」
「どこにいくの？」
▲「それはね...」