王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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緑川真人 篇

第10話

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?「あの」
黒羽後ろから不意に抱きしめられる。
ー「貴様、私を...」
?「...黙れ」
今まで聞いたことがないような低い声で呟く。
(でもこの声は...)
?「従業員の鋏を奪って怪我させたあげく、人の店もぐちゃぐちゃにする気ですか?傷害罪で訴えますよ?それとも、殺人未遂もおつけしましょうか?」
ー「くっ...」
?「今回のことは公にはしません。ただし、また彼女を傷つけたり、ここにきたら...その時は覚悟しろ」
また低い声が響き渡る。
ー「ひぃっ!」
そのお客は、走って逃げていった。
「あの、ありがとう...まさ」
名前を呼び終わる前に手をひかれてどこかへ連れていかれる。
(...?)
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「いっ...」
▲「ごめんね、滲みる...?」
(いつもの、優しい真人だ...)
「真人、ごめんなさい...。大切な花束が」
▲「花はまた咲くし、あのくらいだったら商品にはできないけど、部屋に飾ることはできるよ。それより...はったりだったんだけど、なんとかなってよかった」
「はったり?ってことは...」
(あの難しい用語は...)
▲「立件は難しかっただろうね。証拠不十分だったと思う。よりによってあいつ、黒羽ちゃんの顔に傷つけやがって...。痕には残らないと思うから。ごめんね、俺が目を離したから...」
「ううん、気にしないで」
ふわり。
▲「無理しなくていいんだよ」
「え...」
黒羽は震える手をそっと握られる。
▲「辛いことがあっても、怖いことがあっても、これから先、何があっても...俺を呼んで?」
「真人...ありが、とう...っ」
泣いてはいけないと思ったのに、気が緩んで涙がこぼれ落ちる。
▲「よしよし...」
頭をなでられる。
(なんだか、安心する...)
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ぐっすりと眠ってしまった黒羽を見て、真人はそっと呟いた。
▲「あの花の花言葉...きみに贈っても怒らない?」

...黒羽
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