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第32章『魔王と夜紅の決着-絶望の終わりへ-』
第239話
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男は悲鳴をあげながら頭を押さえる。
「嘘だ!こンナもノ、作り物ダ!」
「そう思いたければ思っていればいい。この鏡はあんたが噂を変えて迷惑をかけた場所にあるけど、番人は嘘をつかない」
おかげさんからいつでも会えるようにともらった鏡がこんなところで役に立つとは思わなかった。
彼に協力してほしいと話すと、いいものがあると今この瞬間を写し出してもらったのだ。
《変に力が残っててよかったね!誰かに祓ってもらえるんじゃない?》
「おまエ……」
《恨みたいのは俺の方なんだけど》
おかげさんが怒っているのは明白だった。
影の形が変わりだしたのを見て、その場に駆け寄る。
「あんまり出てこない方がいい」
《俺も恨みのひとつやふたつぶつけたいんだ。夜紅の厚意はありがたいけど、これが俺なりのけじめ》
なんとなくおかげさんが微笑んだ気がして、それ以上何も言えなくなる。
「おまえに残された道はふたつ。ここから逃げてどこかの誰かに祓われるか、今ここで私たちに倒されるかだ」
「黙レ!」
男は飛び上がり、バスケットゴールをへし折る。
…普通の人間がそんな怪力であるはずがないことにさえ、この男は気づけないのか。
折られたゴールを投げつけられたが、ミサンガから出たまばゆい光に助けられた。
「クソ、まタ…」
「わ、器物損壊…」
いつの間に現れたのか、瞬が投げられたゴールを見て引いた様子で後ろに立っている。
「旧校舎とはいえ、流石にまずいんじゃない?…僕の声、聞こえてる?」
「もウ1度話しテミろ」
「無理矢理噂にねじこまれた亡霊のひとりだよ。今時分が何してるかちゃんと分かってる?」
適当に投げられる旧校舎の道具たちを、瞬は包丁で一気に動きを止めた。
細い針は蹴散らしていたが、他の道具はできるだけ傷つけないように払い除けている。
「僕は1度消滅しかけた。それでいいと思ってた。だけど、僕の手が人を傷つけるためにあるわけじゃないって教えてくれた人がいるんだ。
だから、この人たちとの幸せを護るために戦う。君が生者だろうと容赦しないから」
「姿ヲ現せ、卑怯者!」
「ちゃんと目の前にいるよ。それから…言葉に気をつけようね」
瞬は男の前髪をわざと切った。
はらはらと落ちる自分の髪に手を当て、苛立ちを露にする。
「ふたりはもう下がれ。…これからここに小物がくる。そいつらを止めるのを手伝ってほしい」
《分かった。久しぶりに遊べるの、楽しみだな…》
「僕は先生の近くにいるね」
小物の相手はふたりに任せ、ひとまずこの場に男を留めるべくがむしゃらに攻撃する。
「追わせない。おまえの相手は私だ」
「邪魔を、すルナああア!」
飛んできた跳び箱を避け、近くに転がっていたバレーボールを投げつける。
男の邪気が濃いのか、右腕に当たったボールが溶けていく。
「ひトリじゃ何もでキナいのカ、雑魚が」
「少しでも勝率を上げるため、力を貸してもらっているだけだ。
頼れる相手がいないのと頼り方が分からないのは違う。…私はあんたみたいに自分のことを過信してない」
「雑魚ガ、雑魚ガ、ザコガ!」
激しい突きにあったものの、全て避けきり再び火炎刃を手に取る。
「そんナモの、」
──鎮魂夜炎・弔
周囲に集まっていた邪気を祓いきり、持っていた札巻きナイフを複数投げつける。
「──燃えあがれ!」
火花を散らしながら男の周りを完全に包囲した。
この炎で焼けばとどめをさせる。
そう分かっていても、その方法は私にとって正しくない。
「まタ負ケタら、褒めテもらエナい…嫌だ、俺ガ1番ダ」
「だから、この状況における勝ち負けってなんだよ。この期に及んでまだそんなことをほざいているのか」
「認メラレ、褒メラレ、見テ……」
右腕を上手く囲えていなかったのか、岩のような腕が首に伸びてくる。
「……っ、ごほ!」
「見テ、見テ、見テ……」
今の男に声が届いているのかさえ、私には分からない。
ただ分かるのは、このままだと人間としての活動が完全に停止するということだけだ。
なんとか逃れようとしてみたが、抜け出すことができない。
諦めかけたそのとき、救いの糸が伸びてきた。
「グア!」
男が苦しそうな声をあげるのと同時に岩腕がゆるくなる。
激しく咳きこみながらなんとか着地した。
「遅れて悪かった」
「嘘だ!こンナもノ、作り物ダ!」
「そう思いたければ思っていればいい。この鏡はあんたが噂を変えて迷惑をかけた場所にあるけど、番人は嘘をつかない」
おかげさんからいつでも会えるようにともらった鏡がこんなところで役に立つとは思わなかった。
彼に協力してほしいと話すと、いいものがあると今この瞬間を写し出してもらったのだ。
《変に力が残っててよかったね!誰かに祓ってもらえるんじゃない?》
「おまエ……」
《恨みたいのは俺の方なんだけど》
おかげさんが怒っているのは明白だった。
影の形が変わりだしたのを見て、その場に駆け寄る。
「あんまり出てこない方がいい」
《俺も恨みのひとつやふたつぶつけたいんだ。夜紅の厚意はありがたいけど、これが俺なりのけじめ》
なんとなくおかげさんが微笑んだ気がして、それ以上何も言えなくなる。
「おまえに残された道はふたつ。ここから逃げてどこかの誰かに祓われるか、今ここで私たちに倒されるかだ」
「黙レ!」
男は飛び上がり、バスケットゴールをへし折る。
…普通の人間がそんな怪力であるはずがないことにさえ、この男は気づけないのか。
折られたゴールを投げつけられたが、ミサンガから出たまばゆい光に助けられた。
「クソ、まタ…」
「わ、器物損壊…」
いつの間に現れたのか、瞬が投げられたゴールを見て引いた様子で後ろに立っている。
「旧校舎とはいえ、流石にまずいんじゃない?…僕の声、聞こえてる?」
「もウ1度話しテミろ」
「無理矢理噂にねじこまれた亡霊のひとりだよ。今時分が何してるかちゃんと分かってる?」
適当に投げられる旧校舎の道具たちを、瞬は包丁で一気に動きを止めた。
細い針は蹴散らしていたが、他の道具はできるだけ傷つけないように払い除けている。
「僕は1度消滅しかけた。それでいいと思ってた。だけど、僕の手が人を傷つけるためにあるわけじゃないって教えてくれた人がいるんだ。
だから、この人たちとの幸せを護るために戦う。君が生者だろうと容赦しないから」
「姿ヲ現せ、卑怯者!」
「ちゃんと目の前にいるよ。それから…言葉に気をつけようね」
瞬は男の前髪をわざと切った。
はらはらと落ちる自分の髪に手を当て、苛立ちを露にする。
「ふたりはもう下がれ。…これからここに小物がくる。そいつらを止めるのを手伝ってほしい」
《分かった。久しぶりに遊べるの、楽しみだな…》
「僕は先生の近くにいるね」
小物の相手はふたりに任せ、ひとまずこの場に男を留めるべくがむしゃらに攻撃する。
「追わせない。おまえの相手は私だ」
「邪魔を、すルナああア!」
飛んできた跳び箱を避け、近くに転がっていたバレーボールを投げつける。
男の邪気が濃いのか、右腕に当たったボールが溶けていく。
「ひトリじゃ何もでキナいのカ、雑魚が」
「少しでも勝率を上げるため、力を貸してもらっているだけだ。
頼れる相手がいないのと頼り方が分からないのは違う。…私はあんたみたいに自分のことを過信してない」
「雑魚ガ、雑魚ガ、ザコガ!」
激しい突きにあったものの、全て避けきり再び火炎刃を手に取る。
「そんナモの、」
──鎮魂夜炎・弔
周囲に集まっていた邪気を祓いきり、持っていた札巻きナイフを複数投げつける。
「──燃えあがれ!」
火花を散らしながら男の周りを完全に包囲した。
この炎で焼けばとどめをさせる。
そう分かっていても、その方法は私にとって正しくない。
「まタ負ケタら、褒めテもらエナい…嫌だ、俺ガ1番ダ」
「だから、この状況における勝ち負けってなんだよ。この期に及んでまだそんなことをほざいているのか」
「認メラレ、褒メラレ、見テ……」
右腕を上手く囲えていなかったのか、岩のような腕が首に伸びてくる。
「……っ、ごほ!」
「見テ、見テ、見テ……」
今の男に声が届いているのかさえ、私には分からない。
ただ分かるのは、このままだと人間としての活動が完全に停止するということだけだ。
なんとか逃れようとしてみたが、抜け出すことができない。
諦めかけたそのとき、救いの糸が伸びてきた。
「グア!」
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激しく咳きこみながらなんとか着地した。
「遅れて悪かった」
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