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第32章『魔王と夜紅の決着-絶望の終わりへ-』
第234話
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「お姉ちゃん、おかえり」
「ただいま。遅くなってごめん」
今日と明日だけは、どうしても邪魔されたくない用事がある。
先生に無理を言って帰らせてもらった理由がそれだ。
所々体が痛むがそうも言っていられない。
「穂乃は制服で出るのか?それとも、卒服も見てみるか?」
「…いいの?」
「私はスーツもどきで出たし、穂乃が着たいと思うものを探してみればいい」
「ありがとう!沢山見てみるね」
そのためにしっかり貯金しておいたし、金銭面で苦労させることはない。
穂乃の小学校は、卒業式の服装は普段着ほどカジュアルでないものとしか決まっていないため、様々な服装の子が現れるだろう。
できることなら、1番着たいと思っているものを着てほしい。
「お姉ちゃん、私これがいい」
「これか。…似合うな。けど、もうひとつだけ着てもらっていいか?」
「…?うん」
承諾を得て1着の服を見に行く。
すぐ戻って穂乃に薄い黄色に桜の模様が小さく入った袴を渡すと、とても驚いた顔をしていた。
「どうして…」
「見てれば分かる。本当はこれが着てみたかったんじゃないのか?」
「たしかに、いいなとは思った。思ったけど、髪が決まらないし、お姉ちゃんに、」
「負担なんかかからない。直感で着てみたいものを選んでほしい。
穂乃がちゃんと笑顔でいられるものにしてほしいんだ」
穂乃は少し考えた後、少し言いづらそうに話してくれた。
「かっこいい服を着たら、お姉ちゃんに近づける気がしたんだ。
だけど、やっぱり可愛いものを着てみたくて…この袴も着てみて決めてもいい?」
「勿論」
卒業祝いにどこか美味しい店を予約しておこうと思っていたけど、もうひとつ買いたいものが決まった。
「すみません。このシャツとこのパンツと…」
袴を着た穂乃の笑顔を少し遠目で見ながら、店員さんにある注文をした。
それから少し買い物をして、遊びに行くという穂乃と分かれる。
「…というわけで、手を貸してほしい」
「私でよければ」
《…まあ、この前迷惑をかけたし、それくらいならやってあげる》
「ありがとう」
お茶会をしていた桜良と結月に着付けの手伝いをお願いした。
断られると思ったが、ふたりが快く承諾してくれて本当にありがたい。
「あの…穂乃ちゃんにメイクをしてもいいですか?」
「ありがとう。そうしてもらえると助かる。ヘアアレンジはできるけど、メイクに疎いから困ってた」
桜良は普段からおしゃれなイメージがある。
結月も身なりにかなり気をつけているし、私が雑にやるよりいいだろう。
「卒業したら、中等部にやってくるんですよね?」
「うん。試験には無事合格したし、入学手続きも済ませた」
《…苦労しないといいけど》
「心配しなくても、母のお守りを持たせている」
私が作ったものなんかより、お母さんが作ったものの方が効果的だ。
穂乃をしっかり護ってくれる。私がやっても、あれほど強いものはできない。
《何余計なことを考えてるの?》
「余計なことなんて、」
《あんたはあんたができることをすればいいのよ》
…結月に見抜かれてしまうなんて、今の私の表情はそんなに酷いものだっただろうか。
桜良にも不安そうな顔をさせて申し訳ない。
「そうだな。…ありがとうふたりとも」
「紅茶、詩乃先輩の分も淹れますね」
桜良が笑ってくれたことにほっとしつつ、監査室に用があったのをすっかり忘れていた。
「少し監査室に行ってくる」
「……!」
《そう言わずに、もう少しゆっくりしていきなさい。あんたと話す機会なんてそんなにないんだから》
「そう言ってもらえるなら、お言葉に甘えさせてもらおうかな」
なんだか桜良がそわそわしているのが気になるが、こんなふうにお茶会をするのも楽しい。
色々話しているうちに、気づけば空が紺碧色に染まっていた。
「ふたりのおかげでいい時間が過ごせた。そろそろ行くよ」
「私にできることがあればいつでも言ってください。…今日、頼ってもらえて嬉しかったです」
《まあ、3人っていうのも悪くなかったわ》
「ありがとう」
夜はできるだけ放送室に近づかないようにしたい。
…いつあの男に攻撃されてもおかしくないから。
「ただいま。遅くなってごめん」
今日と明日だけは、どうしても邪魔されたくない用事がある。
先生に無理を言って帰らせてもらった理由がそれだ。
所々体が痛むがそうも言っていられない。
「穂乃は制服で出るのか?それとも、卒服も見てみるか?」
「…いいの?」
「私はスーツもどきで出たし、穂乃が着たいと思うものを探してみればいい」
「ありがとう!沢山見てみるね」
そのためにしっかり貯金しておいたし、金銭面で苦労させることはない。
穂乃の小学校は、卒業式の服装は普段着ほどカジュアルでないものとしか決まっていないため、様々な服装の子が現れるだろう。
できることなら、1番着たいと思っているものを着てほしい。
「お姉ちゃん、私これがいい」
「これか。…似合うな。けど、もうひとつだけ着てもらっていいか?」
「…?うん」
承諾を得て1着の服を見に行く。
すぐ戻って穂乃に薄い黄色に桜の模様が小さく入った袴を渡すと、とても驚いた顔をしていた。
「どうして…」
「見てれば分かる。本当はこれが着てみたかったんじゃないのか?」
「たしかに、いいなとは思った。思ったけど、髪が決まらないし、お姉ちゃんに、」
「負担なんかかからない。直感で着てみたいものを選んでほしい。
穂乃がちゃんと笑顔でいられるものにしてほしいんだ」
穂乃は少し考えた後、少し言いづらそうに話してくれた。
「かっこいい服を着たら、お姉ちゃんに近づける気がしたんだ。
だけど、やっぱり可愛いものを着てみたくて…この袴も着てみて決めてもいい?」
「勿論」
卒業祝いにどこか美味しい店を予約しておこうと思っていたけど、もうひとつ買いたいものが決まった。
「すみません。このシャツとこのパンツと…」
袴を着た穂乃の笑顔を少し遠目で見ながら、店員さんにある注文をした。
それから少し買い物をして、遊びに行くという穂乃と分かれる。
「…というわけで、手を貸してほしい」
「私でよければ」
《…まあ、この前迷惑をかけたし、それくらいならやってあげる》
「ありがとう」
お茶会をしていた桜良と結月に着付けの手伝いをお願いした。
断られると思ったが、ふたりが快く承諾してくれて本当にありがたい。
「あの…穂乃ちゃんにメイクをしてもいいですか?」
「ありがとう。そうしてもらえると助かる。ヘアアレンジはできるけど、メイクに疎いから困ってた」
桜良は普段からおしゃれなイメージがある。
結月も身なりにかなり気をつけているし、私が雑にやるよりいいだろう。
「卒業したら、中等部にやってくるんですよね?」
「うん。試験には無事合格したし、入学手続きも済ませた」
《…苦労しないといいけど》
「心配しなくても、母のお守りを持たせている」
私が作ったものなんかより、お母さんが作ったものの方が効果的だ。
穂乃をしっかり護ってくれる。私がやっても、あれほど強いものはできない。
《何余計なことを考えてるの?》
「余計なことなんて、」
《あんたはあんたができることをすればいいのよ》
…結月に見抜かれてしまうなんて、今の私の表情はそんなに酷いものだっただろうか。
桜良にも不安そうな顔をさせて申し訳ない。
「そうだな。…ありがとうふたりとも」
「紅茶、詩乃先輩の分も淹れますね」
桜良が笑ってくれたことにほっとしつつ、監査室に用があったのをすっかり忘れていた。
「少し監査室に行ってくる」
「……!」
《そう言わずに、もう少しゆっくりしていきなさい。あんたと話す機会なんてそんなにないんだから》
「そう言ってもらえるなら、お言葉に甘えさせてもらおうかな」
なんだか桜良がそわそわしているのが気になるが、こんなふうにお茶会をするのも楽しい。
色々話しているうちに、気づけば空が紺碧色に染まっていた。
「ふたりのおかげでいい時間が過ごせた。そろそろ行くよ」
「私にできることがあればいつでも言ってください。…今日、頼ってもらえて嬉しかったです」
《まあ、3人っていうのも悪くなかったわ》
「ありがとう」
夜はできるだけ放送室に近づかないようにしたい。
…いつあの男に攻撃されてもおかしくないから。
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