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第29章『決戦前夜』
第218話
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「陽向、後ろだ!」
「了解です!」
拳をふるい、襲いかかってくる妖たちをなんとか退ける。
札をポケットから取り出していると、目の前に青い炎が広がった。
《成程、こんな感じでいいのか》
「え、そんなもん出せるの!?」
《手品を戦いに使いたくはなかったけど、これしか方法を知らないんだ。加勢させてもらうよ》
怪盗は少し楽しそうに青い炎をその辺り一帯に巻きはじめた。
だからといって相手を殺そうとは考えていないように見える。
やはりまだ噂に毒されきっていないということだろうか。
《なんとか追い払えてよかった》
「ありがとう。すごく助かったよ。陽向も…いつもより豪快だったな」
「体めちゃくちゃ軽いし、霊力引き上げられてるっぽいし最高です」
《霊力というのは、第六感のことかい?》
「まあ、そんな感じ。一応加護とかかけられたりする力で…説明が難しいなこれ」
もう少し打ち解けたら話してもいいと思うが、これだけは伝えておこう。
「おまえが出られないことと関係してる。そして、それは悪意を持った人物によって撒かれた種だ」
《どういう意味だい?》
「今のおまえの状態を半怪異という。怪異というのは…」
事情を一通り説明し、今流れている噂についてもかいつまんで話した。
《すごいね。君たちの知り合いにそういう人がいるの?》
「まあ、半怪異は多いかもな。他にも色々いるけど、生粋の怪異っていうのはなかなかいないんだ。
俺たちもあんまり遭遇したことないけど、これだけ月が綺麗な夜なら現れるかも」
《それはフラグかな?》
「いやいや、俺は怪異が来るかなんて分からな…」
そこまでで言葉が止まったのは、ここにいないはずの存在が現れたからだ。
「先輩、あれ…」
「私たちで倒したはずの猛獣だ」
人間の姿をした人喰いが出るらしい…なんていう話だったが、随分前に倒したはずだ。
いくら満月が近いからといって、あんなに成長した姿で現れるのはおかしい。
《ぼ、ぼぼ…》
「どもってるだけってわけじゃないですよね?」
嫌な予感がした。
その猛獣は大きな体で陽向に襲いかかる。
それ以外には興味がないのか、こちらを見ようともしていない。
《もしかしてあれは、よく都市伝説に登場するものかな?大きさもそれくらいだし、頭についているのは帽子じゃないかい?》
「そうだ。ぼぼぼという言葉と、狙われている男性…そして、八尺ほどの背丈」
八尺様の噂と融合されたのであれば辻褄が合う。
陽向がお気に入りなのか、執拗に追いかけ回しはじめた。
「この校舎って四隅にお地蔵様がいましたよね!?あれですよね!?」
「落ち着け。今から札を出す」
複数の札を陽向の周りに並べ、いつもより大声で叫ぶ。
「──爆ぜろ!」
陽向の周りを炎で囲むと、八尺様もどきはきょろきょろしながら消えていった。
「陽向はそこにいてくれ。インカムを持っているなら誰かと話していろ。いいな?」
「けど、それじゃあ先輩は…」
正直今の時点でもうすでにふらふらだ。
目眩を感じつつ、校門近くへ足を向ける。
「地蔵が倒されていたら戻してくる。それまで待っててくれ。炎の外から誰かに話しかけられても反応するな」
「了解です…すみません、俺が動かなくちゃいけないのに」
「仕方ない。相手から見ておまえが好みだったんだろう」
念の為先生たちにもメールで知らせ、少しずつその場を離れる。
《ひとりで行かなくてもいいんじゃないか?》
「え?」
《校内なら手伝おう。紳士は周囲の人々を見捨てない。恩はしっかり返す》
本来であれば、噂に呑まれつつあるであろう人に苦労をかけたくない。
だが、そんな事を言っていられるほど余裕がないことは自分でよく分かっている。
「それじゃあ頼む。あいつは猪突猛進なところがあるから、ころころ狙いを変えることはないはずだ」
《分かった。では急ごう》
「気をつけてください」
陽向を燃やしてしまわないように炎を調節して、今度こそ校門へ向かう。
…あの男の狙いが読めないところに一抹の不安を抱えたまま。
「了解です!」
拳をふるい、襲いかかってくる妖たちをなんとか退ける。
札をポケットから取り出していると、目の前に青い炎が広がった。
《成程、こんな感じでいいのか》
「え、そんなもん出せるの!?」
《手品を戦いに使いたくはなかったけど、これしか方法を知らないんだ。加勢させてもらうよ》
怪盗は少し楽しそうに青い炎をその辺り一帯に巻きはじめた。
だからといって相手を殺そうとは考えていないように見える。
やはりまだ噂に毒されきっていないということだろうか。
《なんとか追い払えてよかった》
「ありがとう。すごく助かったよ。陽向も…いつもより豪快だったな」
「体めちゃくちゃ軽いし、霊力引き上げられてるっぽいし最高です」
《霊力というのは、第六感のことかい?》
「まあ、そんな感じ。一応加護とかかけられたりする力で…説明が難しいなこれ」
もう少し打ち解けたら話してもいいと思うが、これだけは伝えておこう。
「おまえが出られないことと関係してる。そして、それは悪意を持った人物によって撒かれた種だ」
《どういう意味だい?》
「今のおまえの状態を半怪異という。怪異というのは…」
事情を一通り説明し、今流れている噂についてもかいつまんで話した。
《すごいね。君たちの知り合いにそういう人がいるの?》
「まあ、半怪異は多いかもな。他にも色々いるけど、生粋の怪異っていうのはなかなかいないんだ。
俺たちもあんまり遭遇したことないけど、これだけ月が綺麗な夜なら現れるかも」
《それはフラグかな?》
「いやいや、俺は怪異が来るかなんて分からな…」
そこまでで言葉が止まったのは、ここにいないはずの存在が現れたからだ。
「先輩、あれ…」
「私たちで倒したはずの猛獣だ」
人間の姿をした人喰いが出るらしい…なんていう話だったが、随分前に倒したはずだ。
いくら満月が近いからといって、あんなに成長した姿で現れるのはおかしい。
《ぼ、ぼぼ…》
「どもってるだけってわけじゃないですよね?」
嫌な予感がした。
その猛獣は大きな体で陽向に襲いかかる。
それ以外には興味がないのか、こちらを見ようともしていない。
《もしかしてあれは、よく都市伝説に登場するものかな?大きさもそれくらいだし、頭についているのは帽子じゃないかい?》
「そうだ。ぼぼぼという言葉と、狙われている男性…そして、八尺ほどの背丈」
八尺様の噂と融合されたのであれば辻褄が合う。
陽向がお気に入りなのか、執拗に追いかけ回しはじめた。
「この校舎って四隅にお地蔵様がいましたよね!?あれですよね!?」
「落ち着け。今から札を出す」
複数の札を陽向の周りに並べ、いつもより大声で叫ぶ。
「──爆ぜろ!」
陽向の周りを炎で囲むと、八尺様もどきはきょろきょろしながら消えていった。
「陽向はそこにいてくれ。インカムを持っているなら誰かと話していろ。いいな?」
「けど、それじゃあ先輩は…」
正直今の時点でもうすでにふらふらだ。
目眩を感じつつ、校門近くへ足を向ける。
「地蔵が倒されていたら戻してくる。それまで待っててくれ。炎の外から誰かに話しかけられても反応するな」
「了解です…すみません、俺が動かなくちゃいけないのに」
「仕方ない。相手から見ておまえが好みだったんだろう」
念の為先生たちにもメールで知らせ、少しずつその場を離れる。
《ひとりで行かなくてもいいんじゃないか?》
「え?」
《校内なら手伝おう。紳士は周囲の人々を見捨てない。恩はしっかり返す》
本来であれば、噂に呑まれつつあるであろう人に苦労をかけたくない。
だが、そんな事を言っていられるほど余裕がないことは自分でよく分かっている。
「それじゃあ頼む。あいつは猪突猛進なところがあるから、ころころ狙いを変えることはないはずだ」
《分かった。では急ごう》
「気をつけてください」
陽向を燃やしてしまわないように炎を調節して、今度こそ校門へ向かう。
…あの男の狙いが読めないところに一抹の不安を抱えたまま。
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