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第28章『再び訪れる悪夢』
第213話
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軽食を摂ってゼリー飲料を飲んでいると、突然月明かりがかき消された。
《ぐあ!》
「…昨日ぶりだな」
生粋の怪異だというなら、あの男に強引にでも噂を変えさせなければならない。
私たちが適度に流したくらいで動くならここまでの事態にはなっていないだろう。
「やっぱり倒すしかないのか」
《ヴア!》
紅をさし、そのままの体勢で札を投げつける。
全てを燃やし尽くしてしまわないように気をつけながら、できるだけ私に引きつけて駆け出した。
そのまま戦えば確実に校舎に被害が出てしまうだろう。
なんとか体育館裏まで走りきり、相手ものこぎりを振り回しながら追いかけてきた。
《エア、グウ…》
「何を言ってるのかさっぱり分からない。熱かったって怒ってるのか?」
《ぐおおお!》
勢いよく振り下ろされたのこぎりを避け、相手の足めがけてナイフを投げつける。
そしてそのまま、いつものようにぼそっと呟いた。
「──燃えあがれ」
のこぎりだけを燃やせればどうにかできるかもしれない…なんて考えている私は甘いだろうか。
宙を舞い、体を回転させながら強い力で斬りこんでいく。
相手の体を吹き飛ばすことはできなくても、このままのこぎりを切り刻めればどうにかできるかもしれない。
《ア、アア…》
「ごめん。大切なものなのかもしれないけど、それを壊さないといけないんだ」
でかぶつは徐々に姿を変え、大きな獅子のようなものになっていく。
やはりのこぎりに力が集中しているようだ。
砕ききれるか分からないが、矢を放つすきがない以上このまま攻撃を続けるしかない。
「先輩!」
「陽向、なんで来た…」
「あれをやっちゃえばいいんですね、ぶっ壊します!」
陽向は私の問いかけには答えず、そのまま巨大のこぎりに拳をお見舞いする。
ヒビが大きくなったものの、やはり一気に砕くのは難しそうだ。
「すみません。やっぱ先輩だけにやらせるなんて嫌で来ちゃいました」
「まったく…。それなら、そいつをひきつけておいてくれ。食い殺されない程度にな」
「了解です。…ほら、ライオン!俺が相手してやる!」
獅子は狙いを陽向に定め、のこぎりをくわえたまま突進していく。
着地して体勢を整えたところで弓を構え、札をくくりつけた矢を放つ。
「──舞い爆ぜろ」
ぱちぱちと火花を散らしながら、残りののこぎりの破片を燃やし尽くす。
獅子を押さえていた陽向は呆然とその光景を見つめていた。
「先輩、いつからこんなことができるようになってたんですか?」
「普段は使うと一撃で倒れるけど、今夜は半月だからな。…まあ、下弦の月ならもっと早く強い技が使えたんだけど」
飛んできた別の何かに火炎刃を投げつけながら淡々と話すと、陽向が苦笑しながら別方向へ拳をくりだす。
「半月だと活動しやすいんですかね?術者も力が弱まるから…」
「そうだな。まあ、それは術者にとっても同じなんだが」
陽向が1度も死なずに戦いを終え安堵する。
だが、そこに脅威が迫っていることくらい分かっていた。
「これで穂乃も安心して試験に臨めるだろう」
「特待狙いなんでしたっけ?楽しみですね」
「中等部の特待は高等部とはちょっと違うけどな」
「中学は授業料なんてほぼないですもんね…。けど、食堂を安く使えたり部活動でかかる費用が免除になるのは魅力的です。
俺は準特待でどっちも使わなかったけど、完全無償を目指すなら特待狙いがおすすめです」
「詳しいんだな。…ここにいてくれ」
「どうしたんですか、いきなり──」
投げつけられた槍をナイフだけで受け止める。
相手は自分の周囲に怪異が集まっていることにさえ気づかず、私に襲いかかってきた。
「なンデこの俺ガ、おまエごトキに…」
「もう諦めてくれないか」
「俺が最強ナンダ。だっテ、あいツハ、」
話が通じないのか、固まったままぶつぶつ何か言っている。
槍がやんだので言葉を待ち続けていたが、全く会話にならない。
「おまエが、あいツを…そうだ、義政、義政ハ…」
【俺があの子たちに会いに行ったのが間違いだったのか】
…やめろ。
「可哀想なこトヲしタな」
やめてくれ。
「おまエガ、義政ヲ殺シタくせに」
その言葉に、気づいたときには火炎刃を振り下ろしていた。
《ぐあ!》
「…昨日ぶりだな」
生粋の怪異だというなら、あの男に強引にでも噂を変えさせなければならない。
私たちが適度に流したくらいで動くならここまでの事態にはなっていないだろう。
「やっぱり倒すしかないのか」
《ヴア!》
紅をさし、そのままの体勢で札を投げつける。
全てを燃やし尽くしてしまわないように気をつけながら、できるだけ私に引きつけて駆け出した。
そのまま戦えば確実に校舎に被害が出てしまうだろう。
なんとか体育館裏まで走りきり、相手ものこぎりを振り回しながら追いかけてきた。
《エア、グウ…》
「何を言ってるのかさっぱり分からない。熱かったって怒ってるのか?」
《ぐおおお!》
勢いよく振り下ろされたのこぎりを避け、相手の足めがけてナイフを投げつける。
そしてそのまま、いつものようにぼそっと呟いた。
「──燃えあがれ」
のこぎりだけを燃やせればどうにかできるかもしれない…なんて考えている私は甘いだろうか。
宙を舞い、体を回転させながら強い力で斬りこんでいく。
相手の体を吹き飛ばすことはできなくても、このままのこぎりを切り刻めればどうにかできるかもしれない。
《ア、アア…》
「ごめん。大切なものなのかもしれないけど、それを壊さないといけないんだ」
でかぶつは徐々に姿を変え、大きな獅子のようなものになっていく。
やはりのこぎりに力が集中しているようだ。
砕ききれるか分からないが、矢を放つすきがない以上このまま攻撃を続けるしかない。
「先輩!」
「陽向、なんで来た…」
「あれをやっちゃえばいいんですね、ぶっ壊します!」
陽向は私の問いかけには答えず、そのまま巨大のこぎりに拳をお見舞いする。
ヒビが大きくなったものの、やはり一気に砕くのは難しそうだ。
「すみません。やっぱ先輩だけにやらせるなんて嫌で来ちゃいました」
「まったく…。それなら、そいつをひきつけておいてくれ。食い殺されない程度にな」
「了解です。…ほら、ライオン!俺が相手してやる!」
獅子は狙いを陽向に定め、のこぎりをくわえたまま突進していく。
着地して体勢を整えたところで弓を構え、札をくくりつけた矢を放つ。
「──舞い爆ぜろ」
ぱちぱちと火花を散らしながら、残りののこぎりの破片を燃やし尽くす。
獅子を押さえていた陽向は呆然とその光景を見つめていた。
「先輩、いつからこんなことができるようになってたんですか?」
「普段は使うと一撃で倒れるけど、今夜は半月だからな。…まあ、下弦の月ならもっと早く強い技が使えたんだけど」
飛んできた別の何かに火炎刃を投げつけながら淡々と話すと、陽向が苦笑しながら別方向へ拳をくりだす。
「半月だと活動しやすいんですかね?術者も力が弱まるから…」
「そうだな。まあ、それは術者にとっても同じなんだが」
陽向が1度も死なずに戦いを終え安堵する。
だが、そこに脅威が迫っていることくらい分かっていた。
「これで穂乃も安心して試験に臨めるだろう」
「特待狙いなんでしたっけ?楽しみですね」
「中等部の特待は高等部とはちょっと違うけどな」
「中学は授業料なんてほぼないですもんね…。けど、食堂を安く使えたり部活動でかかる費用が免除になるのは魅力的です。
俺は準特待でどっちも使わなかったけど、完全無償を目指すなら特待狙いがおすすめです」
「詳しいんだな。…ここにいてくれ」
「どうしたんですか、いきなり──」
投げつけられた槍をナイフだけで受け止める。
相手は自分の周囲に怪異が集まっていることにさえ気づかず、私に襲いかかってきた。
「なンデこの俺ガ、おまエごトキに…」
「もう諦めてくれないか」
「俺が最強ナンダ。だっテ、あいツハ、」
話が通じないのか、固まったままぶつぶつ何か言っている。
槍がやんだので言葉を待ち続けていたが、全く会話にならない。
「おまエが、あいツを…そうだ、義政、義政ハ…」
【俺があの子たちに会いに行ったのが間違いだったのか】
…やめろ。
「可哀想なこトヲしタな」
やめてくれ。
「おまエガ、義政ヲ殺シタくせに」
その言葉に、気づいたときには火炎刃を振り下ろしていた。
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