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第28章『再び訪れる悪夢』
第207話
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「今夜やることは決まったな」
丁度半月が近づいてきていて、私が1番実力を発揮できる時期だ。
「血塗られた方だろうな」
『ですね。あのジャック・オ・ランタンは俺たちが完璧に倒したので、復活させることはできないと思います』
「あのときもあの男が絡んでいたが、今度は別の噂を巻きこんでまでやろうとしているのか」
予想以上に動きが早いのは、何か事情があるのだろうか。
いまひとつあの男の真意を汲みとれないでいる。
『どのみち、夜までは待機ということですね』
「そういうことになるかな。桜良はできるだけ力を使わないように。陽向はできるだけ桜良の側を離れるな」
「詩乃ちゃんはどうするの?」
瞬の問いかけに素直に答える。
「あの男の狙いは私だ。隠れていたらこの場所が壊されてしまうかもしれない」
「ひとりで行っちゃうの…?」
「今回は私が単独で動いた方がいい。ふたりには結月を護ってほしいんだ。またおかしな噂を流さないとも限らないから」
「おまえはどうするんだ?」
先生からの質問にも迷わずはっきり告げた。
「あの男とジャック・オ・ランタンを体育館まで引きつける。上手くいったらドアを閉めてほしい」
『ひとりで戦う気なんですか!?』
「まあ、一応そういうことになるな。けど、私が本気で攻撃したらみんなごと吹き飛ばしてしまうだろうから」
『どういうことですか?』
「もうすぐ半月なんだ。上弦の月とはいえ、無条件で力が引き出される。あの男はそれを知らないんだ」
穂乃と義政さんにだけは見られたことがあるが、他の人たちには話したことしかない。
どれだけの威力か説明しようにも表現が難しく断念した。
『…詩乃先輩がピンチになったと判断したら、そのときは扉を開けます』
「分かった。その方向でいこう」
先生たちから向けられる視線には不安が入り混じっていて、どう言葉を発すればいいのか分からない。
だからただ曖昧に笑ってみせた。
「バイトに行ってくる。猫カフェ、そろそろ混みだすんだ」
「気をつけて行け」
「ありがとう」
一旦校外で脳内を整理する。
あの男と鉢合わせたら、なんてことを考えずにはいられなかった。
「お疲れ様でした」
「折原さん、今ちょっといい?」
で紹介されたのは、新しく入ったばかりだという少女。
年は私より少ししたくらいだろうか。おどおどした様子でぺこりと頭を下げる。
「八坂さんは声が出なくて…。慣れるまで折原さんにもサポートをお願いしたいの。いいかな?」
「勿論です。…よろしく、八坂」
やんわり手を握られ、小動物みたいだと感じた。
声が出ない相手というのは会話を我慢しやすい。
桜良を見てきたからよく分かる。
今日は顔合わせだけということだったので、一先ず学校まで早足で向かう。
「おまたせ」
「詩乃ちゃん、早かったね。猫さんがお菓子持ってきてくれたよ」
「結月が?」
沢山のお菓子が敷きつめられている箱からマドレーヌを取り出し、一口食べてみる。
「…美味しい。穂乃が喜びそうな味だ」
「穂乃ちゃんって甘いものが好きなの?」
「昔からショートケーキとかミルクチョコが好きなんだ。パンケーキには蜂蜜を大量にかけるし」
「そうなんだ…」
他愛ない会話を楽しんでいると、陽向が焦った様子で監査室に入ってきた。
「どうした?」
「なんか別棟にいました!めちゃくちゃ追いかけられて…最悪です」
「どういう奴だった?」
「よく分からないんです。なんかでかぶつで、人間とか死霊って感じじゃありませんでした」
マドレーヌを一気に頬張り、紅をさして立ちあがる。
「早速お出ましってわけか。それじゃあいってくる」
「気をつけてね」
「ありがとう。陽向は一応武器を用意しておいてくれ」
「了解です」
別棟まで走ると、巨大な何かが迫ってきている。
校舎を破壊するつもりはないらしく、真っ直ぐこちらに向かってきた。
伸びてきた触手のようなものを、札でぐるぐる巻きにしたナイフで斬り裂く。
《ぐ、おお…》
「そのままついてこい。おまえの狙いは私だろう」
丁度半月が近づいてきていて、私が1番実力を発揮できる時期だ。
「血塗られた方だろうな」
『ですね。あのジャック・オ・ランタンは俺たちが完璧に倒したので、復活させることはできないと思います』
「あのときもあの男が絡んでいたが、今度は別の噂を巻きこんでまでやろうとしているのか」
予想以上に動きが早いのは、何か事情があるのだろうか。
いまひとつあの男の真意を汲みとれないでいる。
『どのみち、夜までは待機ということですね』
「そういうことになるかな。桜良はできるだけ力を使わないように。陽向はできるだけ桜良の側を離れるな」
「詩乃ちゃんはどうするの?」
瞬の問いかけに素直に答える。
「あの男の狙いは私だ。隠れていたらこの場所が壊されてしまうかもしれない」
「ひとりで行っちゃうの…?」
「今回は私が単独で動いた方がいい。ふたりには結月を護ってほしいんだ。またおかしな噂を流さないとも限らないから」
「おまえはどうするんだ?」
先生からの質問にも迷わずはっきり告げた。
「あの男とジャック・オ・ランタンを体育館まで引きつける。上手くいったらドアを閉めてほしい」
『ひとりで戦う気なんですか!?』
「まあ、一応そういうことになるな。けど、私が本気で攻撃したらみんなごと吹き飛ばしてしまうだろうから」
『どういうことですか?』
「もうすぐ半月なんだ。上弦の月とはいえ、無条件で力が引き出される。あの男はそれを知らないんだ」
穂乃と義政さんにだけは見られたことがあるが、他の人たちには話したことしかない。
どれだけの威力か説明しようにも表現が難しく断念した。
『…詩乃先輩がピンチになったと判断したら、そのときは扉を開けます』
「分かった。その方向でいこう」
先生たちから向けられる視線には不安が入り混じっていて、どう言葉を発すればいいのか分からない。
だからただ曖昧に笑ってみせた。
「バイトに行ってくる。猫カフェ、そろそろ混みだすんだ」
「気をつけて行け」
「ありがとう」
一旦校外で脳内を整理する。
あの男と鉢合わせたら、なんてことを考えずにはいられなかった。
「お疲れ様でした」
「折原さん、今ちょっといい?」
で紹介されたのは、新しく入ったばかりだという少女。
年は私より少ししたくらいだろうか。おどおどした様子でぺこりと頭を下げる。
「八坂さんは声が出なくて…。慣れるまで折原さんにもサポートをお願いしたいの。いいかな?」
「勿論です。…よろしく、八坂」
やんわり手を握られ、小動物みたいだと感じた。
声が出ない相手というのは会話を我慢しやすい。
桜良を見てきたからよく分かる。
今日は顔合わせだけということだったので、一先ず学校まで早足で向かう。
「おまたせ」
「詩乃ちゃん、早かったね。猫さんがお菓子持ってきてくれたよ」
「結月が?」
沢山のお菓子が敷きつめられている箱からマドレーヌを取り出し、一口食べてみる。
「…美味しい。穂乃が喜びそうな味だ」
「穂乃ちゃんって甘いものが好きなの?」
「昔からショートケーキとかミルクチョコが好きなんだ。パンケーキには蜂蜜を大量にかけるし」
「そうなんだ…」
他愛ない会話を楽しんでいると、陽向が焦った様子で監査室に入ってきた。
「どうした?」
「なんか別棟にいました!めちゃくちゃ追いかけられて…最悪です」
「どういう奴だった?」
「よく分からないんです。なんかでかぶつで、人間とか死霊って感じじゃありませんでした」
マドレーヌを一気に頬張り、紅をさして立ちあがる。
「早速お出ましってわけか。それじゃあいってくる」
「気をつけてね」
「ありがとう。陽向は一応武器を用意しておいてくれ」
「了解です」
別棟まで走ると、巨大な何かが迫ってきている。
校舎を破壊するつもりはないらしく、真っ直ぐこちらに向かってきた。
伸びてきた触手のようなものを、札でぐるぐる巻きにしたナイフで斬り裂く。
《ぐ、おお…》
「そのままついてこい。おまえの狙いは私だろう」
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