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第27章『おかげさん-異界への階段・肆-』
番外篇『こめられた想い』
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「ミサンガの作り方教えて」
ちびに突然そんなことを言われて驚いたものの、手に結んでいるものを見て納得した。
「先生に作るのか?」
「それもある…かな。あとこれ、送ってほしいな」
「相変わらずすごいな。まあ、楽しんでやってるならいいけど」
ちびは時々、計算の仕事をこなしている。
本当ならバイトしていい年じゃないんだろうけど、どうしても自分でお金を稼ぎたいとのことだった。
サイトへの登録名は『流星』に設定して、連絡先だけ俺や先輩に設定してる状態だけど、サイト内では最高評価を維持している。
勿論お金は全額ちびに渡していて、買い物を頼まれることも少なくない。
「『流星さん、いつもありがとうございます』ってこの前もメッセージきてた」
「そっか…誰かのためになれたならよかった」
死んだ人間の名前は出せないから、本名が不要で電話連絡しなくていいサイトに登録するしかない。
金額は下がってしまうものの、ちびが楽しみながら満足して仕事できているならそれが1番だ。
「次はどうすればいい?」
「こっちの端っこを交差させて、次はこっちを動かして…」
「こう?」
「そうそう、そのままやっていけば完成だ」
ちびは覚えるのが早い。
手先も器用らしく、初めてとは思えないほど綺麗に仕上がっている。
「俺より全然上手いじゃん…」
「そうかな?」
「俺が初めてやったとき、糸が絡まってやり直した」
「そうなんだ…。ひな君にも苦手なことってあるんだね」
「俺は超人じゃないからな」
死なないという意味では超人かもしれないけど、あとは人並みにできるというだけだ。
…いや、やっぱりちょっと違うのか。
「で、ここからはこめたい想いがあるときの作り方な」
「違うの?」
「たとえば、お守り代わりになるやつ。多分ちびにも霊力はあるはずだから、体力がごりごりに削られない程度にやるって約束するなら教えてもいい」
「知りたい」
ちびが食い気味で尋ねてくる様子に笑いながら説明する。
「まず、指先まであったまるのを感じながら…こう」
「ちょっとぴりぴりするけどできた」
「慣れたらもっと簡単にできるようになる」
ぼんやり白い光が伝わっているのが視えて、センスあるんだなと感心してしまう。
「ここにある糸で何人分できるかな?」
「今のを合わせて7人分くらいになるんじゃない?」
「分かった。ありがとう。ここからはひとりでやる」
「俺は放送室にいるから、なんか分からないこととかあったら来て」
「うん」
ちびが何を考えているかは分からないけど、少しでも体調がよくなるように願いながら作ったミサンガを持って桜良のところへ行く。
「桜良、もしよかったらこれ…」
「……」
寝ていると思っていたら、真っ直ぐ俺を見て固まった。
手に持っていた何かをすぐ側の机に置いて、少しずつこっちに近づいてくる。
「……」
「えっと、桜良?」
「…【瞬の用事はもういいの?】」
「うん。一応終わったよ。あとこれあげる」
「【いいの?】」
「桜良に持っていてほしくて作ったものだから、持っていてくれないと困る」
「【ありがとう】」
「どういたしまして」
こういう平和な時間を静かに楽しみたい。
俺と桜良は一緒にお茶してまったりしてるし、ちびはちびで楽しんでるだろうし、先生は教員の仕事をしつつ息抜きに本を読むと話していた。
……先輩はどうしているだろう。
またひとりで思いつめていないとは限らない。
周りへの頼り方が分からないと言っていた先輩は、いつもひとりで戦っている気がする。
「【陽向が思いつめたら詩乃先輩が悲しむ】」
「それもそっか。じゃあ…桜良、もしまたあの男が現れたら、倒すの手伝ってくれる?」
どういう状態なのかいまひとつ分かってないけど、先輩にとってよくないものだ。
桜良にも干渉してくるかもしれない。
肩をぽんぽんとたたかれて、いつもどおりに笑ってみせる。
冷めた紅茶を飲みながら、これからどうやって戦っていくか考えこんでしまった。
ちびに突然そんなことを言われて驚いたものの、手に結んでいるものを見て納得した。
「先生に作るのか?」
「それもある…かな。あとこれ、送ってほしいな」
「相変わらずすごいな。まあ、楽しんでやってるならいいけど」
ちびは時々、計算の仕事をこなしている。
本当ならバイトしていい年じゃないんだろうけど、どうしても自分でお金を稼ぎたいとのことだった。
サイトへの登録名は『流星』に設定して、連絡先だけ俺や先輩に設定してる状態だけど、サイト内では最高評価を維持している。
勿論お金は全額ちびに渡していて、買い物を頼まれることも少なくない。
「『流星さん、いつもありがとうございます』ってこの前もメッセージきてた」
「そっか…誰かのためになれたならよかった」
死んだ人間の名前は出せないから、本名が不要で電話連絡しなくていいサイトに登録するしかない。
金額は下がってしまうものの、ちびが楽しみながら満足して仕事できているならそれが1番だ。
「次はどうすればいい?」
「こっちの端っこを交差させて、次はこっちを動かして…」
「こう?」
「そうそう、そのままやっていけば完成だ」
ちびは覚えるのが早い。
手先も器用らしく、初めてとは思えないほど綺麗に仕上がっている。
「俺より全然上手いじゃん…」
「そうかな?」
「俺が初めてやったとき、糸が絡まってやり直した」
「そうなんだ…。ひな君にも苦手なことってあるんだね」
「俺は超人じゃないからな」
死なないという意味では超人かもしれないけど、あとは人並みにできるというだけだ。
…いや、やっぱりちょっと違うのか。
「で、ここからはこめたい想いがあるときの作り方な」
「違うの?」
「たとえば、お守り代わりになるやつ。多分ちびにも霊力はあるはずだから、体力がごりごりに削られない程度にやるって約束するなら教えてもいい」
「知りたい」
ちびが食い気味で尋ねてくる様子に笑いながら説明する。
「まず、指先まであったまるのを感じながら…こう」
「ちょっとぴりぴりするけどできた」
「慣れたらもっと簡単にできるようになる」
ぼんやり白い光が伝わっているのが視えて、センスあるんだなと感心してしまう。
「ここにある糸で何人分できるかな?」
「今のを合わせて7人分くらいになるんじゃない?」
「分かった。ありがとう。ここからはひとりでやる」
「俺は放送室にいるから、なんか分からないこととかあったら来て」
「うん」
ちびが何を考えているかは分からないけど、少しでも体調がよくなるように願いながら作ったミサンガを持って桜良のところへ行く。
「桜良、もしよかったらこれ…」
「……」
寝ていると思っていたら、真っ直ぐ俺を見て固まった。
手に持っていた何かをすぐ側の机に置いて、少しずつこっちに近づいてくる。
「……」
「えっと、桜良?」
「…【瞬の用事はもういいの?】」
「うん。一応終わったよ。あとこれあげる」
「【いいの?】」
「桜良に持っていてほしくて作ったものだから、持っていてくれないと困る」
「【ありがとう】」
「どういたしまして」
こういう平和な時間を静かに楽しみたい。
俺と桜良は一緒にお茶してまったりしてるし、ちびはちびで楽しんでるだろうし、先生は教員の仕事をしつつ息抜きに本を読むと話していた。
……先輩はどうしているだろう。
またひとりで思いつめていないとは限らない。
周りへの頼り方が分からないと言っていた先輩は、いつもひとりで戦っている気がする。
「【陽向が思いつめたら詩乃先輩が悲しむ】」
「それもそっか。じゃあ…桜良、もしまたあの男が現れたら、倒すの手伝ってくれる?」
どういう状態なのかいまひとつ分かってないけど、先輩にとってよくないものだ。
桜良にも干渉してくるかもしれない。
肩をぽんぽんとたたかれて、いつもどおりに笑ってみせる。
冷めた紅茶を飲みながら、これからどうやって戦っていくか考えこんでしまった。
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