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第26章『災厄の再来予報』
第190話
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「おはよう」
教会の一件から数日。
瞬はすっかり元気になったようでこちらに駆け寄ってきた。
「おはよう詩乃ちゃん」
「元気になったみたいでよかった」
陽向のお見舞い作戦のおかげかもしれない。
「先生に、もう無理しないようにって言われちゃった。心配かけたな…」
「場所との相性が悪かったな。外からも入れる場所だと校内にカウントされないって初めて知った。
私たちもフォローできなくてごめん」
今が楽しいと笑っていた瞬を危険な目に遭わせたくなかった。
「詩乃ちゃんのせいじゃないよ。僕も分かってなかったし、先生も焦ったって言ってた」
地縛霊の制約についてまだ知らないことが多い。
もっと詳しくなれば、瞬が体調を崩すのを未然に防げるだろうか。
監査室に入った直後、結月が静かに告げた。
「あそこの封印、誰かが意図的に脆くしているみたいよ」
「…あれが解き放たれたら終わる」
先生の声が深刻さを物語っていて、何かよくないことがおきているのはすぐ分かった。
「どうしたんだ?」
「折原…」
「…旧校舎にも中庭があるのは知ってるでしょ?あそこに古井戸があって、そのなかには結構力の強い悪霊が封印されているの。
だけど最近、あの中から怪異の一部が溢れてきてる。…それも、自然と剥がれたわけじゃないわ」
確定だ。そんなことを意図的にやるのは視えない人源とあの男だけだろう。
「授業時間に見に行ってみるよ」
「詩乃ちゃん…」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。相手が襲ってこない限り勝手に戦ったりしないから」
心配してくれる人がいるんだから、できるだけ突っ走らないようにしないといけない。
それでも、放課後田で待っていたらどうなるか分からないので一先ず見てみたいと思った。
「…で、どうしてついてくるんだ?」
「俺も見ておきたいからです」
後で合流した陽向にも事情を説明すると、自分も見に行くと言って聞かなかったのだ。
古井戸は全部で3つ確認できたが、ひとつ明らかに気配がおかしいものがある。
「近づいただけで死ぬってことはないだろうけど、もうすでにやばそうな雰囲気ですね」
「そうだな」
いつぞやの生贄を差し出していた事件を思い出して心が痛む。
力の強い悪霊ということは、それだけ強い憎しみを持っているということだ。
誰に傷つけられたのかまでは分からない。
ただ、きっと私たちが知らない過去が隠されている。
「封印されている悪霊について、もう少し調べてみる必要がありそうだな」
「ですね。…桜良、聞こえる?ちょっと調べてほしいことがあるんだ」
『なに……』
「朝特有の調子の悪さがなくなってからでいいから、この学園の古井戸に封印されているであろう悪霊について知りたい」
『……やってみる』
通信が切れるのは早かったが、なんだか桜良の様子がいつもと違うと感じた。
「桜良、具合悪いのか?」
「朝は大体そうなんです。低血圧で起きるのも難しい日があって…」
「それは心配だな」
「俺としては心配です」
陽向はそう言った後、そういえばと別の話題をふってきた。
「そういえば、この前はありがとうございました。先輩に話を聞いてもらってから楽になりました」
「礼を言われるようなことはしてないよ」
私が苦しい思いをしたとき周りに救われた。
だから私も誰かに手を差し伸べられる人でありたいと思っただけだ。
「…あ」
「どうし──」
陽向が真っ青な顔をするものだからそちらを見てみると、封印に使われたであろう札が1枚、また1枚と剥がれていく。
「このペースで剥がれたら次の満月を越えたあたりには出てくるな」
「いやいや、そんなこと呑気に言ってる場合じゃないでしょ…!
これ、すぐにどうにかしないと本当に危ないってことですよね?」
「それはまあ、そうだな」
もし蓋にびっしり札がはられていたなら、もう半分は剥がれている計算になる。
何も知らない生者を巻きこむわけにはいかない。
どうにか解決したいが、封印されたきっかけや伝承を知らないと手を出せるものではなさそうだ。
「俺は伝承を調べます」
「私は過去の事件について調べてみるよ」
陽向は放送室へ向かい、私は監査室へ走る。
役に立つかは分からないが、とにかく今は少しでも情報が欲しかった。
教会の一件から数日。
瞬はすっかり元気になったようでこちらに駆け寄ってきた。
「おはよう詩乃ちゃん」
「元気になったみたいでよかった」
陽向のお見舞い作戦のおかげかもしれない。
「先生に、もう無理しないようにって言われちゃった。心配かけたな…」
「場所との相性が悪かったな。外からも入れる場所だと校内にカウントされないって初めて知った。
私たちもフォローできなくてごめん」
今が楽しいと笑っていた瞬を危険な目に遭わせたくなかった。
「詩乃ちゃんのせいじゃないよ。僕も分かってなかったし、先生も焦ったって言ってた」
地縛霊の制約についてまだ知らないことが多い。
もっと詳しくなれば、瞬が体調を崩すのを未然に防げるだろうか。
監査室に入った直後、結月が静かに告げた。
「あそこの封印、誰かが意図的に脆くしているみたいよ」
「…あれが解き放たれたら終わる」
先生の声が深刻さを物語っていて、何かよくないことがおきているのはすぐ分かった。
「どうしたんだ?」
「折原…」
「…旧校舎にも中庭があるのは知ってるでしょ?あそこに古井戸があって、そのなかには結構力の強い悪霊が封印されているの。
だけど最近、あの中から怪異の一部が溢れてきてる。…それも、自然と剥がれたわけじゃないわ」
確定だ。そんなことを意図的にやるのは視えない人源とあの男だけだろう。
「授業時間に見に行ってみるよ」
「詩乃ちゃん…」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。相手が襲ってこない限り勝手に戦ったりしないから」
心配してくれる人がいるんだから、できるだけ突っ走らないようにしないといけない。
それでも、放課後田で待っていたらどうなるか分からないので一先ず見てみたいと思った。
「…で、どうしてついてくるんだ?」
「俺も見ておきたいからです」
後で合流した陽向にも事情を説明すると、自分も見に行くと言って聞かなかったのだ。
古井戸は全部で3つ確認できたが、ひとつ明らかに気配がおかしいものがある。
「近づいただけで死ぬってことはないだろうけど、もうすでにやばそうな雰囲気ですね」
「そうだな」
いつぞやの生贄を差し出していた事件を思い出して心が痛む。
力の強い悪霊ということは、それだけ強い憎しみを持っているということだ。
誰に傷つけられたのかまでは分からない。
ただ、きっと私たちが知らない過去が隠されている。
「封印されている悪霊について、もう少し調べてみる必要がありそうだな」
「ですね。…桜良、聞こえる?ちょっと調べてほしいことがあるんだ」
『なに……』
「朝特有の調子の悪さがなくなってからでいいから、この学園の古井戸に封印されているであろう悪霊について知りたい」
『……やってみる』
通信が切れるのは早かったが、なんだか桜良の様子がいつもと違うと感じた。
「桜良、具合悪いのか?」
「朝は大体そうなんです。低血圧で起きるのも難しい日があって…」
「それは心配だな」
「俺としては心配です」
陽向はそう言った後、そういえばと別の話題をふってきた。
「そういえば、この前はありがとうございました。先輩に話を聞いてもらってから楽になりました」
「礼を言われるようなことはしてないよ」
私が苦しい思いをしたとき周りに救われた。
だから私も誰かに手を差し伸べられる人でありたいと思っただけだ。
「…あ」
「どうし──」
陽向が真っ青な顔をするものだからそちらを見てみると、封印に使われたであろう札が1枚、また1枚と剥がれていく。
「このペースで剥がれたら次の満月を越えたあたりには出てくるな」
「いやいや、そんなこと呑気に言ってる場合じゃないでしょ…!
これ、すぐにどうにかしないと本当に危ないってことですよね?」
「それはまあ、そうだな」
もし蓋にびっしり札がはられていたなら、もう半分は剥がれている計算になる。
何も知らない生者を巻きこむわけにはいかない。
どうにか解決したいが、封印されたきっかけや伝承を知らないと手を出せるものではなさそうだ。
「俺は伝承を調べます」
「私は過去の事件について調べてみるよ」
陽向は放送室へ向かい、私は監査室へ走る。
役に立つかは分からないが、とにかく今は少しでも情報が欲しかった。
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