夜紅の憲兵姫

黒蝶

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第24章『サバトにて』

第180話

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「なあ、知ってるか?生きているものに共通してるであろう、最大の弱点」
《し、知るか!》
陽向はにっこり笑うと、迫ってきた守衛に拳をお見舞いする。
「顎だよ。脳震盪をおこす」
「じゃあ、その馬たちも…」
「俺、命令されて従わざるを得なかった奴を殺すほど馬鹿じゃありませんから。
…というか、まだ殺したことありませんし予定もありません」
売り物搬入口から次々現れる敵に、陽向は微笑み拳を構える。
「ちゃんと戦える奴が来てくれないと、君たちのリーダーから潰すぞ」
その口調はいつものような相手を茶化すものではなく、本気の殺意がこめられていた。
《弱イもので強クナルことの、何ガ悪い?》
「あ、それこの人の前で言っちゃうんだ」
陽向の言葉を全部聞かず、火炎刃で周りにいた3人ほどを蹴散らす。
そのうちひとりは体が崩れ、そのまま消えていった。
《ば、バケモノ…!》
腰を抜かす者、震えている者、逃げようとする者…糸がかかっていない奴だけを狙って思いきり火炎刃をふる。
自分より弱ければ狩っていいというなら、自分たちが狩られることも覚悟しているはずだ。
「…集団でひとりによってたかっていじめるような雑魚より、捕まってた人たちの方がずっと強い。
化け物?そうかもな。けど、私からすればあんな残酷なことをできるあんたたちの方が化け物だ」
ひたすら燃やし続けていると、後ろからやんわり押さえられる。
「そこまでにしましょう。…先輩、かなり疲れてるでしょ?」
「いいんだ。こいつらに何かしないと気がすまない」
『誰かに痛みを与えるために腕を磨いたわけじゃないだろ』
インカムから聞こえた声にはっとする。
そうだ、私はただ護りたくて鍛錬してきたんだ。
誰かを傷つけて見下す為じゃない。
「…大切なことを忘れるところだった。けど、どうしてもこいつらを許せない」
人を顎で使う奴等が嫌いだった。
傷つけられる人たちを救える力が欲しかったんだ。
「…今の私は化け物だな」
薙ぎ払った相手を見ながら思わずそんな一言が零れる。
陽向を困らせたくはなかったが、近くでただ俯いた姿を見て安心した。
『【みるみる体が動かなくなります。…そして最後は地下に姿を現すのです。…ゾンビのように】』
インカムから桜良の声が聞こえてくると同時に、必死で足を止めようとしている妖が現れた。
「俺、先輩ほど強くないし、いつも死んでばっかりだし…。けど、先輩のことかっこいいとしか思ったことありませんよ」
「陽向…ありがとう」
「目の前の奴等、とっとと片づけちゃいましょ!」
「そうだな」
拳を構えなおした陽向に頼もしさを感じながら、もう1度火炎刃を持ちあげる。
恐らくこれで失敗したら次はない。
鎖を焼きながら峰打ちになるよう相手に押しつけていく。
《くそ、あの計画書どおりにシタノニ》
「計画書?」
《裏切ッタナ、フード!》
そう叫んだ妖は爆弾を起動したようだ。
「みんな、すぐ脱出しろ。いいな?」
『詩乃ちゃんはどうするの?』
「ちゃんと出るよ。盗まれたであろうものを取ってからな」
ショーケースごと運べる出入り口はない。
できるだけ傷がつかないように気をつけながら、中に入っていたもの全てを取り出す。
柘榴の石がついた髪飾りだけは別にしておいた。
「先輩、行きましょう!」
「そうだな。これなら転がってる奴等も死なないだろうし」
バリケードのようなものを作り、すぐにその場を離れる。
ショーケースに入っていた1枚の紙を見て胸騒ぎがした。
【君なら辿り着いてくれると思ったよ】
「…先輩?どうしました?」
地上について陽向に心配されたが、なんでもないと誤魔化した。
まだ確証はないが、次があるというならかなりまずい。
「全員いるな?怪我してないか?」
「僕は平気」
「私もなんともない」
「俺も死ななかったです!珍しい…」
「……こほ」
力を使って声が出ないのか、桜良は悲しそうに咳きこんだ。
私も立っているのがやっとの状態ではあるが、なんとかみんな無事だった。
「これを落とし物のところに届けて、残りのサバト楽しんじゃいましょう!」
「ひな君に賛成!僕、何か食べたいな…」
「先にやることやってからな」
一旦手分けすることになり、集合場所は神社になった。
近くにいた妖に声をかけ、髪飾りを見せる。
「探しものはこれで合ってたかな?」
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