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第24章『サバトにて』
第178話
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出してほしいと叫ぶ声、目が虚ろになった妖、ガスマスクのようなものをつけた15人の見張り…。
「あれ全部倒さないと奥まで入れそうにないな」
「僕がやる」
瞬はそう話すと、目で追えない速さで相手の懐に入りこんだ。
その一瞬でざっと半分ほどの妖が倒れている。
「先生が教えたんですか?」
「俺は少しアドバイスしただけだ。基礎は元から会得してた」
私たちが知らない間に練習していたのかもしれない。
或いは、出会う前に何かあったのか…答えは本人のみぞ知る。
「ちび、おまえ…」
「変だった?」
「いつからそんな隠し玉みたいな技使えるんだよ…すごすぎだろ」
褒められると思っていなかったのか、瞬は驚いているように見える。
ただ、そんな和やかな会話を続けられる場所ではない。
残り半分は瞬が攻撃していたのを見ていないからそのまま素通りしていくと思っていたのに、何故かこちらに向かって真っ直ぐ歩いてきた。
「…仕方ない、今から騒ぎをおこす」
手から溢れるほどの量の札を持ち、左右に思いきりふる。
次々と相手が倒れていく間に鍵を探しだした。
「陽向!」
鍵を投げつけ、前から来た奴等にひたすら火炎刃を振り続ける。
《助けて…》
「大丈夫、出してやるから」
《商品、商ヒン、ショウヒン…》
鎖を焼き払えればいいのだが、思ったより数が多い。
後ろに視線をやると、檻の鍵はほとんど開けられていた。
「…潮時か」
私が後ろに1歩下がると同時に、背後から無数のワイヤーが伸びてくる。
相手は動きを封じられて手足をじたばたさせていたが、鎖に向かって火炎刃を投げつけた。
意識がなくなった大量の妖の体はその場にゆっくり落ちていき、一先ず制圧したのだと安堵する。
「みんな、怪我はないか?」
「先輩こそ大丈夫なんですか?」
「今は上手くコントロールできてるみたいだ。…夏合宿の成果かな」
先生から強い力を使うときのコントロールの仕方を教えてもらい、ほとんど毎日欠かさずメニューに追加していた。
このまま上手くいけば、黒幕のところに辿り着けるかもしれない。
《あ、あの…》
「どうした?出口は向こうに、」
《お願いします。私の髪飾りを探して…》
「髪飾りって、この中にある?」
恐らく今日の闇オークションで販売される予定だった商品が表になっていて、ご丁寧に写真付きで載せられている。
《この柘榴の石がついたものです。大切な人からもらったもので、どうしても取り返したくて…》
頭を下げる妖の着物は汚れていて、それだけ必死に探したことがよく分かる。
「分かった。外に大きな木があるだろ?そこの下で待っててくれ。この場所に留まるのは危険だ」
《ありがとうございます…!そうだ、役に立つかは分からないのですが、あの人たちが落としたものです》
着物の妖の他にも捕まっていた沢山の妖が、自分も拾ったものがあると鍵や内部の地図、番号が書かれた紙を渡してくれた。
「ありがとう。これだけあれば残りの人たちも救えそうだ」
「みんな気をつけてね。お祭り楽しんで」
わらわらと脱出していく妖たちを見送り、奥の部屋へと進む。
「…詩乃先輩」
「どうした?」
「さっきもらった地図に、×印がついていて…それがこの先の部屋です」
一気に踏みこめばいいと思っていたが、黒幕も私たちが来たことに気づいているはずだ。
火炎刃を構え、ゆっくり扉を開ける。
足を踏み入れた直後、一瞬にして床が消えた。
「先輩!」
陽向の手を掴もうとしたが間に合わない。
「連絡はしてくれ」
先生のその言葉と同時に、服にワイヤーのようなものが絡まるのを確認する。
落ちた先は真っ暗で、身動きをとるのは難しそうだ。
『折原、何が見える?』
「真っ暗で何も分からない。ただ、近くから泣き声が聞こえる。ちょっと近づいてみるよ」
声がする方に進むと、そこには角が生えた小さな子どもがいた。
「…見つけた」
「あれ全部倒さないと奥まで入れそうにないな」
「僕がやる」
瞬はそう話すと、目で追えない速さで相手の懐に入りこんだ。
その一瞬でざっと半分ほどの妖が倒れている。
「先生が教えたんですか?」
「俺は少しアドバイスしただけだ。基礎は元から会得してた」
私たちが知らない間に練習していたのかもしれない。
或いは、出会う前に何かあったのか…答えは本人のみぞ知る。
「ちび、おまえ…」
「変だった?」
「いつからそんな隠し玉みたいな技使えるんだよ…すごすぎだろ」
褒められると思っていなかったのか、瞬は驚いているように見える。
ただ、そんな和やかな会話を続けられる場所ではない。
残り半分は瞬が攻撃していたのを見ていないからそのまま素通りしていくと思っていたのに、何故かこちらに向かって真っ直ぐ歩いてきた。
「…仕方ない、今から騒ぎをおこす」
手から溢れるほどの量の札を持ち、左右に思いきりふる。
次々と相手が倒れていく間に鍵を探しだした。
「陽向!」
鍵を投げつけ、前から来た奴等にひたすら火炎刃を振り続ける。
《助けて…》
「大丈夫、出してやるから」
《商品、商ヒン、ショウヒン…》
鎖を焼き払えればいいのだが、思ったより数が多い。
後ろに視線をやると、檻の鍵はほとんど開けられていた。
「…潮時か」
私が後ろに1歩下がると同時に、背後から無数のワイヤーが伸びてくる。
相手は動きを封じられて手足をじたばたさせていたが、鎖に向かって火炎刃を投げつけた。
意識がなくなった大量の妖の体はその場にゆっくり落ちていき、一先ず制圧したのだと安堵する。
「みんな、怪我はないか?」
「先輩こそ大丈夫なんですか?」
「今は上手くコントロールできてるみたいだ。…夏合宿の成果かな」
先生から強い力を使うときのコントロールの仕方を教えてもらい、ほとんど毎日欠かさずメニューに追加していた。
このまま上手くいけば、黒幕のところに辿り着けるかもしれない。
《あ、あの…》
「どうした?出口は向こうに、」
《お願いします。私の髪飾りを探して…》
「髪飾りって、この中にある?」
恐らく今日の闇オークションで販売される予定だった商品が表になっていて、ご丁寧に写真付きで載せられている。
《この柘榴の石がついたものです。大切な人からもらったもので、どうしても取り返したくて…》
頭を下げる妖の着物は汚れていて、それだけ必死に探したことがよく分かる。
「分かった。外に大きな木があるだろ?そこの下で待っててくれ。この場所に留まるのは危険だ」
《ありがとうございます…!そうだ、役に立つかは分からないのですが、あの人たちが落としたものです》
着物の妖の他にも捕まっていた沢山の妖が、自分も拾ったものがあると鍵や内部の地図、番号が書かれた紙を渡してくれた。
「ありがとう。これだけあれば残りの人たちも救えそうだ」
「みんな気をつけてね。お祭り楽しんで」
わらわらと脱出していく妖たちを見送り、奥の部屋へと進む。
「…詩乃先輩」
「どうした?」
「さっきもらった地図に、×印がついていて…それがこの先の部屋です」
一気に踏みこめばいいと思っていたが、黒幕も私たちが来たことに気づいているはずだ。
火炎刃を構え、ゆっくり扉を開ける。
足を踏み入れた直後、一瞬にして床が消えた。
「先輩!」
陽向の手を掴もうとしたが間に合わない。
「連絡はしてくれ」
先生のその言葉と同時に、服にワイヤーのようなものが絡まるのを確認する。
落ちた先は真っ暗で、身動きをとるのは難しそうだ。
『折原、何が見える?』
「真っ暗で何も分からない。ただ、近くから泣き声が聞こえる。ちょっと近づいてみるよ」
声がする方に進むと、そこには角が生えた小さな子どもがいた。
「…見つけた」
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