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第24章『サバトにて』
第177話
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少し歩いたところで、先程の集団が固まっているのを見つけた。
「あいつらですか?」
「誰かひとりでいい。捕まえて話が聞ければどうにかなるかもしれないとは思うんだが…」
鎖で操られているなら、本人たちの意思がまだ残っているのか分からない。
どうすべきか迷っていると、桜良がひとりで水を飲んでいる相手に近づいた。
「こんばんは」
《え、あ…君、可愛イネ》
「……【私はオークションの関係者で、商品小屋まで行きたいのだけれど、道に迷ってしまったの。よければ案内してもらえない?】」
耳がごわごわする感覚があっあものの、相手は素直に案内しはじめた。
《コッチ》
相手から聞き出したいとき、桜良のローレライの能力は最強だ。
《こノ階段ヲ降りレバすグダヨ》
「ありがとう」
桜良はお礼を言いながら複雑そうにしていた。
「ありがとう桜良。あの人たちは誰かに操られてるんだ。助け出そう」
「操られてる?どういうこと?」
「瞬たちには鎖が視えなかったのか?」
少し混乱していると、先生が苦笑しながら説明してくれた。
「折原には視えていたが、あいつらは鎖で繋がれてる。半暴走状態なのはそれから逃れようともがいたからだ」
「つまり、リスクがあるところだけ人に押しつけて美味しい蜜を吸ってる奴がいるってことですか?」
「そうなるな」
陽向は拳を握りしめ、ぱっと顔をあげた。
「頑張りましょう。真犯人が誰かなんて知らないけど、自分たちが何をさせられているか気づかないのは辛いです」
「ひな君、男前…」
「別に普通だろ。それで、正面突破でいきます?」
「中の構造が分からないのに入るのは危険だ」
そう言いつつ、もう時間がないかもしれないと考えると正面突破しかないのかもしれない。
すると、先生が階段下の扉を凝視しはじめた。
「…成程、まだこんな場所が残っていたとはな」
「先生、知ってるの?」
「今でこそサバトは人身売買禁止だが、人間や力が弱い妖を捕まえて売っていた集団がいた。
てっきり滅ぼされたと思っていたが、そうじゃなかったらしいな」
「滅ぼすって、誰がやったんですか?」
桜良の質問に先生ははっきり答えた。
「そういうのを取り締まってる奴等がいる。残党も残らず潰したと聞いていたが、再集結した可能性が高い」
「警察みたいな人たちでも見逃しちゃうくらい強いってこと?」
瞬の言うとおりだ。それだけ力が強いなら、妖たちを操って人攫いをさせることも可能だろう。
「とにかく、今はどうにかして内部の地図を手に入れるしかない」
「いや、大丈夫だ。紙と書くものさえあれば」
「私のスケッチブックでよければ使ってください」
先生は私のボールペンや陽向のシャーペンを使って図面を書いていく。
「何年か前に見た場所と同じようになっているなら、恐らくこれでいいはずだ」
「先生、ずっと覚えてたの?」
「うっかり入ったからな。…よく覚えてる」
どうやら内部は3ヶ所に分かれているらしく、最下層がオークション会場になっているようだった。
「客を装うなら衣装調達した方がいいか…」
「…いや。その必要はない」
そんなことをしていられるほど時間は残されていない。
それなら、一気に制圧した方が早いだろう。
「何か策があるのか?」
「服の調達は多分ここでできるし、しないまま一気に突破しないと時間がないかもしれない。
客としてやってきた妖たちに一気に来られたら私たちでも手の施しようがなくなる」
「つまり、客たちが集まってくるまでに取引を止めないといけないんですね」
「そうなるな」
まさかこんなハードモードになるとは思っていなかったがしかたない。
悪党は時間を選んではくれないのだから。
「…そろそろ入るか。みんな、準備はいいか?」
「はい!」
「それじゃあ、開けるぞ」
地獄の底へダイブするような気分になりながら重い扉を開ける。
その中は思っていたとおり生き地獄が広がっていた。
「あいつらですか?」
「誰かひとりでいい。捕まえて話が聞ければどうにかなるかもしれないとは思うんだが…」
鎖で操られているなら、本人たちの意思がまだ残っているのか分からない。
どうすべきか迷っていると、桜良がひとりで水を飲んでいる相手に近づいた。
「こんばんは」
《え、あ…君、可愛イネ》
「……【私はオークションの関係者で、商品小屋まで行きたいのだけれど、道に迷ってしまったの。よければ案内してもらえない?】」
耳がごわごわする感覚があっあものの、相手は素直に案内しはじめた。
《コッチ》
相手から聞き出したいとき、桜良のローレライの能力は最強だ。
《こノ階段ヲ降りレバすグダヨ》
「ありがとう」
桜良はお礼を言いながら複雑そうにしていた。
「ありがとう桜良。あの人たちは誰かに操られてるんだ。助け出そう」
「操られてる?どういうこと?」
「瞬たちには鎖が視えなかったのか?」
少し混乱していると、先生が苦笑しながら説明してくれた。
「折原には視えていたが、あいつらは鎖で繋がれてる。半暴走状態なのはそれから逃れようともがいたからだ」
「つまり、リスクがあるところだけ人に押しつけて美味しい蜜を吸ってる奴がいるってことですか?」
「そうなるな」
陽向は拳を握りしめ、ぱっと顔をあげた。
「頑張りましょう。真犯人が誰かなんて知らないけど、自分たちが何をさせられているか気づかないのは辛いです」
「ひな君、男前…」
「別に普通だろ。それで、正面突破でいきます?」
「中の構造が分からないのに入るのは危険だ」
そう言いつつ、もう時間がないかもしれないと考えると正面突破しかないのかもしれない。
すると、先生が階段下の扉を凝視しはじめた。
「…成程、まだこんな場所が残っていたとはな」
「先生、知ってるの?」
「今でこそサバトは人身売買禁止だが、人間や力が弱い妖を捕まえて売っていた集団がいた。
てっきり滅ぼされたと思っていたが、そうじゃなかったらしいな」
「滅ぼすって、誰がやったんですか?」
桜良の質問に先生ははっきり答えた。
「そういうのを取り締まってる奴等がいる。残党も残らず潰したと聞いていたが、再集結した可能性が高い」
「警察みたいな人たちでも見逃しちゃうくらい強いってこと?」
瞬の言うとおりだ。それだけ力が強いなら、妖たちを操って人攫いをさせることも可能だろう。
「とにかく、今はどうにかして内部の地図を手に入れるしかない」
「いや、大丈夫だ。紙と書くものさえあれば」
「私のスケッチブックでよければ使ってください」
先生は私のボールペンや陽向のシャーペンを使って図面を書いていく。
「何年か前に見た場所と同じようになっているなら、恐らくこれでいいはずだ」
「先生、ずっと覚えてたの?」
「うっかり入ったからな。…よく覚えてる」
どうやら内部は3ヶ所に分かれているらしく、最下層がオークション会場になっているようだった。
「客を装うなら衣装調達した方がいいか…」
「…いや。その必要はない」
そんなことをしていられるほど時間は残されていない。
それなら、一気に制圧した方が早いだろう。
「何か策があるのか?」
「服の調達は多分ここでできるし、しないまま一気に突破しないと時間がないかもしれない。
客としてやってきた妖たちに一気に来られたら私たちでも手の施しようがなくなる」
「つまり、客たちが集まってくるまでに取引を止めないといけないんですね」
「そうなるな」
まさかこんなハードモードになるとは思っていなかったがしかたない。
悪党は時間を選んではくれないのだから。
「…そろそろ入るか。みんな、準備はいいか?」
「はい!」
「それじゃあ、開けるぞ」
地獄の底へダイブするような気分になりながら重い扉を開ける。
その中は思っていたとおり生き地獄が広がっていた。
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