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第22章『呪いより恐ろしいもの』
第157話
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「詩乃ちゃん、おはよう」
ゆっくり体を起こすと、先生と瞬、陽向が座っていた。
なんだか不思議な組み合わせに若干戸惑いつつ、意識がはっきりしてくる。
「おはよう。どれくらい寝てた?」
「多分2時間くらい?」
思ったより疲れていたのかぐっすりだったらしい。
スマホを確認すると、穂乃から連絡が入っていた。
『今日のお弁当は自分で作ったから大丈夫だよ。気をつけてね』
「…忘れてた」
帰れそうにないと直感していたので、弁当の準備ができないかもしれないとメモを残しておいたのだ。
また穂乃に寂しい思いをさせてしまった。
「先輩?何かありましたか?」
「ああ…ごめん。ただ、家から出てそのまま学校に来たことになったなって思っただけ」
「それならいいですけど…あ、先輩。テストまた1位だったって本当ですか?」
「そうらしいな」
あまり興味が持てず見に行ってすらなかった。
順位が落ちていないなら、入学前のテストのようなものがあっても問題ないだろう。
手を抜くつもりはないし、なんとか新設される専攻に入ってやる。
「桜良が1位で陽向が2位だったのは確認した。ふたりは良いライバルなんだな」
「桜良には敵わないですよ…」
予鈴が鳴って陽向が慌てて出ていったところで、なんとか持ち帰った紅日虹を取り出す。
「それ、何に使うの?」
「口紅の原料になる石なんだ。これから形を整えていくんだけど…見てみるか?」
わくわくした様子の瞬を遠ざけるようなことはできなくて、削り出して形にするところならいいだろうと提案してみる。
「見たい!」
「決まりだな。先生がホームルームに行ってる間、私の相手をしてくれ」
「詩乃ちゃんは行かないの?」
「今日はホームルームがないんだ」
3年生…特に特進クラスは専攻がばらばらだったりもう試験間近だったりと集まれることが少ない。
持ってきていた小道具一式を使い、少しずつ削りだしていく。
「あとは型に入れれば完成だ」
「そうやって作るんだね。初めて知った…」
さっきから少し瞬の表情が曇って見えるのは気のせいだろうか。
…いや。きっとこの小さな違和感を逃してはいけない。
「瞬、何かあったのか?」
「どうしてそう思うの?」
「いつもより元気がないから。おせっかいかもしれないけど、話せそうなことなら教えてほしい」
瞬は迷っているようだったが、やがて少しずつ話しはじめた。
「時々、ニナっていうぬいぐるみを持ってる子が来てるって話をしたでしょ?…その子がバイトしているカフェで問題がおきてるらしいんだ。
ただ、話を盗み聞きした限りだと普通のカフェじゃなさそうなんだよね…」
「普通じゃない?」
「うん。お客さんに幸運を運ぶはずなのに、とか、選ばれたお客さんがどうのって言ってたよ」
思い当たる噂がひとつだけある。
まだ確定ではないが、新しい噂が広がったにしては早い。
南雲実雪について至急調べる必要がありそうだ。
「教えてくれてありがとう。多分どの噂に関係するかは分かった」
「本当?」
「うん。けど、問題はどうやったら辿り着けるかだ」
噂そのものは人々の心を癒やすカフェがあるらしいという素晴らしいものだ。
ただし、特殊な結界のようなものがあるのか場所はどこかにあるとしか定義されていない。
「戦いに行くわけじゃないのに無理矢理破るような真似はできない。けど、早く見つけないとどうなっているのか分からないし…」
「直接話を聞くのはどうかな?」
「いきなり話しかけると二度と空き教室に来なくなるかもしれない。問題はタイミングだな。
…瞬、次その子が空き教室に現れたら連絡してくれ」
「分かった。この通信機で連絡するね」
偶然を装って…なんて卑怯な真似はしたくないが、他に方法がない。
あの男はいつでも私を見ていると書いていたし、具現化ノートの切れ端も気になる。
もし1枚噛んでいるのだとしたら、手遅れになる前に止めたい。
中身を換えた紅を握りしめ、今日1日何事もないことを願う。
「詩乃ちゃん」
「どうした?」
「…あんまりひとりで考えすぎないようにね」
「うん。ありがとう」
瞬の頭をわしわししながら資料整理に取り掛かる。
…とにかく今できることをしないと落ち着いていられそうにない。
ゆっくり体を起こすと、先生と瞬、陽向が座っていた。
なんだか不思議な組み合わせに若干戸惑いつつ、意識がはっきりしてくる。
「おはよう。どれくらい寝てた?」
「多分2時間くらい?」
思ったより疲れていたのかぐっすりだったらしい。
スマホを確認すると、穂乃から連絡が入っていた。
『今日のお弁当は自分で作ったから大丈夫だよ。気をつけてね』
「…忘れてた」
帰れそうにないと直感していたので、弁当の準備ができないかもしれないとメモを残しておいたのだ。
また穂乃に寂しい思いをさせてしまった。
「先輩?何かありましたか?」
「ああ…ごめん。ただ、家から出てそのまま学校に来たことになったなって思っただけ」
「それならいいですけど…あ、先輩。テストまた1位だったって本当ですか?」
「そうらしいな」
あまり興味が持てず見に行ってすらなかった。
順位が落ちていないなら、入学前のテストのようなものがあっても問題ないだろう。
手を抜くつもりはないし、なんとか新設される専攻に入ってやる。
「桜良が1位で陽向が2位だったのは確認した。ふたりは良いライバルなんだな」
「桜良には敵わないですよ…」
予鈴が鳴って陽向が慌てて出ていったところで、なんとか持ち帰った紅日虹を取り出す。
「それ、何に使うの?」
「口紅の原料になる石なんだ。これから形を整えていくんだけど…見てみるか?」
わくわくした様子の瞬を遠ざけるようなことはできなくて、削り出して形にするところならいいだろうと提案してみる。
「見たい!」
「決まりだな。先生がホームルームに行ってる間、私の相手をしてくれ」
「詩乃ちゃんは行かないの?」
「今日はホームルームがないんだ」
3年生…特に特進クラスは専攻がばらばらだったりもう試験間近だったりと集まれることが少ない。
持ってきていた小道具一式を使い、少しずつ削りだしていく。
「あとは型に入れれば完成だ」
「そうやって作るんだね。初めて知った…」
さっきから少し瞬の表情が曇って見えるのは気のせいだろうか。
…いや。きっとこの小さな違和感を逃してはいけない。
「瞬、何かあったのか?」
「どうしてそう思うの?」
「いつもより元気がないから。おせっかいかもしれないけど、話せそうなことなら教えてほしい」
瞬は迷っているようだったが、やがて少しずつ話しはじめた。
「時々、ニナっていうぬいぐるみを持ってる子が来てるって話をしたでしょ?…その子がバイトしているカフェで問題がおきてるらしいんだ。
ただ、話を盗み聞きした限りだと普通のカフェじゃなさそうなんだよね…」
「普通じゃない?」
「うん。お客さんに幸運を運ぶはずなのに、とか、選ばれたお客さんがどうのって言ってたよ」
思い当たる噂がひとつだけある。
まだ確定ではないが、新しい噂が広がったにしては早い。
南雲実雪について至急調べる必要がありそうだ。
「教えてくれてありがとう。多分どの噂に関係するかは分かった」
「本当?」
「うん。けど、問題はどうやったら辿り着けるかだ」
噂そのものは人々の心を癒やすカフェがあるらしいという素晴らしいものだ。
ただし、特殊な結界のようなものがあるのか場所はどこかにあるとしか定義されていない。
「戦いに行くわけじゃないのに無理矢理破るような真似はできない。けど、早く見つけないとどうなっているのか分からないし…」
「直接話を聞くのはどうかな?」
「いきなり話しかけると二度と空き教室に来なくなるかもしれない。問題はタイミングだな。
…瞬、次その子が空き教室に現れたら連絡してくれ」
「分かった。この通信機で連絡するね」
偶然を装って…なんて卑怯な真似はしたくないが、他に方法がない。
あの男はいつでも私を見ていると書いていたし、具現化ノートの切れ端も気になる。
もし1枚噛んでいるのだとしたら、手遅れになる前に止めたい。
中身を換えた紅を握りしめ、今日1日何事もないことを願う。
「詩乃ちゃん」
「どうした?」
「…あんまりひとりで考えすぎないようにね」
「うん。ありがとう」
瞬の頭をわしわししながら資料整理に取り掛かる。
…とにかく今できることをしないと落ち着いていられそうにない。
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