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第15章『奪われかけの聖夜』
第111話
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「ただいま戻りました」
「おかえり。いつものはあつたのか?」
「ありました」
陽向は昔から同じ物を飲んでいると話していた。
それが可愛らしいパッケージの激甘ココアだと一体誰が思うだろう。
「ちびはどこ行ったんですか?」
「部屋の用意をしてくるって」
あのあと、足元にちょこんと座っていた黒猫にふたりを泊められないか瞬に訊いてほしいとお願いしておいた。
流石に噂が出回って力が強い結月の部屋を借りるわけにはいかず、他にふたりを隠してくれそうな人物が思いつかなかったのだ。
「目安箱、どんなのありました?」
「愚痴を聞いてくださいとか、図書室の本を増やしてほしいとか…色々入ってる」
1枚のメモ用紙を除いて、残りのメモを共有していく。
陽向はかなり真剣に読みこんでいるのか、いつもの賑やかさはなかった。
「先輩」
「どうした?」
「目撃情報です」
そこに書かれていたのは、明らかに人間ではない方のブラックサンタについてだった。
そのメモによると、相手はそりを使って逃げたらしい。
「新聞部の生徒だな」
「ですね。他に取材してる部活って多分ないし…」
「いや、取材はしてなくてもオカルト研究部が集めた可能性もある。
…ただ、逃げたってどういうことだ?偶然か、何かに怯えたか…」
「匿名の弱点ですね」
名前を隠さないと言えないことだってあるだろうと匿名で作ってあるが、こういった案件や明らかに監査部の介入が必要なものがある場合に困る。
今回は筆跡から新聞部だと割り出せたが、課題が見つかった。
「新聞部、行ってみるか。この筆跡は学園新聞の字で間違いなさそうだから」
「はい。手がかり、掴みたいですね」
「そうだな」
だが、話を聞く前に答えが出てしまった。
新聞部の部室前に立ったとき、中から禍々しい気配がして扉にかけた手を引っ込める。
「大丈夫ですかね、あれ…」
メモの主であろう人物の背後には、大男が仁王立ちしている。
周囲の人間が反応していないところを見る限り、ほぼ間違いなく死んだ人間だろう。
「…大丈夫、守護霊だ」
禍々しいものを大男は拳ひとつで散り散りにした。
《うちの娘に手を出そうとは100年早い!まったく、なんでこの学校はこんなに絡んでくるものが多いんだ…》
ちらっと目が合った気がしたが、今話を聞きに行くのは得策ではない。
「もう少し調べてみるか」
「そうですね。他の生徒に知られたくないから目安箱に入れてくれたんだろうし…」
「目撃場所は新校舎別棟3階って書いてある」
「行ってみましょう!」
専攻クラスの生徒たちにできるだけ見つからないよう気をつけつつ、細かく記されていた場所に向かう。
すると、そこにはたしかに袋があった。
「昨日エセサンタが持ってたやつですかね?」
「それならどうしてこんな場所に放置されてるんだろう」
「たしかに。見た感じ誰もいないですよね」
辺りを見回してみたものの、人間の気配すらない。
…袋の中身を調べてみてもいいだろうか。
「うわ、中身怖っ!」
私がぐだぐだ考えてる間に陽向が袋を開けていた。
中から邪気のようなものが溢れ出し、恐ろしいものがいるのはなんとなく分かって後退る。
「これ、やばかったですかね…?」
「逃げるぞ」
袋の先についていたリボンをできるだけ強く締め、杖をできるだけ速く動かす。
陽向も慌てた様子で駆け出し、なんとか旧校舎まで戻ってこられた。
「いくら見てみたいからって勝手に開けるのはまずかったぞ」
「すみません…」
「そこまで焦らなくても大丈夫だ。向こうから来るだろうから」
…まさか自分の言葉どおりになっているとは思っていなかった。
その日の夜、私の前に現れたのは間違いなく怪異の方のブラックサンタだ。
《恋人、イナイノ?》
「私には恋愛感情がないからいらないんだ」
《可哀想ダカラ、コレアゲル》
目の前に放られたのは昼間陽向が開けた袋で、そこから無数の手が這い出してくる。
ブラックサンタの高らかな嗤い声を聞きながら、瞬時にリップを取り出す。
瞬時に塗り終え、目の前の腕たちに鏃を向けた。
「おかえり。いつものはあつたのか?」
「ありました」
陽向は昔から同じ物を飲んでいると話していた。
それが可愛らしいパッケージの激甘ココアだと一体誰が思うだろう。
「ちびはどこ行ったんですか?」
「部屋の用意をしてくるって」
あのあと、足元にちょこんと座っていた黒猫にふたりを泊められないか瞬に訊いてほしいとお願いしておいた。
流石に噂が出回って力が強い結月の部屋を借りるわけにはいかず、他にふたりを隠してくれそうな人物が思いつかなかったのだ。
「目安箱、どんなのありました?」
「愚痴を聞いてくださいとか、図書室の本を増やしてほしいとか…色々入ってる」
1枚のメモ用紙を除いて、残りのメモを共有していく。
陽向はかなり真剣に読みこんでいるのか、いつもの賑やかさはなかった。
「先輩」
「どうした?」
「目撃情報です」
そこに書かれていたのは、明らかに人間ではない方のブラックサンタについてだった。
そのメモによると、相手はそりを使って逃げたらしい。
「新聞部の生徒だな」
「ですね。他に取材してる部活って多分ないし…」
「いや、取材はしてなくてもオカルト研究部が集めた可能性もある。
…ただ、逃げたってどういうことだ?偶然か、何かに怯えたか…」
「匿名の弱点ですね」
名前を隠さないと言えないことだってあるだろうと匿名で作ってあるが、こういった案件や明らかに監査部の介入が必要なものがある場合に困る。
今回は筆跡から新聞部だと割り出せたが、課題が見つかった。
「新聞部、行ってみるか。この筆跡は学園新聞の字で間違いなさそうだから」
「はい。手がかり、掴みたいですね」
「そうだな」
だが、話を聞く前に答えが出てしまった。
新聞部の部室前に立ったとき、中から禍々しい気配がして扉にかけた手を引っ込める。
「大丈夫ですかね、あれ…」
メモの主であろう人物の背後には、大男が仁王立ちしている。
周囲の人間が反応していないところを見る限り、ほぼ間違いなく死んだ人間だろう。
「…大丈夫、守護霊だ」
禍々しいものを大男は拳ひとつで散り散りにした。
《うちの娘に手を出そうとは100年早い!まったく、なんでこの学校はこんなに絡んでくるものが多いんだ…》
ちらっと目が合った気がしたが、今話を聞きに行くのは得策ではない。
「もう少し調べてみるか」
「そうですね。他の生徒に知られたくないから目安箱に入れてくれたんだろうし…」
「目撃場所は新校舎別棟3階って書いてある」
「行ってみましょう!」
専攻クラスの生徒たちにできるだけ見つからないよう気をつけつつ、細かく記されていた場所に向かう。
すると、そこにはたしかに袋があった。
「昨日エセサンタが持ってたやつですかね?」
「それならどうしてこんな場所に放置されてるんだろう」
「たしかに。見た感じ誰もいないですよね」
辺りを見回してみたものの、人間の気配すらない。
…袋の中身を調べてみてもいいだろうか。
「うわ、中身怖っ!」
私がぐだぐだ考えてる間に陽向が袋を開けていた。
中から邪気のようなものが溢れ出し、恐ろしいものがいるのはなんとなく分かって後退る。
「これ、やばかったですかね…?」
「逃げるぞ」
袋の先についていたリボンをできるだけ強く締め、杖をできるだけ速く動かす。
陽向も慌てた様子で駆け出し、なんとか旧校舎まで戻ってこられた。
「いくら見てみたいからって勝手に開けるのはまずかったぞ」
「すみません…」
「そこまで焦らなくても大丈夫だ。向こうから来るだろうから」
…まさか自分の言葉どおりになっているとは思っていなかった。
その日の夜、私の前に現れたのは間違いなく怪異の方のブラックサンタだ。
《恋人、イナイノ?》
「私には恋愛感情がないからいらないんだ」
《可哀想ダカラ、コレアゲル》
目の前に放られたのは昼間陽向が開けた袋で、そこから無数の手が這い出してくる。
ブラックサンタの高らかな嗤い声を聞きながら、瞬時にリップを取り出す。
瞬時に塗り終え、目の前の腕たちに鏃を向けた。
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