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第15章『奪われかけの聖夜』
第110話
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「おはようございます」
「おはよう。桜良は放送室か?」
「はい。必要なものを持ってきておきたいからって言ってました。
けど、エセサンタって時間関係ないでしょ?…本当は手伝いに行ければよかったんですけど、ちびに頼みました」
できるだけ時間を作って一緒にいるふたりが、学園内にいるとほとんどふたりきりになれない。
お互いを護るためとはいえ、その事実が心苦しかった。
「そんな顔しないでくださいよ。先輩のせいじゃないんですから…」
「…ごめん」
「まあ、ちびがいれば多分桜良は安全なんで、大丈夫です。
エセサンタにもカップルを憎む理由があるはずだし…まずそれを探すところからですね!」
落ちこんではいないかと心配だったが、この調子ならきっと犯人探しに誰よりも力を発揮してくれるだろう。
「先生に頼ってばかりもいられないし、私たちでできる限りのことをやってみよう」
「はい!昨日のノートってここにありますか?」
「まだ桜良に貸してもらってるからあるよ」
家に帰って眠る穂乃の横で読んでみたが、他にもいくつか明らかに別の犯人が動いた形跡がある。
「もし生きてる方と遭遇したらどうします?流石にぶん殴るわけにはいきませんよね?」
「相手に怪我をさせない程度なら責任は私が持つ」
「先輩…!」
「このノートはすごいな。ふたりが必死に調べた痕跡が残ってる」
「早く捕まえて悲しむカップルを減らしたいって、桜良と話してたんです。
俺も早く桜良と堂々デートしたいし、年末年始までに片づけたいじゃないですか」
相変わらず明るい陽向の声にはいつも励まされる。
「そうだな。今年最後の夜仕事になると願おう」
「はい!」
「僕も頑張るね」
いつの間に入ってきていたのか、瞬がこちらに向かってガッツポーズした。
「ちび、桜良をひとりにするなって、」
「猫さんが、女子会するから外に出てろって…。だから僕も仲間に入れて」
なんだか少し寂しそうに見えて、このまま追い出してしまうのは可哀想な気がした。
丁度渡したいものもあったし、瞬がいるからといって問題があるわけじゃない。
「陽向にはこれ。瞬はこっちな」
「え…もしかして、恒例のクリスマスプレゼントですか!?」
「僕ももらっていいの?」
「友だちだろ?」
ふたりは似たような顔でお礼を言ってくれた。
時々兄弟のような反応をするふたりを見ていると、とても楽しい気分になる。
「開けてもいい?」
「勿論」
瞬には学園内でも使えるように手袋とマフラーを、陽向にはこの前割ったと話していたマグカップとお菓子を贈った。
「ありがとうございます。先輩、相変わらずいいチョイスしてきますよね…」
「詩乃ちゃんありがとう!防寒具を使ったことがなかったからすごく嬉しい」
ふたりにも喜んでもらえてよかった。
あとは穂乃へのクリスマスプレゼントを買いに行く時間を作るだけだが、その前にどうしても終わらせたい仕事がある。
「あんまりひとりで考えないでね。友だちに倒れられると辛いから」
「瞬…」
心配させてしまったことを反省しつつ、監査部としての仕事を少しずつ片づけていく。
「この前置いた目安箱、好評みたいだな」
「愚痴とかも多いですけどね…。まあ、憲兵姫に言っちゃえばすかっとするって生徒が多いんじゃないですか?」
「やっぱりおまえにもそういうのつけてやる」
「あ、自販機でジュース買おうと思ってたんでした…」
ゆっくり監査室を出た陽向の背中を見送り、そのまま中身に目を通す。
購買の品数を増やしてほしいというものからお悩み相談まで、様々なものが書かれている。
…ただ、その中にひとつ気になるものがあった。
「詩乃ちゃん?」
「…これ、どっちだと思う?」
瞬に1枚の紙を見せると、驚いた表情で書かれている言葉に目を通す。
片仮名で色濃くおどろおどろしい文字が並んでいた。
【ゼッタイ コワシテヤル】
…これを陽向や桜良に見せる勇気は私にはない。
「おはよう。桜良は放送室か?」
「はい。必要なものを持ってきておきたいからって言ってました。
けど、エセサンタって時間関係ないでしょ?…本当は手伝いに行ければよかったんですけど、ちびに頼みました」
できるだけ時間を作って一緒にいるふたりが、学園内にいるとほとんどふたりきりになれない。
お互いを護るためとはいえ、その事実が心苦しかった。
「そんな顔しないでくださいよ。先輩のせいじゃないんですから…」
「…ごめん」
「まあ、ちびがいれば多分桜良は安全なんで、大丈夫です。
エセサンタにもカップルを憎む理由があるはずだし…まずそれを探すところからですね!」
落ちこんではいないかと心配だったが、この調子ならきっと犯人探しに誰よりも力を発揮してくれるだろう。
「先生に頼ってばかりもいられないし、私たちでできる限りのことをやってみよう」
「はい!昨日のノートってここにありますか?」
「まだ桜良に貸してもらってるからあるよ」
家に帰って眠る穂乃の横で読んでみたが、他にもいくつか明らかに別の犯人が動いた形跡がある。
「もし生きてる方と遭遇したらどうします?流石にぶん殴るわけにはいきませんよね?」
「相手に怪我をさせない程度なら責任は私が持つ」
「先輩…!」
「このノートはすごいな。ふたりが必死に調べた痕跡が残ってる」
「早く捕まえて悲しむカップルを減らしたいって、桜良と話してたんです。
俺も早く桜良と堂々デートしたいし、年末年始までに片づけたいじゃないですか」
相変わらず明るい陽向の声にはいつも励まされる。
「そうだな。今年最後の夜仕事になると願おう」
「はい!」
「僕も頑張るね」
いつの間に入ってきていたのか、瞬がこちらに向かってガッツポーズした。
「ちび、桜良をひとりにするなって、」
「猫さんが、女子会するから外に出てろって…。だから僕も仲間に入れて」
なんだか少し寂しそうに見えて、このまま追い出してしまうのは可哀想な気がした。
丁度渡したいものもあったし、瞬がいるからといって問題があるわけじゃない。
「陽向にはこれ。瞬はこっちな」
「え…もしかして、恒例のクリスマスプレゼントですか!?」
「僕ももらっていいの?」
「友だちだろ?」
ふたりは似たような顔でお礼を言ってくれた。
時々兄弟のような反応をするふたりを見ていると、とても楽しい気分になる。
「開けてもいい?」
「勿論」
瞬には学園内でも使えるように手袋とマフラーを、陽向にはこの前割ったと話していたマグカップとお菓子を贈った。
「ありがとうございます。先輩、相変わらずいいチョイスしてきますよね…」
「詩乃ちゃんありがとう!防寒具を使ったことがなかったからすごく嬉しい」
ふたりにも喜んでもらえてよかった。
あとは穂乃へのクリスマスプレゼントを買いに行く時間を作るだけだが、その前にどうしても終わらせたい仕事がある。
「あんまりひとりで考えないでね。友だちに倒れられると辛いから」
「瞬…」
心配させてしまったことを反省しつつ、監査部としての仕事を少しずつ片づけていく。
「この前置いた目安箱、好評みたいだな」
「愚痴とかも多いですけどね…。まあ、憲兵姫に言っちゃえばすかっとするって生徒が多いんじゃないですか?」
「やっぱりおまえにもそういうのつけてやる」
「あ、自販機でジュース買おうと思ってたんでした…」
ゆっくり監査室を出た陽向の背中を見送り、そのまま中身に目を通す。
購買の品数を増やしてほしいというものからお悩み相談まで、様々なものが書かれている。
…ただ、その中にひとつ気になるものがあった。
「詩乃ちゃん?」
「…これ、どっちだと思う?」
瞬に1枚の紙を見せると、驚いた表情で書かれている言葉に目を通す。
片仮名で色濃くおどろおどろしい文字が並んでいた。
【ゼッタイ コワシテヤル】
…これを陽向や桜良に見せる勇気は私にはない。
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