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第10章『連続失踪事件』
第71話
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目の前の肉塊をどう捌くか考えていると、瞬に裾を引っ張られる。
「ねえ、詩乃ちゃん。あれやっつけたら僕のお願い聞いてくれる?」
「死亡フラグに聞こえるけど…内容による。叶えられるものじゃないと受けられない」
弓の確認をすませて瞬を見ると、手をもじもじ動かしながら少しずつ話した。
「あのね、猫さんがお祭りみたいなのをやりたいって言ってたんだ。
人間は好きじゃないけどああいうのは悪くないって」
「学園祭のことか」
「うん。本人に言ったら怒られそうだけど、あの子はずっと独りだったんだよね?
僕もだけど、きっと寂しかったと思うんだ。だけど今の僕じゃ買い物にも行けないから…手伝ってほしい」
生前、流山瞬は優しさから先生を突き放した。
それならきっと、我儘ひとつ言わずに生を終えただろうと推測できる。
「分かった。私でよければ協力させてくれ」
「ありがとう」
瞬は微笑んだ直後、勢いよく相手の巨体を切りつけた。
だが、それだけで崩れるほど簡単ではない。
「こんなに硬いのを相手するの、初めてかも」
「そうか。ならやっぱりこれがいいのか」
1度炎で攻撃してみたものの、火力が弱いのか効いている気がしない。
その間にも目の前の物体はうじゃうじゃと気味の悪い動きをしている。
「詩乃ちゃんの炎でも焼けないの?」
「…みたいだな。けど、これならどうだ」
ぎょろぎょろ動く無数の目玉のうち、ひとつだけ明らかに他と気配が違うものがある。
そこめがけて札を巻きつけていない矢を放った。
《うギャあア!》
表現しづらい悲鳴をあげながら苦しむ姿に、瞬は驚いた様子でこちらを見る。
「もしかして今のって、破魔矢?」
「一応それに近いものにはなるんだと思う」
「と思うって…よく知らないものを使ってるの?」
「うん。ある人が書き残してくれていたものを参考にしているだけだから、どういう効能があるかは分からないんだ」
『あと3分です』
「分かった。瞬、下がっててくれ」
火炎刃を出そうとすると、瞬に手首を掴まれてしまった。
「そういうところが頑張りすぎなんだよ。…大丈夫、僕たちに任せて」
「それってどういう、」
瞬が勢いよく動かした包丁から、空さえも切り裂いてしまいそうな風のブーメランのようなものが飛び交う。
何発も連続で弱点に攻撃を受けたからか、相手は大声をあげながらどんどん弱っている。
その直後、弱点に向かって普段より固そうな糸が放たれた。
《ぎゃあ!》
巨体はそのまま砕け散り、決着がついた…ように思われた。
「危ない!」
「え?」
瞬の背後に迫っていた欠片の1体を炎で焼き尽くす。
残りの対処をしようと振り返ると、陽向が拳を思いきり喰らわせていた。
「平気か?」
「もう大丈夫です!」
安心していると、神々しい光が陽向の後ろから溢れ出した。
「え、八尋さん!?」
「大丈夫?」
「俺たちは平気ですけど…」
「そうか。よかった……」
ゆらゆら動いた前髪から見えた左眼は、吸いこまれそうなほど綺麗な翡翠色をしていた。
もしかすると、それを隠すために前髪を伸ばしていたのかもしれない。
その疑問をぶつける間もなく、八尋さんはその場に倒れた。
「八尋さん!」
《いつものことです。しばらくすれば目が覚めますよ》
「心配なんだな」
《一応そう思っているつもりです》
周りには小人のような姿になった盗賊団数名が転がっている。
「陽向は八尋さんを頼む。私はこの小人たちを運ぶよ。まだ話を聞かないといけないし、何かに襲われたら大変だ」
「了解です!」
八尋さんが3人救ったという事実にただただ驚くしかない。
私にはそんなふうに誰かを救えるほどの力はないから。
「僕にも手伝わせて」
「駄目だ。さっきのでだいぶ体力使っただろ?ゆっくりでいいから先生のところまで行こう」
「…分かった。ありがとう」
瞬と後ろを歩いていると、陽向の肩から瑠璃が心配そうに八尋さんの顔をのぞきこんでいるのが分かる。
「きっといい仲間なんだね」
「友人なのかもな」
瞬とふたりで話しながら監査室への道を急ぐ。
目的地までの道を、柔らかい月の光が優しく照らしてくれた。
「ねえ、詩乃ちゃん。あれやっつけたら僕のお願い聞いてくれる?」
「死亡フラグに聞こえるけど…内容による。叶えられるものじゃないと受けられない」
弓の確認をすませて瞬を見ると、手をもじもじ動かしながら少しずつ話した。
「あのね、猫さんがお祭りみたいなのをやりたいって言ってたんだ。
人間は好きじゃないけどああいうのは悪くないって」
「学園祭のことか」
「うん。本人に言ったら怒られそうだけど、あの子はずっと独りだったんだよね?
僕もだけど、きっと寂しかったと思うんだ。だけど今の僕じゃ買い物にも行けないから…手伝ってほしい」
生前、流山瞬は優しさから先生を突き放した。
それならきっと、我儘ひとつ言わずに生を終えただろうと推測できる。
「分かった。私でよければ協力させてくれ」
「ありがとう」
瞬は微笑んだ直後、勢いよく相手の巨体を切りつけた。
だが、それだけで崩れるほど簡単ではない。
「こんなに硬いのを相手するの、初めてかも」
「そうか。ならやっぱりこれがいいのか」
1度炎で攻撃してみたものの、火力が弱いのか効いている気がしない。
その間にも目の前の物体はうじゃうじゃと気味の悪い動きをしている。
「詩乃ちゃんの炎でも焼けないの?」
「…みたいだな。けど、これならどうだ」
ぎょろぎょろ動く無数の目玉のうち、ひとつだけ明らかに他と気配が違うものがある。
そこめがけて札を巻きつけていない矢を放った。
《うギャあア!》
表現しづらい悲鳴をあげながら苦しむ姿に、瞬は驚いた様子でこちらを見る。
「もしかして今のって、破魔矢?」
「一応それに近いものにはなるんだと思う」
「と思うって…よく知らないものを使ってるの?」
「うん。ある人が書き残してくれていたものを参考にしているだけだから、どういう効能があるかは分からないんだ」
『あと3分です』
「分かった。瞬、下がっててくれ」
火炎刃を出そうとすると、瞬に手首を掴まれてしまった。
「そういうところが頑張りすぎなんだよ。…大丈夫、僕たちに任せて」
「それってどういう、」
瞬が勢いよく動かした包丁から、空さえも切り裂いてしまいそうな風のブーメランのようなものが飛び交う。
何発も連続で弱点に攻撃を受けたからか、相手は大声をあげながらどんどん弱っている。
その直後、弱点に向かって普段より固そうな糸が放たれた。
《ぎゃあ!》
巨体はそのまま砕け散り、決着がついた…ように思われた。
「危ない!」
「え?」
瞬の背後に迫っていた欠片の1体を炎で焼き尽くす。
残りの対処をしようと振り返ると、陽向が拳を思いきり喰らわせていた。
「平気か?」
「もう大丈夫です!」
安心していると、神々しい光が陽向の後ろから溢れ出した。
「え、八尋さん!?」
「大丈夫?」
「俺たちは平気ですけど…」
「そうか。よかった……」
ゆらゆら動いた前髪から見えた左眼は、吸いこまれそうなほど綺麗な翡翠色をしていた。
もしかすると、それを隠すために前髪を伸ばしていたのかもしれない。
その疑問をぶつける間もなく、八尋さんはその場に倒れた。
「八尋さん!」
《いつものことです。しばらくすれば目が覚めますよ》
「心配なんだな」
《一応そう思っているつもりです》
周りには小人のような姿になった盗賊団数名が転がっている。
「陽向は八尋さんを頼む。私はこの小人たちを運ぶよ。まだ話を聞かないといけないし、何かに襲われたら大変だ」
「了解です!」
八尋さんが3人救ったという事実にただただ驚くしかない。
私にはそんなふうに誰かを救えるほどの力はないから。
「僕にも手伝わせて」
「駄目だ。さっきのでだいぶ体力使っただろ?ゆっくりでいいから先生のところまで行こう」
「…分かった。ありがとう」
瞬と後ろを歩いていると、陽向の肩から瑠璃が心配そうに八尋さんの顔をのぞきこんでいるのが分かる。
「きっといい仲間なんだね」
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