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第10章『連続失踪事件』
第69話
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迷った挙げ句、陽向に監査部へ来てほしいとメッセージ送った。
桜良とふたりでいるなら邪魔になるようなことはできるだけ避けたかったが、向こうが集めた情報についても聞きたい。
1分も経たないうちに扉が開いて、陽向が小走りで入ってくる。
「先輩?どうしたんですか、いきなり呼び出して…」
「ちょっと手がかりを掴めたから知らせておこうと思ったんだ」
「あ、俺たちも見つけましたよ。報告会しましょう!ただ…どうして八尋さんがここに?」
「俺は先生に報告しようと思って来たんだ。お邪魔なら出ていくけど…」
「…いや、情報交換するだけだから聞きたいか聞きたくないかで判断してほしい」
「それなら聞かせてもらおうかな」
翡翠八尋という人物について、監査部に残っていた資料を読んだ。
通信制の生徒で問題行動は特になし、何故か前髪を伸ばして左眼を隠しがち…今目の前にいるのはそのとおりの人物らしい。
「じゃあまず俺から。盗賊団のアジトが分かりました」
「随分早いな」
「クラスメイトから聞いた話と桜良が集めてくれた情報を総合して、多分この辺だと思うんですよね…」
「体育館裏か」
倉庫には道具が沢山あるだろうし、加工さえできれば武器や生活に必要最低限必要な家具くらいはできてしまうのかもしれない。
「町で人が消えてるって話を聞いたんですけど、何人くらい消えたんですか?」
「俺が分かってるだけで3人。仕事先の先輩が1人消えたんだけど、誰も覚えていなかったんだ。
他にも5人組が悪戯半分で肝試しをしようって言ってたみたいなんですけど、そのうち4人が消えたみたいです」
「みたいってことは、確認できなかったってことですか?」
「相手は朧気にしか覚えてなかったんだ。ただのお客さんだし、確認する方法はなくて…」
陽向はうんうんと頷いたものの首を傾げる。
「俺たちが知らないだけかもしれないけど、犯行が町中から学園内にとどまった理由は何でしょう?」
「…力を得やすいから。学園内では噂が広まりやすい。些細なことから怪異関連まで、なんでも」
「そっか、全然思いつかなかったです。流石先輩…」
「初歩的な推理だよ。私が分かったことも簡潔に話しておく」
話している途中、ラジオから遠慮がちに声をかけられた。
『詩乃先輩、わら半紙のノートについてもう少し教えてもらえませんか?』
「え、ラジオが喋った!?」
「翡翠、今度俺から説明するから少し話を聞いてくれ」
「すみません」
先生は予知日記を見つめながら、翡翠八尋は落ち着かない様子で座ったまま話を聞いてくれている。
「何か気になることでもあるのか?」
『書いたことを現実にするノートの噂が定時制の生徒の間で流行っているみたいなんです。
もしかするとそれかもしれないと思って…他にどんなことが書かれているか分かりますか?』
「私が見た頁はそこだけだけど、もしかしたら他の願望も書いてあるかもしれない。
ただ、須郷さんは自分のノートだって話してた」
「なんかめちゃくちゃですね。こんなに大量の噂が流れているなんて…」
「そうだな。まるで意図的に混乱させようとしているように感じる」
あの男が好みそうな手法だ。
確証もないのに無関係な人間を巻きこむわけにはいかないが、いつか話さなければならなくなるだろう。
「先輩?どうしたんですか、難しい顔して」
「ごめん、なんでもない。ノートのこともついでに盗賊団に訊いてみよう。…全員消し灰にしないといいけど」
「火加減調節してくださいね」
陽向の言葉に苦笑しつつ、なんだか居心地悪そうにしている翡翠八尋に声をかけた。
「この前のお礼、ちゃんとしたいんだけど…何かできることはないか?」
「この事件を解決してほしい。俺だけじゃできることが少ないから、手伝ってほしいんだ。
深碧にも頼まれたし、妖絡みなら他の人たちじゃ解決できないだろうから」
「…分かった。なら翡翠さん」
「八尋でいいよ。そっちで呼ばれても分からないことが多いから」
何か事情があるのだろう。八尋さんと呼び直して交渉を続けることにした。
「私たちはできるだけ早く片づけようと思ってる。できれば今夜中に決着をつけたいんだけど、それで構わないか?」
「俺はいいけど…」
「大丈夫です!俺たち未成年ですけど、ある意味ならず者が集まってる感じなので」
陽向が満面の笑みで発した言葉に先生がため息を吐く。
「八尋さんの能力って何なんだ?」
「それは、」
《一緒に戦えば分かりますよ》
いつの間に現れたのか、瑠璃が歌うように話す。
防御系の何かだとは推測できるので、一先ず後衛をお願いしよう。
「それじゃあ作戦内容を決める。まずは──」
桜良とふたりでいるなら邪魔になるようなことはできるだけ避けたかったが、向こうが集めた情報についても聞きたい。
1分も経たないうちに扉が開いて、陽向が小走りで入ってくる。
「先輩?どうしたんですか、いきなり呼び出して…」
「ちょっと手がかりを掴めたから知らせておこうと思ったんだ」
「あ、俺たちも見つけましたよ。報告会しましょう!ただ…どうして八尋さんがここに?」
「俺は先生に報告しようと思って来たんだ。お邪魔なら出ていくけど…」
「…いや、情報交換するだけだから聞きたいか聞きたくないかで判断してほしい」
「それなら聞かせてもらおうかな」
翡翠八尋という人物について、監査部に残っていた資料を読んだ。
通信制の生徒で問題行動は特になし、何故か前髪を伸ばして左眼を隠しがち…今目の前にいるのはそのとおりの人物らしい。
「じゃあまず俺から。盗賊団のアジトが分かりました」
「随分早いな」
「クラスメイトから聞いた話と桜良が集めてくれた情報を総合して、多分この辺だと思うんですよね…」
「体育館裏か」
倉庫には道具が沢山あるだろうし、加工さえできれば武器や生活に必要最低限必要な家具くらいはできてしまうのかもしれない。
「町で人が消えてるって話を聞いたんですけど、何人くらい消えたんですか?」
「俺が分かってるだけで3人。仕事先の先輩が1人消えたんだけど、誰も覚えていなかったんだ。
他にも5人組が悪戯半分で肝試しをしようって言ってたみたいなんですけど、そのうち4人が消えたみたいです」
「みたいってことは、確認できなかったってことですか?」
「相手は朧気にしか覚えてなかったんだ。ただのお客さんだし、確認する方法はなくて…」
陽向はうんうんと頷いたものの首を傾げる。
「俺たちが知らないだけかもしれないけど、犯行が町中から学園内にとどまった理由は何でしょう?」
「…力を得やすいから。学園内では噂が広まりやすい。些細なことから怪異関連まで、なんでも」
「そっか、全然思いつかなかったです。流石先輩…」
「初歩的な推理だよ。私が分かったことも簡潔に話しておく」
話している途中、ラジオから遠慮がちに声をかけられた。
『詩乃先輩、わら半紙のノートについてもう少し教えてもらえませんか?』
「え、ラジオが喋った!?」
「翡翠、今度俺から説明するから少し話を聞いてくれ」
「すみません」
先生は予知日記を見つめながら、翡翠八尋は落ち着かない様子で座ったまま話を聞いてくれている。
「何か気になることでもあるのか?」
『書いたことを現実にするノートの噂が定時制の生徒の間で流行っているみたいなんです。
もしかするとそれかもしれないと思って…他にどんなことが書かれているか分かりますか?』
「私が見た頁はそこだけだけど、もしかしたら他の願望も書いてあるかもしれない。
ただ、須郷さんは自分のノートだって話してた」
「なんかめちゃくちゃですね。こんなに大量の噂が流れているなんて…」
「そうだな。まるで意図的に混乱させようとしているように感じる」
あの男が好みそうな手法だ。
確証もないのに無関係な人間を巻きこむわけにはいかないが、いつか話さなければならなくなるだろう。
「先輩?どうしたんですか、難しい顔して」
「ごめん、なんでもない。ノートのこともついでに盗賊団に訊いてみよう。…全員消し灰にしないといいけど」
「火加減調節してくださいね」
陽向の言葉に苦笑しつつ、なんだか居心地悪そうにしている翡翠八尋に声をかけた。
「この前のお礼、ちゃんとしたいんだけど…何かできることはないか?」
「この事件を解決してほしい。俺だけじゃできることが少ないから、手伝ってほしいんだ。
深碧にも頼まれたし、妖絡みなら他の人たちじゃ解決できないだろうから」
「…分かった。なら翡翠さん」
「八尋でいいよ。そっちで呼ばれても分からないことが多いから」
何か事情があるのだろう。八尋さんと呼び直して交渉を続けることにした。
「私たちはできるだけ早く片づけようと思ってる。できれば今夜中に決着をつけたいんだけど、それで構わないか?」
「俺はいいけど…」
「大丈夫です!俺たち未成年ですけど、ある意味ならず者が集まってる感じなので」
陽向が満面の笑みで発した言葉に先生がため息を吐く。
「八尋さんの能力って何なんだ?」
「それは、」
《一緒に戦えば分かりますよ》
いつの間に現れたのか、瑠璃が歌うように話す。
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