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断暮篇(たちぐらしへん)
ハーフ&ハーフ
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「木葉、咬んで」
夜になった途端、七海がいきなりそんなことを言ってくる。
怪我だらけの体に牙を突き立てることなんてできない。
できればしたくない...そう思っているのに、どうしても欲求が抑えられない。
「ごめん。...ありがとう」
ゆっくり牙を突き立てると、七海の体がぴくりと跳ねる。
「...痛くない?」
「大丈夫だよ」
まだ満月に近い状態だからか、クレールを摂取できていなかったからなのか。
どんな事情にせよ、いつもより少し強めに咬んでしまった。
それでも僕の全てを赦すような彼女の笑顔に救われる。
心が温かくなっていくのを感じながら、白い肌にもう1度牙を突き立てた。
それから数日、とにかく日常を穏やかに過ごすことができている。
「七海」
「どうしたの?」
「僕は人間とヴァンパイアのハーフで、それはきっとこれから先も変えられない。
...それでも一緒にいてくれる?」
七海はぽかんとしていたが、ただ笑顔で答えてくれた。
「そんなの当たり前だよ。...それなら、私は力が強すぎて人間と偽物の神様が混ざったような半分こだけど、これからも一緒にいたい」
「ありがとう。そう言ってもらえただけで頑張れる気がする」
この先ずっと、僕は人間とヴァンパイアの狭の存在になるだろう。
それでも、どうしても彼女のことだけは離したくない。
「私と一緒にいてくれてありがとう。これからもよろしくね」
この先ずっと、私は普通の人間になれる日はこないだろう。
それでも、木葉とふたりで過ごす未来を諦めたくない。
ハーフ&ハーフなふたりの日常は、これからもずっと続いていく。
おはようがかえってきておやすみで終わる、ただいまがあっておかえりがある...それだけで充分幸せなことだと、ふたりは誰よりも深く理解しているだろう。
そんなふたりだからこそ、未来への花が咲いていくのだ。
「よし、準備完了!」
「今日からお仕事?」
「そうだよ」
「終わったら連絡して」
「勿論。それからまた一緒にコンビニにでも行こうか」
「そうだね。帰ってくるのを待ってるから」
「できるだけ早く帰ってくるよ」
「遅かったら迎えに行く」
「それじゃあ七海。...いってきます」
「いってらっしゃい」
...こうしてふたりが護りたかった日常は舞い戻り、新しい道を創っていく。
いつまでも、いつまでも。
どうか大切な人たちとの未来を、簡単に諦めてしまわないで。
その先に光があると信じてひたすら進んでいれば、道は切り開いていけるはずだから──。
夜になった途端、七海がいきなりそんなことを言ってくる。
怪我だらけの体に牙を突き立てることなんてできない。
できればしたくない...そう思っているのに、どうしても欲求が抑えられない。
「ごめん。...ありがとう」
ゆっくり牙を突き立てると、七海の体がぴくりと跳ねる。
「...痛くない?」
「大丈夫だよ」
まだ満月に近い状態だからか、クレールを摂取できていなかったからなのか。
どんな事情にせよ、いつもより少し強めに咬んでしまった。
それでも僕の全てを赦すような彼女の笑顔に救われる。
心が温かくなっていくのを感じながら、白い肌にもう1度牙を突き立てた。
それから数日、とにかく日常を穏やかに過ごすことができている。
「七海」
「どうしたの?」
「僕は人間とヴァンパイアのハーフで、それはきっとこれから先も変えられない。
...それでも一緒にいてくれる?」
七海はぽかんとしていたが、ただ笑顔で答えてくれた。
「そんなの当たり前だよ。...それなら、私は力が強すぎて人間と偽物の神様が混ざったような半分こだけど、これからも一緒にいたい」
「ありがとう。そう言ってもらえただけで頑張れる気がする」
この先ずっと、僕は人間とヴァンパイアの狭の存在になるだろう。
それでも、どうしても彼女のことだけは離したくない。
「私と一緒にいてくれてありがとう。これからもよろしくね」
この先ずっと、私は普通の人間になれる日はこないだろう。
それでも、木葉とふたりで過ごす未来を諦めたくない。
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おはようがかえってきておやすみで終わる、ただいまがあっておかえりがある...それだけで充分幸せなことだと、ふたりは誰よりも深く理解しているだろう。
そんなふたりだからこそ、未来への花が咲いていくのだ。
「よし、準備完了!」
「今日からお仕事?」
「そうだよ」
「終わったら連絡して」
「勿論。それからまた一緒にコンビニにでも行こうか」
「そうだね。帰ってくるのを待ってるから」
「できるだけ早く帰ってくるよ」
「遅かったら迎えに行く」
「それじゃあ七海。...いってきます」
「いってらっしゃい」
...こうしてふたりが護りたかった日常は舞い戻り、新しい道を創っていく。
いつまでも、いつまでも。
どうか大切な人たちとの未来を、簡単に諦めてしまわないで。
その先に光があると信じてひたすら進んでいれば、道は切り開いていけるはずだから──。
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